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第51話 村の石鹸と香油についての雑談

にがり先輩は存在を忘れられている。

アルさんの服を着て色々と確かめてみる。

……凄く着心地が良い。

よくよく見てみればミシン縫いではないことが分かるのだが、ほとんど見分けがつかない……凄い技術だ。


ジーパンの金具部分は木で代用しているようだがこの細工も凄い。

チャックがなくて小さな三つボタンで留める形にしてあるなど、細かな変更も加えられているようだ。


あとTシャツとズボンで材質が違う気がする。

元のものと似た肌触りだ……。

気になって尋ねてみたら、


「企業秘密♪」


と言われた。

綿花を栽培しているってわけでじゃないっぽいなぁ。


「……ふ~ん石鹸ね。

 人間の村で使っているのは相当臭う代物だったけどそんなもの使うの?

 ヴェルフール、良く許したわね」


「そんな変な臭いはしなかったぞ。

 むしろちょっと食べたくなる臭いだったのだ」


俺が服のチェックをしている間に2人は近況を報告していたのだろうか、石鹸の話をしている。

ヴェルさんも新しい服を着ているのだが、今回はワンピース型のゆったりめの服だった。


……念のため、後で下着についてしっかり教えておこう。


それよりも石鹸の臭いの話か。

俺はアルさんに尋ねる。


「人間の村の石鹸は臭うんですか?」


「私が知っている村は、って意味よ。

 街は知らないわ、行った事がないから」


「正確には行って見つかって森まで兵士を引っ張ってきただろう?

 あの時は生きた心地がしなかったのだ……」


だから謝ったじゃない、とこめかみを揉むアルさん。

しかし村の情報かぁ……異世界での石鹸の扱いが全く分からないが、とりあえず現存はしているらしい。


「臭いって事は動物性油脂を使ったんですかね。

 香油があれば多少はマシになると思うんですけど」


「あんた、香油なんて良く知ってるわね。

 でもあんな高いもの、貴族じゃなきゃ持ってないと思うわ」


そうなのか……まぁ精油にするのも難しそうだし、そもそも原料の栽培をしなきゃいけないか。

果たして食料の代わりに嗜好品を好き好んで栽培するほどの物好きがこの世界にいるかどうかという問題もあるが……。

居ても貴族お抱えとかだろうなぁ……たぶん。


そんな思考を巡らせている間に香油について教えてもらっていたヴェルさんが俺に尋ねてくる。


「その精油を作ることは出来ないのか?」


「う~ん……前に見た記憶があるけどどうだったかな……」


賢者の杖で調べてみると水蒸気蒸留法で作るらしい。

簡単に言えば蒸した蒸気を冷やして集めて上澄みを掬う、というところか。


「専用の機器がないと難しいね。

 あと専用の栽培畑も必要だね、油よりもさらに採れる分がすくなそうだ」


そうか、とちょっとがっかり気味のヴェルさん。

う~ん……ヴェルさんが望むなら何とかしたいところだけど、さすがに出来る範疇を超えてるな。

悔しいけど……。


しかし、目安100分の1くらいになるのか。

確かにこれは貴族の嗜好品だ。


いや待てよ。


「ハーブに絞って調べたから気づかなかったけど、この世界に柑橘類があるなら果皮を絞れば香油になるね」


柑橘類の画像を見せると2人はさらに唸った。


「私は見たこと無い果実ね……ヴェルフールあなたは?」


ヴェルさんも首を横に振る。

念のためさらに検索してみると遥か彼方、海の向こうにあると分かった。


「あの海を渡るのか……」


「予測移動時間は10日前後かな」


ヴェルさんが24時間不眠不休で走って、直線距離でそのくらいある。

往復で約1ヶ月って旅程だな。


「そんなに森を離れたくは無いな」


「ならこの話は無しだね」


「スズキは欲しくないのか?」


「そこまでは。

 ヴェルさんが欲しいなら別だけどヴェルさんもそこまではってところでしょ?」


ヴェルさんが頷く。

なんとなく頭を撫でてみたら自然と膝枕体勢になった。


「人の前でいちゃいちゃと……」


アルさんがため息をついた。


「なんのことだ?」


「なんのことです?」


なぜか俺だけ睨まれた。

解せぬ。


「話を戻すけど、石鹸を作ったならお風呂で使えば良かったじゃない」


「今熟成中なので、下手したら肌が焼けちゃいますし」


焼けるは言い過ぎかもしれないけど。

ヴェルさんもアルさんもピンと着てなさそうだったので、軽く説明した。

アルさんは話を聞いて少し考え込んだ後、びっくりすることを言ってきた。


「……それ魔法で何とかできるかもよ?」


「何ですとッ?!」

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