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第39話 蟹の甲羅はしっかり持って帰ってきています。

住み処に戻って海藻や貝、蟹の甲羅などを整理して再度森へと出発。

もちろん油の元となる植物を探すのが主な目的だがその他にも色々採集する予定だ。


気づくのが遅かったが、賢者の杖で改めて調べてみれば森は食材の宝庫だった。

主食だったハーブはもちろんのこと、キノコや木の実、山菜、さらには小麦やその他野菜の原種に近いものもあったようだ。


まぁ野菜の原種はまずいのでどうしようかと悩みどころではあるが。

山菜の取れ高が芳しくなさそうなら取ってみることにしよう。


さて、連日採集続きだが頑張ろう。


というわけでサクサク採集。

今回はヴェルさんと一緒。

ヴェルさんは食に対してあまり冒険するタイプではなかったらしく、食べられる茸などを見つけては感心していた。


「そもそも我輩は肉が主食だからな!

 だが貴様に連れられて蟹や貝を食してから考え方を変えたのだ!」


余程あの味がお気に召したらしい。

それは結構な事なんだが、今手にしてるのは毒キノコですよ?


そんなこんなで採集は続く。

因みに野性動物たちはヴェルさんが隣にいることで全く寄ってこない。


代わりに一緒にいるのがコダマ達だ。

お散歩感覚のようで俺達が採集している間はけんぱをやったりキノコの上で跳び跳ねたりしている。


「なんというか、凄いなつきようなのだ」


うん、初めの頃が嘘みたいだ。

せっかくなのでみんなでシャークしながら移動してみた。


……訳のわからない一団が出来てしまった。


「なんだか楽しいのだ♪」


ヴェルさんもノリノリだったから良しとしよう。


そんなこんなでお目当ての油がとれる実のなる木がたくさん育っている場所へと到着。

赤い花弁が所狭しと落ちていた。


「これがお目当ての実か?

この実は渋くて食えたものではないぞ?」


……齧った跡のある実を持ちながらうへぇって顔のヴェルさん。

食べたんすね。


「目的は身じゃなくて種の方だよ」


ヴェルさんから悲壮感が漂ってきた。

食べる前に何に使うか聞いてくれれば良かったのに。


ということで実を採集していく。

この実をつける木はどうやらこの世界で一般的な植物で、種から油を採ったり葉から止血薬を抽出するようだ。


回復魔法で全て賄っている世界かと思ったが軽い擦り傷などならこういった民間療法で応急処置をする場合もあるらしい。

ただ結局重病、重傷の場合は魔法を医学の発展は亀の歩み程度のようだ。


魔法が便利すぎるのも考えものだと思う。


ついでにこの木は材木としても優秀だそうで1本欲しいところなのだが……。

色々心苦しい。


「どうしたスズキ?」


「え?

 いやっ……」


しどろもどろになる俺。

ヴェルさんがなぜか俺の頭を撫でた。


「遠慮することはない、どうしたのだ?」


くっ、慈愛の女神のような笑顔を……。

観念して告白する。


「その……1本欲しいなと思ったんだけど……色々ヴェルさんの手を煩わせるし、そもそも切るのもどうかと……」


「特に問題ないぞ。

 切ろうか?」


お気楽に答えるヴェルさん。

そのお言葉に甘え、鳥の巣や小動物などにも配慮して育ちが悪そうなのを1本選ぶ。


凄く嬉しい。

が、これで良いのだろうか……。


「そんな顔をするな。

 前に伝えているだろう?

 ただ、他の用事があるならそっちを済ませてからがいいな。

 持って歩くには邪魔なのだ」


重さを気にしていないところに漢気を感じてしまう。

なんか泣きそうになりながらヴェルさんに感謝を伝える。


「フフ、他に必要なものはあるか?」


どこかわくわくしているヴェルさん。

ちょっと考える。


目的の木の実や山菜はズックがパンパンになるほど採れたので問題なし。

原種には頼らずにすんで良かった。


あと個人的に欲しいものといえば……

ふと頭の中に浮かぶ。


「竹っぽいのがあれば、とは思うけど……」


「竹?」


そう竹。

加工しやすくて食器や籠、楽器までも作り出せる凄いやつ。

加工しやすいから俺でも加工できるってわけじゃないけど。

少しでもヴェルさんを楽しませることが出来ればなぁ……と。


ただ、ヴェルさんは首をかしげていた。

もしかしてこの世界にはないのだろうか。

とりあえず、ピンときてなさそうなので写真を見せてみる。


「こんな感じの植物」


画像を見た途端、ヴェルさんが珍しく険しい顔をした。


「本当にこいつが欲しいのか?」


俺は頭に?マークを浮かべながら頷いた。

え? なに?

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