第38話 落ち込むこともあるけれど
夜明けて、ヴェルさんの森へ帰ってきた俺達は早速綺麗な川で水浴びをしていた。
ヴェルさんは早々に上がって、狼姿のまま毛並みを乾かしている。
曰く狼姿の方が乾かしやすいらしい。
……どこがとは聞かない。
俺はと言えば未だ川の中で仰向けで浮かんでいた。
腹の上でコダマたちが同じ格好をしているが気にしない。
これは新しい遊びじゃないんだけどなぁ……。
とりあえず、くよくよしててもしかたないので昨晩の事を色々反省しつつ、今度は石鹸作りに邁進しよう。
必要なのは油。
出来れば植物性が良いので圧搾して抽出する必要があるのか……。
またヴェルさん頼みである。
……これで良いのか俺。
砂浜でもそうだったが完全に足手まといと化してない?
……良いわけないよな。
俺は自分を叱咤して木材を確保……あれ?
木材ってどうやって手に入れよう……。
今俺の手にあるのはサバイバルナイフ1本だけで……これで木を切って木材とか無理ゲー。
となると初めから作らないといけないので、道具のない現状では必然的にヴェルさん頼りに……。
Oh……どう足掻いても脛齧り。
へっ、人間1人の力なんてそんなものさー。
落ち込んだ気分を払拭すべく、気晴らしにコダマたちに“けんぱ”と“足じゃんけん”と“大根抜き”を教えた。
はしゃいで遊ぶ姿が微笑ましい。
癒される。
1匹のコダマが近づいてきて俺に隠しながら持ってきたものを手渡す。
「ふおぉぉぉ……」
変な声が出たが許して欲しい。
え? 貰っていいのと尋ねれば頷くコダマたち。
まさかの気晴らしでガラス瓶を頂いてしまった。
栓はもちろんないものの、まさかの工芸品。
感謝の舞を披露してはしゃいでいるとヴェルさんが起きて、なんだか分からないけどみんなで一緒に踊った。
よくわからないテンションだったがまさかの貰い物!
ちょっとヴェルさんに心配されたが半泣きで喜んでたのはご愛嬌ということで流してもらおう。




