第33話 1頭分食い尽くしてやるとか無謀にもほどがあった。
鹿をきちんと解体すると40%程度の正肉が取れるそうです。
スッスゴィ...(゜Д゜ノ)ノ
お互いおなかを思いっきり膨らませて草むらに倒れこんでいた。
結局あの後かなりの量の鹿肉を食ってしまった。
しかし鹿肉は未だ健在。
初めは食いきってやる勢いで調理をしていたものの、大盛り肉丼のように底が見えず断念。
とりあえず残った分はヴェルさんが氷付けにして冷凍保存する。
俺の世界の知識で熟成させることや燻製も考えたが満腹のため頭も働かず断念。
焦ることもないか。
「この満腹感……あぁ、幸せだ。
この身体になって良かったのだ……」
ゲフゥと嬉しそうに言うヴェルさん。お腹がぽっこりしてるがワイルドだぜぇ。
ヴェルさんと一緒に肉の焼き加減の検証をしてみたが、やはりヴェルさんはレア派。
軽く表面を焼いてこんがりさせたものが好きだった。
「塩や胡椒をかけるとまた旨いよ?」
「それは本当かッ?!」
「俺とは味覚が違うかもしれないけど試してみたいよねぇ……」
「そうだなぁ……
それはそうとこの後どうするのだ?
その塩やら胡椒を探しにいくか?」
わくわくとしているヴェルさんに俺は少し唸る。
「俺も塩が欲しいし、石鹸も作りたいから海かなと思ってたんだけどなぁ……」
「何か心配事か?」
「何を作るにしても鍋がないときつそうなんだよね」
「鍋……?」
そう、鍋。
この際、鉄鍋でも土鍋でもいいのだが、ともかく“煮る”ための器具が必要なのだ。
残念ながら物件巡りの旅ではそういったものを見つけることが出来なかった。
多少の皿ならあったが、陶器(土器?)と思われるものは欠けてたり割れているのがほとんどで、大半が木皿。
さすがに木皿は火の燃料にしかならないし漏れるのが怖いから少数ある陶器も論外だ。
「鍋……それはどういうものなのだ?」
鍋を知らないヴェルさんがコロコロ転がりながらやって来た。
「服に草ついちゃうよ?」
「良いから見せてみろ」
仕方がないなと頭を撫でて杖で検索。
一応俺の世界の鍋とこの世界の鍋を出す。
この世界の鍋は石鍋と鉄鍋が主流のようで鉄鍋は主に貴族階級、要するにお金持ちが使う場合が多いようだ。
また一部に土鍋文化もありそちらは小さな瓶のような形のものが主流ではあるものの、見知った土鍋も見受けられる。
世界を跨いでも考えることは似たり寄ったりなようだ。
「むっ……思ったより形が難しい……」
「作ろうと思ったの?」
「あの神ができるなら我輩も出来るだろうと思ってな……
しかし……
むぅ……」
まぁこういうものは直ぐその通りに出来たりはしないだろう。
「とりあえず試しにやってみたら?
男は度胸!
何でも試してみるものさ!」
「我輩は雌なのだが……言われてみればその通りだな、よしッ!」
言うが早いかヴェルさんは走り出しさくっと人間大の大きさの岩石を持って帰ってきた。
そんなものを軽々と持ちながら走って帰ってくる事にも驚いたが、これ鉄鉱石か?
普通の岩にしか見えないんだが……。
「あ、あのヴェルさん?」
「フフン、見ていろスズキ!
我輩はあんな神よりも優秀なのだ!」
なんだろう、なんでか知らんがヴェルさんがゴーさんに対抗意識を燃やしてらっしゃる。
「で、でもヴェルさん」
「魔法も訳はない、あの神が使ったのを見ていたからな!
というわけでいくぞ!」
ヴェルさんが魔法を発動する。
あのときと同様に光るものの鉄が出来ている気配は……ん?
「むっ……失敗だと?」
「いや、魔法は成功してるようだよ」
俺は米粒以下の石をつまんでヴェルさんに見せる。
「なん……だと?」
ヴェルさんが見開いた。
「いや見よう見まねの魔法が成功すること自体は凄いんだけど、さすがにこうなるよ……」
「な、ななな、なぜなのだっ!?」
泣きそうな顔で詰め寄るヴェルさんをなんとかなだめながら鉄鉱石と含有量について説明した。
今回の教訓。
魔法は用法を守って正しく使いましょう。
岩石によって含有量は違いますが、そこいらの岩石にも微量ながら酸化鉄が含まれているそうです。
花崗岩で0.57%。
この世界の人間が含有量について正確に理解していたらと思うとホント魔法はチートだなと思えてきます。
ガクガク(((i;・´ω`・人・´ω`・;i)))ブルブル
 




