第3話 少しの物音で起きる夜を1週間も続けていたのでクソデカ狼さんにしがみついて寝てしまっても仕方ない。
φ(゜-゜=)<タイトル回収の巻
結局次の日までヴェルに抱き着いて眠ってしまった俺だったが、どうやらヴェルにそのまま目的の場所まで連れてこられたらしい。
平謝りしながらコダマが持ってきてくれた乾かしていた服を着て、目的のブツを確認する。
ヴェルが見せたかったのはどうやら杖のようだった。
俺はそれを見て目を見開く。
杖それ自体は、先がフック上になっている何の変哲もない木製の杖だったが、
「……浮いてる」
それは石の台座の上で直立のまま空中で静止していた。
俺はヴェルに尋ねる。
「え、この世界の杖は浮くのか?」
「浮いてるのは台座のせいだ。一度咥えたことはあるが、その際は浮かなかった」
そうなのか。
「これをどうしろと?」
「手に取れ」
「危なくない?」
「ちょっとピリッとするが問題ない」
静電気でも流れているのだろうか。まぁ、恩人の頼みなのでサクッと取ろう。
ちょっと腰が引けながらも杖を掴むと、
「あがががががががががっ!」
なにこれ、めちゃくちゃ痺れる!
というか、電気的な痺れじゃないこれ!
脳が、お脳がなんかやばい!
ブレインウォッシュならぬ、ブレインシェイク!
視界がブレブレのブレインシェイク!
やっと収まったと思ったら、急激な吐き気に見舞われて台座の横にリバースしてしまった。
ほぼほぼ胃の中は空なので胃液しか出てこない、口の中がすっぱい。
コダマさんが、袋を手渡してくれる。
たしかこれ、水袋だよな。
礼を言いながら口を濯ぐ。なんだか味に違和感があるが問題なし!
「うそつき!」
「あ、いや。まさかの現象に吾輩も驚いている」
アワアワするヴェル。かわいいから許す。
「吾輩のときはちょっとピリッとするだけだったのだが……」
「何が起こったのこれ?」
「実はそれは『賢者の杖』でな」
「何その素敵な名称」
「触った相手の記憶と知識を保存しているらしい」
「マジで!? 吸い取られてないよね?!」
「たぶん大丈夫だ」
本当か? そう思って、過去の記憶を思い出してみる。
あ、やばい……なんか死にたくなってきた。
「……どうした?」
ヴェルが両手で顔を覆って丸くなっている俺に尋ねる。
「ちょっと回復するまで待って……」
なんでふと昔のことを思い出そうとすると、真っ先に思い出したくもない思い出が蘇ってくるのだろうか……。
とりあえず、回復したので、しげしげと杖を見つめる。
……うん、普通の棒切れだ。
あ、このフックの形してるのって……
「クリスマスとかでよく見たことあるなぁ……たしかあれって……羊飼いの使う杖がモチーフだっけ?」
「クリスマスというのがよくわからんが、羊飼いが使う杖と同じ形というのは相違ないぞ」
おぉ、俺の雑学もなかなか使えるな!
「んで、言われた通り持ったけど、この杖どうすんのさ?」
「石突の部分が丸い装飾になっているだろう? それを回してくれ」
そう言われて、回してみる。するとカチリ、と音がした。
その瞬間、俺の前に映像が投影される。
「え、なにこれホログラムっ!? あ、違う空間ディスプレイだこれ!」
まさかの最新技術! しかもセンサーらしきものもが見当たらない!
すっげぇ!
すっげぇ……けど。
「……あのこれ」
白いディスプレイには四角い枠が表示されている。
なんだろう……凄い既視感を覚える。
というかこれ……
「その四角い枠に触れてみてくれ。文字を入力するためのボタンがディスプレイと同じように出現するはずだ」
言われた通りに触る。
出てきた。
しかもおあつらえ向きにQWERTYキーボード。
「そこに単語を入力すると、その杖に蓄えられた知識を検索して閲覧できるらしいのだ。ん? 吾輩が試した時と、ボタンの配置が違うな。何故だ……?」
ハハワロス。
まんまグー○ル検索じゃないかこのやろう!
(*・ω・)<インターネッツって知識の宝庫だよね。
今回から予約投稿始めました。
失敗していないことを心の底から祈ります。