第19話 先代さんはきっとイルカを女神様だと思ったに違いない。
結局、そのまま突っ走ることにしました。
これぞ、下手な考え休むに似たり。
(´・ω・`)
次の日、俺たちは棲家の掃除をすることにした。
崩壊した家具を片付け、他の廃墟で見つけたぼろ布で床を綺麗に磨く。
少々腰にくるものの、気持ちよく過ごせるよう全力で取り組むことにする。
掃除中、幾つか朽ちていない遺品を見つけたのでイルカと相談の元、俺が一時的に預かることにした。
基本的には貴金属だったので売ればそこそこのお金になるかもしれない。
とはいえ、先代さんの遺品なので、あまり売るつもりもないのだが。
とりあえず今は、もし研ぎを覚えたら磨いてみるのもありかと考えている。
家具類はほぼ朽ちていたがキッチンはどうにか使えそうだった。
水と火は魔道具(なんとコンロと蛇口型だった。コンロは中央に、蛇口はその口に魔石という原動力が埋まっている)というのを使っているので昔ながらの薪&井戸スタイルじゃなかったのは安心したが、トイレが糞壺だった。
しかもあった場所が土間。
掘り出して距離を離して外に埋めた。
真面目に衛生観念について一言言いたい気分になる。
魔道具については魔力を込めることが出来れば壊れない限り永続的に使えるとのこと。
コンロや蛇口は家に取り付けているため強化の範囲内に入っており、劣化はほとんど見られないとの調査結果が出た。
ちなみに調査の仕方は、賢者の杖を当てて状態その他を見るだけ。
万能すぎませんかね、この杖。
刃物関係は錆がひどくて殆ど使えなかったが、1つだけ鉄の鋏が出てきたので廃墟で見つけた研ぎ石を使って研いでみることにした。
一度ナイフを折ったので慎重にやり方を調べて研いだら時間は掛かったが上手く研げた。
研いでわかったがこれにも強化の魔法が施されていた。
「あぁ、先代さんは羊を飼ってましたから」
というとイルカは懐かしそうに研ぎあがった鋏を撫でた。
実際は撫でる振りだが、ここでツッコむのは無粋だろう。
ちなみにイルカはイルカの姿に戻っている。
あの姿では、俺のナニに悪いだろうと言って元に戻ったのだ。
……検索かけてこいつの性事情でも調べてやろうかと思ったが、理性が勝ってやめておいた。
ちなみにヴェルさんも家具の残骸の片付けに強化魔法への魔力補充にと尽力してくれた。
昨日は外だったが、このままいけば今日から念願の屋根付きの家屋で眠れる。
感動もひとしおだろう。
ただ、外に糞壺を移動しようとしてきたのを反対してきたときは焦った。
曰く家の中で生活を完結させたいそうだが、ぶっちゃけ仕切りがないのだ。
しているところが双方丸見えなのだ。
下手すると俺が目覚めるので衛生の大事さを力説して納得してもらった。
後はお風呂だがこの家屋にそのようなスペースがないことが分かった。
どうにも風呂釜自体文化として根付いてないらしく、身体を拭くのが一般的だそうだ。
水の魔道具があるのに謎過ぎる。
もしも風呂に入りたければ外に作るしかない。
かなりの重労働だし、道具も技術も心もとないがそれを推してでも作らねばならぬだろう。
……あまり考えないようにしているが、ぶっちゃけ自分の臭いに嫌気が差しているのだ。
ヴェルさんの匂いで多少薄れている(一言言っておくと、ヴェルさんからは良い匂いがする、が獣は獣であり、それ相応の臭いもする)。
そう、この時点で色々間違っているのだ。
この世界、いや俺の知っている生活圏には良い匂いのシャンプーもボディーソープもない。
もっといえば髭剃りもない。
もちろんきちんと水で顔を洗い、朝晩には身体も拭いている。
が、が!
現代人がそれで我慢出来るはずもない!
さらに言えば、昨日の夜のこと。
「スズキの顔はチクチクするな」
とヴェルさんに笑顔で言われてしまった……っ!
言われて……しまったっ!!
……ということで、目下の目標は『清潔』。
そのために風呂、そしてそれに付随するその他もろもろを調べて作ろうと心に決めた。
先に言っておこう。
いくら調べても帰る方法が見つからないから現実逃避しているわけじゃない。
心が折れそうなので戦略的撤退しているだけだ。
毎晩寝る前に手を変え品を変え検索かけてるのにその尻尾すら見つからないのはどういうことなんだよ……。
そんなことを脳内で叫びながら掃除をしていたら夕方前には掃除が終わった。
出たごみはヴェルさんにお願いして魔法で燃やし、魔法で消火。
……もしかして風呂釜さえ作れたら風呂に入れるかもしれない。
昨日までの事を振り返る。
このままいくとヴェルさん依存になりそう。
新タイトルを思いついたので、区切りの良いところで、変更しようと思います。
ヽ(*゜∀゜*)ノ




