第15話 お家探しにやる気を出す半神、偉大なるヴェルフール(雌)
内件はすごいスピードで終わっていく。
正確には廃屋ならぬ廃墟が多かった。
物件が朽ちていたのである。
しかもある物件には人がいた。
……人というよりもヴェルさんに近いケモ達だが。
曰く、あれが獣人らしい。
実のところ俺からすればヴェルさんの人化の魔法が成功しているのかわからなかったのだが、ヴェルさんは獣人になれたことでその成果をしっかり実感していたわけだ。
しかも獣人族は種類と数が多く、把握できないほどだそうだ。
……ケモナーいたら大歓喜じゃないかこの世界。
ちなみに物件にいた獣人たちに声は掛けなかった。
正直治安がどのくらい良いのか等わからないことが多いからだ。
出会って即、“貴公の首は吊るされるのがお似合いだ!”とかになったら死ねる。
俺は石橋を叩いて渡る程度の安全が大好きだ!
「それにしてもやっぱりあの地図、最新情報じゃなかったか……」
一時内件を中断し、休憩を取る。
多少気落ちしたものの、得るものはたくさんあった。
そう、道具の数々だ。
「只では起き上がらない男、サトウスズキ!!」
「お~……と感心してみたが、これはゴミではないのか?」
言われて拾ってきたものを見る。
大半がボロボロの工具や道具だった。
「まてまて、まさか俺だって無策で持ってきたわけじゃない」
「ほぅ?」
ヴェルさんの眼が細くなる。疑ってるな?
「まずはこれだ!」
取り出したのはかろうじて原型をとどめている石のハンマー2本だ。
別々の家で拾ったこれらをニコイチ修理した。
「これで一応は使える!!」
「一応なのか……」
うん、無いよりマシなレベル。
なんといっても欠けがひどいハンマーと腐りかけている柄をはずして合わせただけだし。
とはいえ、仕組み的にはたぶん使えるようになっている……はず。
「本当はこのハンマー自体に強化魔法を使えれば一番だが、俺魔法つかえないし」
「ん? 道具に魔法をかけるのか?」
「あぁ、帰還魔法を調べるついでに見つけたんだ」
賢者の杖で道具の強化魔法のページを開く。
これは道具に魔方陣を描く魔法のようで、例で載っている画像は文様に近い。
「複雑じゃないし、これならできそうだな」
ヴェルさん、まさかの一言!
「マジで!?」
「貸してみろ」
ヴェルさんいきなり人化した。
ギョッとして固まった俺からハンマーを取り、爪で刻印を刻んでいく。
1分もせずに完了したので、試してみる。
実用に十分耐えうるハンマーが出来た。
魔法ってすげぇ!!
「これなら簡単に修理できそうだな。スズキ、次だ次!」
「あいさ!!」
魔法の凄さに感激した俺はすぐさまニコイチ修理をしては、出来たものをヴェルさんに渡した。
殆ど時間もかからず工具の修理が完了した。
魔法ってマジすげぇ!!
終わったところで気づいて、ヴェルさんに元の姿に戻ってもらう。
……ヴェルさんの裸に慣れていく自分がいてコワイ。




