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第138話 偉大なる狼の最期

まるで解っていたかのように、次の日やってきたポンコツさん達に2人であっちの世界に帰る事にしたと告げた。


「良かったですね、ヴェルフールさん♪」


「スズキの世界の創造神よ、こうなることをわかっていたのか?」


「分岐と確率の問題ですからそうとも言えますね」


「フッ、煙に撒くのが好きな神だな」


「神様なんてそんなものです。

 でも良いのですね?

 貴女はこの世界で培った全てを失いますよ?」


「スズキは残るだろう?」


ヴェルに話を振られて俺は力強く頷いた。


「当たり前だよ」


「だ、そうだ」


「ふぅ……佐藤さんも良いのですね?

 ある意味貴方はヴェルフールさんに魂や縁、因果によって縛られることになりますよ?

 どんなに相手を嫌おうと憎み合おうと彼女との縁が途切れることはありませんよ?」


「望むところです」


「なら創造神としてヴェルフールさんを受け入れ、貴方達との約束を果たしましょう」


創造神がそう言って目を閉じるとヴェルの身体が発光した。


「ヴェル……ッ」


「大丈夫だから見てろ」


ゴウさんに引き止められ、俺はその場で事の成り行きを見守る。

光は少しずつ弱まり、その中からヴェルと同じ髪型、髪色の人が姿を現した。


「まぁこんなものでしょう」


フムとポンコツさんが頷くのを見て、ヴェルに駆け寄る。


「大丈夫?」


「あっ、ああ……なんだか体中がスースーするがな」


生まれたてのような透き通る自分の白い肌を見ながら彼女は言う。

途端彼女の顔を見て反射的に顔をそらした。


「ど、どうした?

 顔の形も変わっているんだが、どこか変なのか?」


「あっ、いやその……実際はその逆と言いますか……」


凄い美人がそこにいた。

目元はキリッとしていて、ものすごく迫力のある美女だった。


「ヴェルフールさんを人間にしたらこんな感じですよ」


「フム……スズキ、人間になった我輩はどうだ?」


見透かされてるようなポンコツさんの言葉の意図を汲み取ってか、ヴェルがあからさまな演技でしなだれかかってきた。


「ブッ!!」


「うおっ!!?」


思いっきり、鼻血を噴いてしまった。

頭がくらくらしてその場にへたり込む。

マジでか、こんな漫画みたいな事って起こりえるのかッ!?


「だ、大丈夫かスズキッ?!」


「だ、大丈夫大丈夫……」


鼻血を拭きながら上を向きつつ、首の後ろをトントンと叩く。


「どうやら、佐藤さんはものすごくお気に召したようですよ?」


「そ、それはそれで……なんとなく前の姿があまりよくなかったと言われているようでモヤモヤするな」


「正確には種族の壁が取り払われたことによりダイレクトにヴェルフールさんの魅力が伝わるようになっただけですね」


「そういうもの……か」


「そういうものですよ」


ポンコツさんに言われて自信がついたのかヴェルが俺の腕に抱きついて頬擦りをしてきた。

姿が変わってもこの癖は直らないようだけど、それにしても刺激が強い。

ちょっとの仕返しも込めて彼女の頭を撫でると、聞いた事も無いような可愛らしい声でヴェルが飛び上がった。


……今、人目があって良かった。

暴走してヴェルさんを傷付けないように気をつけよう。

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