第129話 振袖と餅つき
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気づくのが遅れて申し訳ありません。
(´×ω×`)
ヴェルさんの振袖は後光が射しているのかと見まがう程美しかった。
金糸まで施された反物も素晴らしいが古来最上位とされていた紫が彼女の色を引き立てている。
しかし紫色に染めるにはかなりの手間が掛かるはずだが、ここまで鮮やかに染め上げられた振袖を見ると見事の一言しか出てこない。
「アルさん、グッジョブ!」
歓喜の声を掛けるとアルさんは親指を立てて良い笑顔で答えてくれた。
ちなみに彼女は水色のグラデーションが入っている白の振袖を着ている。
まぁ似合っているけど、そんなことよりヴェルさんをエスコートしよう。
「浴衣より重いな」
手を取ったヴェルさんがはにかみながら笑う。
「着るの大変だったでしょ?」
「女性にそう尋ねるのはどうかと思うが、確かに大変だったのだ。
まぁ、スズキを釘付けに出来ているなら着た甲斐はあったな。
しかし、この格好では運びづらいな」
「俺がやるから大丈夫だよ。
その代わりヴェルさんがお餅をひっくり返す係りね?」
「確かに動きづらいからなしかたないな、袖も特殊のようだし。
しかし慣れたら変わってもらうからな」
「もちろん♪」
あぁ、顔が緩む。
ヴェルさんを座らせるとトウマ君が彼女に話しかけてきた。
「ヴェルフール様お上品!」
「そうだろう、トウマは着ないのか?」
「動きづらそうだから嫌!」
「ククッ、かもな。
なら番を見つけたら着てやるといい。
スズキみたいな顔になると思うぞ?」
「ん~……良く分からないけどそうしてみる!」
「それまでにはあの上級精霊が作法をしっかりマスターしているだろうから、頃合を見てあ奴に教えてもらうと良い」
「私が……上級精霊の私が……狼に負けるなんて……」
フウラが打ちひしがれているが触れないでおこう。
「それよりもサトウ君、お餅食べようよ♪」
お前は色気より食い気かジルベルト。
いや、こいつ一応雌だったか。
「ジルベルトさんは着ないんですか?」
「この身体で着てもね。
ここに来ると人型の女性の身体が羨ましくなるよ」
「ならそうすれば良いでしょうに」
人化の魔法については事故がそれなりに続いた関係で既に改良が行われ、人化の固定化を解く魔法が開発されているのだそうな。
「リハビリが面倒だからいやだなぁ。
それに男の方が道中無用な危険は無いし」
前者はどうかと思うけど後者はなかなかに切実だ。
「ホント、この世界って命が安いですね」
「ここ200年くらいは安定してきてるけどねぇ。
ま、この姿にも愛着があるから問題ないよ。
我慢できなくなったら最悪このまま着ることにするよ」
……似合いそうなのがそこはかとなく嫌だ。
「餅つきは子供のとき以来だから僕も混ぜてね?
報酬はきな粉やゴマって処でどうかな?
ずんだも用意しているよ?」
マジでかと思いつつ、結局皆で餅つきをしながら仲良く食べることになった。
ヴェルさんがずんだ好きだったので次回はしっかり用意することにしよう。




