第121話 謀(はかりごと)
やっと靴選びの段になって俺と高橋氏は奥方の手によってヤオハチから追い出されてしまった。
「……何故に?」
『楽しみにしていなさい!』と言っていた奥方の良い笑顔を思い出しながら呟いた。
「たぶんファッション関連のお店を梯子する気なんじゃないかなぁ」
高橋氏の予想になるほどと頷く。
きっと奥方は異国情緒を楽しんでもらうためにヴェルさんを竜王国スタイルのご令嬢に仕立てあげるつもりなんだろう。
別名……
「「着せ替え人形……」」
高橋氏とハモッてしまった。
お互い苦笑しつつ、彼オススメの憩いの場へ向かうことにした。
大変だと思うけど、いつもと違う格好というのも見てみたいので頑張って、ヴェルさん!
竜王国で憩いの場として親しまれている噴水広場も他の場所と同様、あまり人影は見当たらなかった。
「ここまでヒトがいないとゴーストタウンみたいですね」
「その例えは酷いなぁ」
ベンチに座りながらそう感想を述べると高橋氏は笑った。
「意図的……じゃあないんですよね」
「おっと……思った以上に疑り深いね」
「仕方ないじゃないですか。
こんなに整った街があるのに、みんなして畑に行っているなんて普通じゃ考えられない」
「もっと騒がしい街を想像していたようだね。
仕方がないよ、この国のドラゴンたちは勤勉で趣味が高じてやってる仕事だから正直ワーカーホリックだ気味し、種として子供も少ない。
それに喧騒の一部分を担っている観光客がこの街にはいないんだから」
「そういえば……ドラゴンってヒト族に……」
「あぁ、ヴェルフールさんに聞いたんだね。
そう、俺達ドラゴンは人間からしたら畏怖の対象なのさ。
だからこんな立派な街を作っても商い関連でもなければ誰も訪れない」
「それはなんというか……さびしいですね……」
「そうでもないさ。
特にヴェルフールさんと離した君と密談するには、ここはもってこいの場所だよ」
次回更新は4/8日です。




