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第119話 影響力

イギリス然とした竜王国の首都の通りにはさほど人影はなく、閑静な住宅街を思い浮かべてしまう。

が、実際はそうではないらしい。


「この時間は皆畑仕事さ。

 食事処も昼間では開かないね、あっちの世界の食堂でも良くあったろ?」


高橋氏に言われて思い出してみれば、あっちの世界でも個人経営のところは昼時と夕飯時だけ開店しているとか、そういうのが多かった。


「今街を歩いている人たちは職人に用事があったり、俺達みたいに散策目的なのが殆どだよ。

 ま、市場は別だけどね」


街の外れにある市場には毎日腕自慢のドラゴンたちによる品評会と共に作物のセリが行われているらしい。


「前にも聞いたと思うけど、ドラゴンの生活にお金ってあんまり要らないんだよね。

 でもセリって事は買い手が金額を競い合う。

 つまり」


「人間にとっての価値のバロメーターであるお金で自分の作物に点数をつけている、と?」


「そうそう。

 たまにドラゴンが『もらったお金はどうしたら良いのか?』って相談にくるよ」


「贅沢ですねぇ……」


「だよねぇ。

 初めは研究機関に投資したらどうかって言ってたんだけど研究員もドラゴンだからさ、『お金より食べ物をくれ』って言うんだよ。

 研究に必要なものは自前で揃えるからって」


「……なんだか変な感じですね」


「俺もそう思うけど、ドラゴンって基本途方もなく長寿で万能だからね。

 そんな離れ業も出来ちゃうんだよねぇ」


「……1つ思ったのだが」


奥方と一緒に後ろを歩いていたヴェルさんが疑問を提示する。


「ドラゴンにとって農業とはそれほどまでに特別なものなのか?」


「うちの旦那様がやらかしちゃったのよね」


奥方がくすくすと笑いながら高橋氏を見つめる。

彼はバツが悪そうに頬を掻いた。


「俺、向こうの世界で農業大学に通ってたんだ。

 だからハニーのお義父さんに挨拶に行ったときに、

 『作物を植えて何が楽しい?』

 って聞かれたときに熱弁しちゃってさ」


曰く、食いつぶすだけなら(イナゴ)にも出来るとまで豪語しちゃったらしい。

さらに、『食うために植えるなんて単純作業の何が面白い』とバカにされてさらにヒートアップ。

品種改良の重要性とあっちでの歴史を説くマシンガントークで論破しちゃったそうな。


「なかなか過激ですね」


「いやぁ、若気の至りって奴だね。

 もしくは黒歴史かな」


「旨い作物にも歴史があるということか……」


「そうよ、ヴェルフール様。

 何事も一歩ずつ歩むことが重要なの、それが文化ってものよ。

 ということで着いたわ、ここが私のお気に入りの靴屋の『ヤオハチ』よ!」


俺は看板を見て高橋氏を見つめた。


「……つい出来心で」


彼は乾いた笑いを浮かべて視線をそらしていた。

次回更新は3/25日です。

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