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第118話 時計台の街

奥方「なんでアレで伝わったの?」

高橋「彼とは波長が合うからね。

   きっとハニーに怒られる前の俺と同じ気持ちを抱いていると思ったんだよ」


次回更新は3/18日です。

ヴェルさんと一緒にへっぴり腰になりながら転移魔法で出来たゲートをくぐるとそこはイギリスだった。

あ、いや本物のイギリスじゃない。

イギリスと言えば誰もが思い浮かべる大きな橋と時計台に似たものがあったからだ。


ヴェルさんにしがみつきながら目を見開いている俺を高橋氏がクツクツと笑う。


「粒子分解じゃなくて残念だったかな?」


「い、いや……未来ロボットのドア的なものなら最初に言っておいてくださいよ。

 それよりもこれは……」


「佐藤君の世界のイギリスにもあの時計台があって良かったよ」


高橋氏の口ぶりから察するに、やはりアレを模したものらしい。


「街を作るから意見をくれって言われて提案してみたんだ。

 ちなみに真っ先に日本家屋を提案したら『貧乏くさい』って却下されたんだよ、酷いと思わないか?」


それは酷い。

日本家屋ほど高温多湿な環境に向く住宅構造はないというのに。


そう考えながら俺がうんうん頷いていると、高橋氏の奥方が彼の頬を引っ張りながらジト目で睨んでいた。


「ダーリン、確かにパパの言い方がアレだったのは認めるけど、そもそも当時は『土足厳禁』なんて言葉を誰も理解できなかっただけよ」


「ということは……靴を脱いで生活する=原始的な生活を送るって考えたって事ですか?」


「そういうこと。

 さらに言えば、当時竜王国を作ろうとしていたドラゴンは人間のように文化を持って暮らす事に憧れていたの。

 その最たるものがファッションよ、『オシャレは足元から』って言葉はドラゴンの間では常識なの」


と、ファッションに対する情熱を語るこの奥方からはアルさんに似た波動を感じる。

きっと彼女とは波長が合うのでは……あっ、既に友誼を結んで新作ファッションの話し合いをしていると。


「フットワークの軽い奥方だ……」


「買うより作る派な奥さんだから散財することはあんまり無いんだけどね」


材料は自分で獲りに行けばいい精神のようで、竜王国の外交官からたまにお小言を頂くこともあるそうな……何をやらかしてるんだろうね。


「我輩には分からんのだ……靴はそんなに大事なものなのか?」


言いながら自分の大きな足を見つめるヴェルさん。

そういえば浴衣を着たときも何も履いていなかったように思う。


「靴は人間の足の裏を保護する役割があるから外を歩くときに必須だけど、ヴェルさんはあんまり必要そうじゃないよね」


「そうだな、生まれてこの方歩いているだけなら怪我をした事はない。

 だが……むぅ」


「……ヴェルフールさんの(つがい)の方はまだまだね」


「頭でっかちなのさ。

 フム……佐藤君」


「な、何です?」


「ヴェルフールさんに靴を履いてもらいたいかい?」


「え?

 別にどちらでも……」


「じゃあヴェルフールさんに綺麗になってもらいたいかい?」


「ヴェルさんは今のままでも最高に綺麗なのですが」


「微妙に機嫌を損ねているところ悪いけど、まず君にはこの言葉を送ろう。

 『美に頂上はない』」


「あ、なるほど」


そこまで言われてやっと理解した俺は、石ころを足で弄び始めたヴェルさんにしっかりと伝える。


「足元をおしゃれしたヴェルさんも見てみたいんだけど……どうかな?」


「ふ、ふん……そこまで言うならしてやらんでもない。

 でも今度は自分で気づいてくれるな?」


「約束する」


俺達は仲直りのキスをすると早速奥方ご用達の靴屋さんへと向かうことにした。

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