第115話 天変地異
天変地異とはなんてことはない、地震のことだった。
「はぁ……」
「なんだか反応が鈍いね。
前触れも無く地面が揺れるんだよ?」
「いや、結構普通だなぁって」
もっとこう、いきなり草木が枯れて死の大地になるとか想像してたんだけど。
「普通って……」
「ジル、だから俺達日本人は地震じゃ驚かないって言ったじゃないか。
それよりもその先に酷い災害が出てくるだろ?
そっちを説明しなきゃ」
高橋氏がため息混じりにジルベルトにアドバイスをする。
「高橋氏、震度とかどのくらいなんです?
あと、精霊達が故意に地震を起こしてるんですか?」
「一度体感したことがあるけど、震度は最大で4くらいかな?
ただこっちの建築技術だからね、民家倒壊は当たり前で城や城壁にも大打撃だと思うよ。
精霊達が故意に起こしてるって事はないけど、間接的な原因になってるよ」
「そこから先は僕が!
コホン、精霊達は魔力の掃除屋と言われ、世界の魔力の調整を行っているんです」
なんでも、世界中にある魔力は放っておくと増えて溢れて淀んでしまうため、その魔力の量を整えることが精霊達の主な役割なのだそうな。
「淀むと何が起こるかと言えば、まずは地震」
淀んだ魔力が前兆なしに地面を揺らすそうな。
……魔力ってすげー。
次に起こるのが草木の異常成長。
魔力が栄養剤になって普段よりもよく生育していくという。
尚経過時間により相乗効果との事。
この頃になるとヒト族の使う魔法にも影響が出てくる。
簡単に言えば暴発が増えるんだそうな。
そこから連鎖的に火災やら水害と災害が増えていく。
「さらに新種の魔物も生まれるよ」
……気軽に言ってるけど、それ大丈夫なの?
「次の魔物の集団暴走に比べれば屁でもないね」
……なるほど。
「結果的に魔王国は森になるって事ですか?」
「そういうこと。
生まれた森が落ち着くまでたぶん100年程度かな?
その間は近づくことも辞めた方が良い場所になるね」
「ち、近づくとどうなるんです?」
「森の中で繰り広げられている魔物同士の生存競争に巻き込まれるね」
「ま、俺達にわかりやすい言い方をするならば蟲毒って感じかね。
生き残るのは固有固体の魔物だけど」
高橋氏が簡単にまとめてくれた。
俺はおずおずと手を上げて提案してみる。
「そんな風になるなら魔王国を先に滅ぼしちゃえば良いのでは?」
俺の提案に王様が笑って答えてくれた。
「やるだけ無駄だ。
遠い昔にそれをしたが、巡り巡って最後に当時の愛し子が全ての責任を押し付けられて火炙りにされたからな。
ちなみにその時に出来た森がヴェルフール大森林。
ヴェルフール様が治めているこの森だ」
「それは我輩も知らなかったのだ」
「数千年も前故、致し方ない。
今の森は落ち着いているし、度を超えた獰猛な魔物もいないからな」
「……あぁ、なるほど。
この森にたどり着いたとき、何故か散々襲われたのはそのせいか……」
ヴェルさんが深いため息をつきながら俺の手を握った。
俺は彼女に手を弄ばれながら、森の大きさを思い出していた。
……合間に山もあるものの、この森は相当に広い。
背筋が寒くなってヴェルさんを少し抱きしめてしまっても致し方ないだろう。
あと1、2話で区切りが良くなりそうです。




