第110話 酩酊
酔いを醒ますために祭囃子から離れたところにある丸太の椅子に腰掛ける。
さすがに疲れた。
酒の入った竜王国の王様は昔話をループさせるし、高橋氏も小さかった頃の子供達がいかに可愛かったかを熱弁しだすし、対抗して王様がジルベルトの可愛さを熱弁、最後には嫁入り問題で2人とも勝手に消沈していった。
話を聞く限り、高橋氏には今日も一緒に来ているお子さんのミウちゃんの上に2人(匹だろうか?)の子供がいるらしい。
2人とも成人(?)しているので今では離れて暮らしているとの事。
その2人もあまり実家には寄り付かないようで多少寂しい思いをしているようだった。
……耳が痛いったらないな。
冷水を煽り、ため息をつくと、見慣れたヴェルさんの足が目に入る。
……ちょっと浴衣がはだけてるんですけど。
千鳥足で座っている俺に倒れ掛かったヴェルさんを隣に座らせ、水を持ってこようか尋ねると、彼女は激しく首を横に降った。
「しゃっきにょんじゃきゃらいい
おしゃけちょは、ふわふわにゃな」
口が回ってない。
「そうだにぇ」
俺も回ってないなこりゃ。
「ヴぇるさん、お酒強くなかったっけ?」
「火をふきぇるしゃけをにょんじゃ」
そう言ってヴェルさんが指をさす。
王妃と高橋氏の奥さんとアルさんとクッコロさん及び竜王国から来た女性騎士ら女子メンバー全員がぶっ倒れていた。
「……ミウちゃんは?」
「しゃきににぇどこにぇひゃこんじゃ」
良かった。
一瞬で酔いが醒めてしまった。
「ミウもはーれみゅ?」
「ハーレムはありましぇん」
……前言撤回。
そんな簡単に酔いなんかさめるもんじゃないよね。
「じぇもちょぎしちぇない……」
ちょぎ……?
あぁ伽ですかい。
女子会で何の話してるんだか。
「焦るのは良くないよ?」
「しにゃいとしゅじゅきがはなりぇるって……」
んなアホな。
「それはない」
「ほんちょ?」
「約束する。
そりゃヴぇるさんとちたくないわけじゃないけどね」
「今から……しゅる?」
「酔っ払っているときにはしたくないなぁ。
それにヴぇるさんに発情期があるなら待とうと思っていたし。
……もちろん、誘う勇気がなかったっていうのもあるけど」
「しょっか……
はつじょうきわかんにゃい。
でも涼しくにゃるちょ、あばれちゃくにゃる」
発散方法あばれるですかい。
「じゃ、それまでまってみようか?」
「うん……」
「じゃあ今はキスで……」
「きしゅ……しゅき……」
口付けの後、はにかんだヴェルさんはそのまま夢の世界へ旅立ってしまった。
膝枕をしながら彼女の髪を撫でる。
宴も酣。
もう少しヴェルさんの寝顔を堪能したら、彼女をベッドに運んであらかじめ準備していた布をかけて回ることにしよう。
そう夢想していると、ヴェルさんの顔に知らない人影が落ちていることに気づいた。
「こんばんは、良い月夜ね?」
驚いて顔を上げるとそこには見たことがない妖艶な女性と彼女に手を引かれている豪奢な服を着た知らない子供が立っていた。
「真夜中だけど、ちょっとお話よろしいかしら?」




