第103話 予想外
──でっけぇ。
アルさんの家を見た俺は間抜けに口を開きながら彼女の家を眺めていた。
彼女の家は森の中にある3階建ての洋館で、ホラーやミステリーの舞台になるにはこれほどの逸材はないッ!
と豪語できるほどある意味不気味な様相を呈していた。
その理由は簡単で、作りがしっかりしているこの館だが庭には雑草がぼうぼう生えまくり、外壁には蔦に絡まり、日当たりの悪いところは苔が生しており、ガラスは曇っていたからだ。
ガラスあったのか、この世界。
ちなみにうちは板で出来た雨戸のみだったりする。
「これはどうも……家事のしがいのありそうな館だね」
「まぁアルケニーの家はいつもこんなものなのだ。
さて、とりあえずあやつを呼ぶか」
そう言うとヴェルさんは少し大きめの遠吠えをした。
その途端、どんがらがっしゃーんという音が屋内から聞こえる。
「あらヴェルフール、よく来たわね。
ヘタレも一緒なんてデートかしら?」
クククっと笑って出迎えるアルさん。
告白のあとからこんな感じで仲をからかってくるアルさんだが、俺は全く別の事に気を取られていた。
今の彼女、全身真っ青だった。
……まぁ思いっきり青い水が彼女の髪から垂れているので、染料を頭からかぶってしまったのは明白なのだが。
「いやあの……ちょっとお願いがあってきたんですけど、とりあえずお風呂に入った方が良いんじゃないですか?」
「それも……そうね。
横着なんてするもんじゃないわね。
あとこの格好から分かると思うけど、今染料を色々試している最中だから屋敷の中には入れられないの。
あっちにベンチがあるからそこで待っていて」
そう言うとアルさんがまた屋敷の中へと消えていく。
鼻辺りを押さえているヴェルさんが俺の服のすそをつかむ。
「染物とはあんなに凄い臭いなのか?」
「醗酵の最中はあのくらい臭いらしいね。
俺も初めて知ったよ」
知識としてはアルさんと調べた時に知ってたんだけどね。
俺も鼻が曲がるかと思った。




