第102話 コダマのお願い
浴衣のお披露目をして数日が経過した。
ここ最近は雨の日が多いものの、今日は雲ひとつない快晴。
所謂洗濯日和という奴だ。
俺はシーツをしっかりと伸ばしながら家の外に備え付けられた物干し竿にシーツや衣類をを干していく。
ちなみにこの家での家事は8割が俺で2割がヴェルさんだ。
魔法で出来るところはヴェルさんにお願いしその他は俺と言う形。
まぁ俺が教えてヴェルさんが全てやろうとしていた時期もあったのだが、それはさすがにいたたまれないと土下座込みの懇願をして今のスタイルに落ち着いている。
そして魔法を使ってくれるので現代社会と変わらない程度には楽チンに家事が終わるのである程度物が揃った今となっては気のままスローライフな日常を過ごしていた。
「?
どうした?」
俺は皆が遊んでいる中、1人だけ外れで洗濯物を見ているコダマに話しかけた。
コダマ達を観察していると面白いもので、外見にあまり差異はないのだが結構行動は個性的だったりする。
かけっこを好む者や花を好む者……どうやらこのコダマは風に揺れているヴェルさんの浴衣が気になるようだ。
「(コロコロコロ)」
コダマが浴衣と自分を交互に指差す。
「浴衣が着てみたいのか?」
コダマが飛び跳ねた。
なんでこう、こいつらはいちいち行動がかわいいのだろう。
顔が緩みすぎないようにちょっと気をつけながら少し思案する。
「ん~……これはアルさんが作ったものだから、作れるかどうか聞いてみようか?」
その提案にまたしてもコダマが盛大に喜んだ。
とりあえず誰に頼まれたか分かるようにこのコダマに櫛作りで余った藍染の紐を渡してヴェルさんを探して辺りを見回した。
思い立ったが吉日、出来るだけ早くまずは作れるかどうかを聞きに行くことにしよう。
「……浮気か?」
アルさんの家に行こうと提案したところ捨てられた子犬ばりのウルウル瞳とセットでヴェルさんが呟いた。
「違います。
というかなぜそうなる……」
「オスが恋人以外のメスに会いに行くのは浮気だと前にアルケニーに教わったのだ」
道中でヴェルさんにしっかりと浮気についてどういうものか教えてみた。
……ゴメンヴェルさん、この話題は早かったね。
とりあえず俺は浮気とか無理だから安心していただけると幸いです。




