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蝶は、暁を知らない。  作者: 白露 彩風
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捌 風は秋を連れる


真夜中の密談からひと月、幻想郷は本格的な秋を迎えた。目に付く全ての木々の葉が黄色や紅に染まっていき、心地よい風が神社の中を駆け抜けた。あれからというもの、霊夢はそれまでと変わらない日々を送っていた。朝起きたら千夢と一緒に境内の掃除をし、少し千夢の稽古の相手をする。最近は力も付いてきて、まともに弾幕を出せるようになった。昼からはゆっくり過ごしながら、時々千夢の髪を梳く。櫛を通すと、さらさらと柔らかな髪が霊夢の白い手の上を泳いだ。稽古のし過ぎで疲れて眠ってしまった千夢を膝枕したり、霊夢はとても充実した日々を過ごした。もちろん魔理沙や、ほかの住民ともお茶をしたり、泊まらせたり、代わりに千夢の相手をしてもらったりなど親睦を深めていった。おかげで、千夢は皆から「千」や「千ちゃん」と呼ばれ好かれるようになったし、それを霊夢は幸せそうに見ていた。ただ、魔理沙だけは、皆のいる前では、それまで通りを貫いていたが、少し離れた所で、霊夢の行動を細かく観察していた。1日1日秋が深まる度に、変わらない日常というのが、魔理沙の心を重く支配していた。


そんなある日の事だった。守矢神社の巫女・東風谷早苗が博麗神社を訪れた。早苗は霊夢と魔理沙より3つ歳上で、大人らしい体をしているが、中身は霊夢達と対して変わらず、その為、3人はとても仲が良かった。

「霊夢さーん、魔理沙さーん、千ちゃんこんにちは」

「いらっしゃい、早苗。上がって」

そう声を掛けた霊夢は、早苗の後ろに子供が隠れているのに気づいた。

「ん?早苗の子供か?」

「何言ってるんですか。うちの神社の巫女見習いの早季(さき)ちゃんです」

「どうも、こんにちは!博麗霊夢さん、霧雨魔理沙さん!東風谷早季と言います!」

早季のはつらつとした物言いに霊夢と魔理沙は感心した。

「へぇ、そっちにも巫女見習いいたんだな。それに千と違って元気な子じゃないか」

「ほら、千も挨拶してごらん」

霊夢に背中を押された千夢は、恥ずかしそうに早季の前に立った。

「はじめまして、早季ちゃん。博麗神社で巫女見習いをしています、博麗千夢です」

「よろしくね!ねぇ、私達歳も近いんだしさ、敬語は辞めようよ!私も千ちゃんって呼んでいい?」

「うん、いいよ。よろしくね、早季ちゃん」

霊夢は千夢に友達が出来たことを嬉しそうに微笑んでいた。その顔を、魔理沙はじっと見ていた。


その日の昼は、早苗達が持ってきたさつま芋を焼き芋にした。

「だいぶ日中も寒くなって来ましたね…。温かいお芋が美味しいはずですね」

「そうだな...なぁ、早苗」

焼き芋を食べていた手を止め、魔理沙は早苗に問いかけた。

「もし...もしだぜ?霊夢が私達に隠し事をしてるとしたら、早苗ならどうする?」

「霊夢さんが...隠し事ですか?」

早苗はふと霊夢の方を見る。どうやら千夢と早季の弾幕ごっこの相手をしているようで、こちらの会話は全く知らない様子だった。

「魔理沙さんは、どうするんですか?」

「私は...霊夢(あいつ)を守りたい。あいつが無茶をするなら、何が何でも止めるさ」

「私なら、霊夢さんの思うようにするのを見守ります。もちろん、本当に危ない時は助けますけど。だって...」

そこで早苗は魔理沙に霊夢の方を見るように促した。

最初は手を抜いていた弾幕が、どんどん本気のそれになっている。千夢と早季もそれに必死で追いつこうとしている。

「あんなに幸せそうな霊夢さんが、私は好きですから。霊夢さんがしたい事なら、私は応援します」

早苗は魔理沙を真っ直ぐ見据えてそう答えた。

「応援...か。そうだよな。まぁ、霊夢が私達に隠し事してるってのも、私の思い込みかもしれないし。悪かったな、変な事聞いて」

「いいえ。魔理沙さんは溜め込みすぎますからね。いつでも言ってきてください」

「助かるぜ」

魔理沙はすっかり冷えてしまった芋を頬張る。秋の芋は冷めても美味しかった。


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