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蝶は、暁を知らない。  作者: 白露 彩風
14/17

拾参 蝶は紅を纏う


博麗神社に霊夢達が辿り着いた。

「霊夢様っ!」

千夢が霊夢に駆け寄り、腰に手を伸ばした。それを、霊夢は声も出さず抱き締めた。

「千...よく頑張ったわね。ありがとう」

「霊夢様、異変は...?」

千夢は霊夢を下から見つめる。

「これから解決するわ。その前に千に渡したい物があるの」

「?」

霊夢は、右手を髪元に伸ばし、髪を結んでいた紅のリボンを外した。解けた髪はさらさらと靡き、そしてふわりとその動きを止めた。一連の動作に千夢が魅入っていると、目の前に外されたリボンが突き出されていた。

「これ...霊夢様の」

「千に持っていて欲しいの。これからする事には必要無いし、千にはもうひと踏ん張り頑張って貰いたいから...」

「何でも言ってください!」

千夢は手渡されたリボンを握り締め、強い口調で次の言葉を待った。

「やる事は、さっきまでと同じよ。今知っての通りあの妖怪がこちらへ向かってる。私があの妖怪を倒すまで、さらにここの結界を強化して欲しいの。出来るかしら?」

霊夢は優しく尋ねる。

「はい!やってみせます!」

千夢のその言葉を聞いた霊夢は、微笑みながら千夢の頭を撫でた。

「しっかり守るのよ、千。私の分までお願いね」

そう言い、霊夢はそっと千夢の手を自分の腰から離した。そして、霊夢はひとり神社の中に入っていた。


ーーー


「辛気臭いじゃないか、霊夢」

「そうですよ。あんな見え見えの嘘」

背後から聞こえる声は、物寂しそうに言った。

「魔理沙、早苗」

部屋の柱に寄りかかっている魔理沙と、その横で佇んでいる早苗に霊夢は声をかけた。

「ほっんと、アンタ達はお人好しなんだから」

霊夢は目を細めて、笑った。


ーーー


霊夢はひとり重い板で出来た引き戸を右に押した。

檜の香りが漂うその空間で、霊夢は静かに深呼吸をした。漆黒の胸元までの黒髪は首の付け根辺りで白の組紐で縛られ、横髪に巻かれた組紐の紅がよく映えていた。あんなに嫌がって来ていた千早は、日の入らないこの空間では、寒さを耐えるのに丁度いい。千早の隙間から見える紅白の袴は、きちんと帯がされていた。左手にはお祓い棒、右手には幾つもの札を入れた漆塗りの箱を持っていた。そして、その箱の中には一冊の分厚い書物も入っていた。霊夢はその空間の中央辺りで蝋燭の火を灯し、それを邪魔にならない場所に置いた。そして、黒塗りの箱から札を取り出し、それを四方に並べ、その四方の外に箱を置き、自分は静かに四方の中央で正座をした。まるで、誰かを待つかのように...。


蝋が溶け、チリチリと火の鳴く音だけが、霊夢の耳に響いていた。


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