2・青春という名の地獄
’’ピピピピ ピピピピ ’’
目覚ましがけたたましくなったので、よっこらせと起き上がる。眠いなぁ・・・。
「おきなさいー!沙紀」
「おきてるよー!」
母が階下から大声で呼ぶ。さぁ、いくとするか。
制服に着替えて、スカートを折り曲げいつもの長さにする。スクバを抱えて階段を下りると、父と妹はご飯を食べ終わりしばしの団らんに花を咲かせていた。思春期になる前に、沢山話さないと――――いずれ妹も私のようになってしまうのだから――――かわいそうな父親だ。別に、父と話したいわけではないのだが顔を見ると話すことも忘れて心の中にはもやもやがいつまでも残っている。
親孝行、してあげなきゃな。
パンを朝から4枚平らげて、スクランブルエッグにブロッコリー、チキン、鮭、納豆、そしてオレンジジュースを飲む。朝からこれぐらい食べないとすぐにお腹がすいてしまう。成長するのだから、今から沢山食べなくてはならない。ダイエットをする意味がわからない私は、食べたいものほしいものはバンバン惜しまずに食べる。人間いつ死ぬかわからないし、食べたいときに食べなくては・・・。
「行ってきますー!!」
元気よく、家の前の坂を下る。走り出すと止まらないぐらいいい天気で、青空が広がっている。半そでのシャツにやさしく風が当たる。せみの声も、人の声も、夏の音がすべて消えた感じがする。そして、ゆっくりと私は現実に引き戻されていく。
「おはよ、沙紀。」
「ん?あぁ、おはよ。なんで、今日はこんな早いのさ。いつも、遅刻ぎりぎりの癖に。」
「んー、ちょっといいことがあってね。」
「えっ?」
風がざわざわと揺れて、2人の世界になったみたいだ。
「え?じゃなくて、いやー。おめでたというか・・・昨日ね林君に明日の朝早く来て!って、いわれてーそしたら・・・告白されたの。で、OKしちゃった!だって、林君ってかっこいいじゃん。んでもってやさしいし、あとそれから・・・頭もい・・・。」
「ストーっぷ!!ちょっと待って。悠美が、林から・・・告白されたの??」
「そーう。」
「で、OKした・・?」
「そーう。」
「で、林と悠美は付き合う・・・?」
「そーう!」
おいてかれた・・・。二宮金次郎の像が倒れたみたいに重かった。
「ね!もーう、ほんと夢見たい〜〜!っキャー!!!早くさ、沙紀も作ればいいじゃん、剣道なんかに情熱注がないで。男の子に興味ないの?」
「あ・・・あるけど。でもっ、やっぱ剣道は好きでやってんジャンか。・・・おいてかれたー、悠美に置いてかれたー!ひどいよぉ・・・。」
親友、悠美に彼氏いない暦4年。私、彼氏いない暦永遠。
私は、うらやましかった。学校での青春といえば、恋と友情、情熱、部活。私は、ほかの3つはとてもいい思い出ができているのだが、恋にだけは見放されている。縁結びも、所詮気休め・・・か。
でも、私は絶対に好きな人を見つけてやる!剣道関係で、いざ出陣!!!!!