きゅう こここここここここ!
シャルドの裏側で主人公が考えていたことを書くのが、楽しくて楽しくて…!
この副題…何なんでしょうね…。
「…これを…お前が?」
Oh!見た目以上に『あれ』な作品に思わず、聞いちゃったよ。あまりの衝撃に声が震えていないといいなぁ…。
「は…い!あの、セレナさんに手伝っていただいて…」
まてまて!色々、ツッコミたいところがもりもり過ぎて、いったい何から言っていいのか分からないけど…。とりあえず、『乙女ゲーム転生』ものとしては、主人公が一度は口にする言葉を、私もここらで一度使っておこう!
(どうして、こうなった――?)
ん?なにか意味合いが違う気がしなくもないが、ここは気にしたらお終いだ!
(料理上手なセレナが手伝って、この作品!もはや、才能だね!確かに、「料理できない」じゃなくて「料理しないほうがいい」だわ!自分で言ってただけはある)
じっとお盆の上の食事を見る。真っ黒なスクランブルエッグ。
(もはや、これは卵ではない!エッグじゃない!炭だ!)
具が大きすぎて、なにやらちょっと赤いような気がしなくもないスープ。
(…シャルドくん…。その傷だらけの手の…。ボク、血は足りてるから献血はいらなかったカナ…)
そして、卵よりもさらに黒いこの物体。
(パン?パンなのか?石炭ではなく?何をしたらこんなことに?!)
今日の昼食は色合いがとっても斬新!!
(本日のお料理は…こほん!黒で!統一感を出しております)
こここここここここ…!!
(ニワトリか?!)
これを食べろと?!自分で言ったくせに、不安しかないこの料理!!
(「さ~て、どんなものができるかな~♪」とか言っていた朝の自分を殴りつけてやりたい!!)
なんだか、泣きたい気分になったが、覚悟を決める。
(だいじょうぶ!!元は、卵!!ダメでも飲み込むんだ!私!!)
若干震えている気がする手でフォークを取り出す。かちゃっと片手で器用に卵を切る。
(?なんだか感触が卵じゃない気が…いや!気のせいだ!)
ぶすっと指して、極力眼に入れないように、ぱくっと口へ。
お~い!お~い!
(…はっ!!今、川の向こうでお祖父ちゃんが手を振っていた気がする!!とりあえず、噛め!噛むんだ!!)
ごり!ばり!
…殻?!カラがっ!!
「…まず…」
人間、本当にまずいものを食べた時って、それしか出てきませんよね?あ!シャルドが落ち込んでいる!!なにか!なにかフォローしなきゃ!!
「…悪くはない」
「え…??」
呟くように言った私の言葉に俯いて拳を握りしめていたシャルドが顔を上げる。信じられない!何言ってんだ、こいつ!みたいな顔は止めて!そんなシャルドににっと笑ってやる。
「これなら悪くない。夕食も頼んだぞ」
シャルドはぽかんとした顔で私を見つめてくる。ぶっ!なにその阿保面!!くすっと笑いをこぼしながら、ぽかん顔をしたままのシャルドを置いて、さっさと扉を閉めた。
「うげぇ!!まっず!!無理!にがい!!」
(焦げたと言うか、炭化しているよね――!!)
一口はなんとか飲み込んだけど、口の中がじょりじょりしている。殻のせいでじょりじょりしていたのか、それとも炭のせいなのか、もはや分からない。
「本当に壊滅的だな~」
いつものようにボッとお盆に火を付けて燃やし尽くそうとして、思い直す。
「飴、飴~♪」
やっぱり飴と鞭の使い分けだよね~!食器の中の食べ物を近くの器に移して、そこに火を着ける。
「食べた様に見えるかな?」
いつもは食器を返さない私が、綺麗に食べた様に見える食器を返したら…?
(糖度100%だね!)
しかし…。
「かわいいな~。さすが、攻略対象キャラ!」
(ちょっと涙を我慢しているところとか…耳を垂らしているわんこにしか見えない!!)
「…たしか難易度は結構高かったよね~。一番高いのは第二王子だっけ?その次くらいには…」
ちなみに攻略をしようとしているわけじゃないけど、参考にはさせてもらっている。シャルドはかなり冷静なキャラという設定だった。勉強もスポーツもできるし、よく気が回る。今は、ただ熱いだけの少年だけど…。
そんな何でもできるシャルドの唯一の苦手分野。それが料理だ。
無理やり作らせておいて、何だと思うかもしれないが、ゲーム上で誰も食べないシャルドのキワモノ料理をヒロインだけは残さず食べる。あれは、中盤くらいのイベントだった気がする。そんな二番煎じも甚だしいことをしようとしている。
(いや、ヒロインと会うのはシャルドが15歳のときだから、二番ではないんだけど!!妙に恥ずかしいものがあるというか!!…むしろあれはゲームだから完食も可能だろうけど、現実世界で完食は無理!不可能!!もしできたら、ヒロインは相当の味覚音痴だ!逆に、かわいそうなモノを見るような眼で見られるでしょ!)
ちなみにシャルドはファーストのときに15歳、セカンドでは17歳で登場する。ファーストのリリーの時は二つ下の後輩として、セカンドのクラリアのときは一つ上の先輩として。
シャルドを攻略するポイントは、『否定しないこと』。これは、簡単なようで難しい。否定しないと言っても、全てに肯定し過ぎるのもダメ!媚びを売るのもダメ!なにか一つでも選択肢を間違えると、シャルドは最後になって「お前も元気で頑張れよ」とか言って去っていく。
さて、さっきの飴、少しは好感度が上がったかな~?
(…うん。言いたいことは分かる!私はオタクだった!いや、それに近いけど、腐○子ではなかった…!そして、自分が男になったからかもしれないけど、男に迫られるとか…チキン肌です!無理無理!!全力疾走で、それこそ光の速さで逃げ出したい!!)
じゃあ、なんで、こんなことしているのかって?
いろいろ考えた結果なんだよ。
あんまり突っ込んでくれないで…。精神的に壮絶な打撃を受けるから…。