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ろく ヘタレなんだよ!

「あなたが差し向けてくださった幾人かの暗殺者の、ほんのお返しだ」


 それを聞いた時の継母の顔は見ていて面白いくらい真っ青になった。


 (をいをい!ケンカ売ってるとしか思えないよ…)


 実際、フィアレインは別邸にいた時、何人もの刺客に命を狙われていた。普通に考えたら、継母の仕業だとしか思えないし、恐らく、幾人かはそうだったんだろうな。覚えがなければ、あんなに真っ青になる理由がないもんね。ちなみに!ちなみにだ!!フィアレインはまだ手を汚していない!義弟でさえ、本当に病死だ。


 (なんだ、その疑いの眼は??!本当だからね!!…半殺しは…ないとは言えないけど…。ほら、あれだよ。魔法とかで撃退しちゃうと加減ができなくてさ…。負った傷が原因で…死んだ人もいるかもだけど…。多分、直接的には、ない…と思う)


 継母は真っ青になった後は真っ赤になってキーキー怒鳴っていた。思えば、継母のせいでフィアレインはうるさく怒鳴る香水と化粧臭い女の人が嫌いになったんだよね。

 父上はそれを間近で見ていたが、フィアレインにも継母にも何も言わなかった。


 (ヘタレなんだよ、あの父親は…)

 

 ただ、フィアレインを別邸から本邸に呼び寄せ、継母を本邸の離れに住まわせた。何を考えてるのかは分かるけど、それはあまり賢い方法じゃない。まぁ、ヘタレな父上にそれ以上の策を求める方が間違っているか。


 それからだ。


 継母は息子の仇を討とうと躍起になっている。つまり、ここに来たぶん、隠しもせずに命を狙ってくるようになりましたよ。フィアレインに助けを求めるような人間がいないと思っているからこその行動。私と継母を見張ろうと思っていたんだろう父上に気付かせないように策を練ってくるが、やり方がバカすぎる…。確かに『普通の子ども』の命なら、容易く獲れただろうが、相手は子どもとはいえ『フィアレイン』だ。普通のやり方で仕留められるわけがない。ここ最近では、また策に窮してきたのか、使い古した方法を取り始めた。


 (あぁ!!なんだか、ちょっとつまらないとか、私ならこうするとか、考えないで―――――!それは、やったら、あかんやつや!!恐ろしいコ!!)


 私は首からかけていた白い石を手で握る。


(これを握っていると、フィアレインは狂気を抑えてくれる…)


 フィアレインの記憶の中には、淡い真珠のような髪、空のように青い瞳のふわりと笑う女性の姿がある。『真珠姫』と呼ばれた癒しの女神。教会に隠された秘蔵の乙女。それが、フィアレインの母親だ。


 …フィアレインが一番大切にしている彼女の記憶は…とても優しい…。頭を撫でてくれて優しく笑う彼女は、本当にフィアレインを愛していたんだろう。胸が痛くなる。彼女さえいれば…フィアレインは、『ああ』ならないのではないだろうか。殺人に手を染めることも、死体に興味を持つことも…。


 (…って、そりゃ、あの母上がいたら、あの継母は毒にしか見えないよね?!ふんわり系すっぴん母に対して、我がまま系濃メイク継母!いやいや!フィアレイン!女性の理想を高く掲げすぎなのでは…?…まぁ、10歳の子どもだし?仕方ないか…) 



 表面上は大人しく見えているだろう現在の状況は、きっかけがあれば、簡単に動くだろう。だけど、それまでは、水面上ではなにも起こっていない。例え、どんなに水面下で蹴りあっていても…。


 そんな静かな状況に、空気の読めない父上は、私に従者を付けることにしたようだ。


 (私の中では、監視の意味しかないと思っている。現に、がっつりシャルドは『飼いならされ』つつあるからね!メイド長のセレナとか執事のリレイとかにね。たぶん、明日あたり、シャルドは『劇場』に招待されるんじゃないかな~)


 くすっと笑みが零れる。どんな小芝居をかましてくれるのか…直接見たいけど、無理だろうな~。恐らく、これは一石になるだろう。


 シャルドの前に来た従者たちは、『劇場』に招待される前に、フィアレインの異常性に数日で逃げ帰っていった。だから、石にはならなかったが…。

 正直、従者たちの名前も憶えていない。覚える気がなかったせいだろうな。


 まぁ、実際、媚びたり泣いたり逃げたりする従者なんかどうでもいい。


 きっと、シャルドはこの状況を動かす石になる。そう確信している。




 部屋の隅にあるビンを見つめる。見つめることが出来るようになったことに、流されているとは思うけど…。


 (怖いものは怖い…やっぱり、あれは処分!)


 あんなものがあるから、異常と思われるんだ!


 ソファに横になり、ローブを身体にかけて、丸まる。


 直に夜が明ける。予測通りなら、恐らく、シャルドが怒鳴り込んでくるだろう。


 眼を瞑るが、眠くはなかった。うつうつと眠りに入ったのは、すでに夜が明けかけたころだった。


 

 夢うつつに『母親』の夢を見た気がしたが…それが、『私』の記憶なのか『フィアレイン』の記憶なのか分からなかった。



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