魔武具士と魔道具士
魔武具士と魔道具士。魔武具士は武器や防具を作り出すもの。魔道具士は魔道具を作り出すもの。
魔武具とは、単純に言えば魔石が付いている武器や防具のことである。この世界に存在している魔法と呼ばれる力は、魔力によって『自然』の力を増幅させることしかできない。つまり、魔法の『モト』となるものがなければ、どんなに魔力を注ぎ込もうとも、それが大きくなることはない。
例えば、小さな火種に魔力を注ぎ、大きな炎にすることは可能だ。だが、何もないところで、炎を出すことは不可能だ。
この場合、『モト』とは火種のこと。
同様に、水がなければ、土がなければ、風がなければ、どんなに魔力を注ぎ込もうとも、『魔法』に変化させることは、できない。
では、魔法の属性を纏える魔武具はどうなのだろうか。
通常の理では、『モト』がなければ『魔法』を纏うことは不可能だ。しかし、それを可能にしているのが、『魔石』とよばれる魔法の『モト』が入れてある石である。
もちろん、ただの石のわけがない。自然界にどういうわけか生まれた、魔力を帯びた石。
それは、例えば、火の中に入れることで、水の中に置くことで、土に埋めることで、風にさらすことで、『モト』をその内に宿すことができるのだ。
そう、通常であれば、その武器は『魔法』を纏うことしかできないはず…。
だが、そんな常識を無視するのが…『フィル・ドーナ』の武器だ。
そして、『フィル・ドーナ』は魔武具士の中では、極めて珍しい「防具を作らず、武器しか作らない」職人でもある。
一方の、魔道具とは、生活全般に便利な『魔法』を宿した道具のことを言う。
例えるなら、この世界の水道、ライト、お風呂などは、大昔、魔道具士が発明したと言われている。近年で言うなら、数年前に発明されたトイレやコンロは、間違いなく大発明だと言われるほどのものだ。
そして、そんな大発明だけでなく次々と新たな魔道具を発表しているのが『フィル・ガード』という人物だ。
『フィル・ドーナ』と『フィル・ガード』。
名前の似た彼らが、同じ人物、もしくは近しい人物と考える人間は少なくない。
彼らはどちらもどんな人物か、年齢も、本名も、性別さえも謎に包まれた人物だ。そんな彼らの正体を探ろうとする者は、とても不幸な眼にあうとさえ言われている。
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「…あんたか」
「いや、そろそろ来ると思っていた。久しぶりだ。あんたから解雇されて以来か」
「楽しそうに見えるか?そうだろうな。あんたほどの人間が、行動を読まれるとは、あいつの化け物具合に笑いが起こる」
「何のことか?まぁ、今はその話はいいだろう?本題に入ってくれ。」
「『フィル・ドーナ』の正体?聞いてどうする?」
「聞かないほうがいいとは思う。ん?俺ではないかって?」
「俺は昔、あんたから「魔武具士としては欠けた人間」とまで言われたんだ。
俺はもう魔武具を作ることは止めた。今はこの武器屋をするのに精いっぱいだ。
あんたのところから、「売れない武具」と言われた物を買い取って、欲しいヤツに売るだけだな」
「そうそう、フィルの奴は最初、あんたの所の『裏』に武具を持って行ったらしいぞ。だが、店のヤツに使いが子どもだと鼻で笑われたと言っていた。残念だったな。儲けそこなったのは、あんたの所に見る目のない奴がいたせいだな」
「今日はえらく、饒舌だって?悪いな。ちょっと、俺は今日おかしいかもしれないな」
「ふ…。俺は、確かにあんたから「魔武具士としては欠けた人間」と言われたけどな。その理由なんか分からなかった」
「…俺は、甘かったんだ。『あいつ』と会ってから、俺は自分の甘さを知った」
「なぁ、アブヒラドールの旦那。あんたはフィルの武器がどうしてあんなに強力…いや、凶悪なのか知っているか?」
「…俺は知っている」
「だからこそ、恐ろしい。あいつの武器を…世に出すべきじゃなかった」
「あれは…確実に人間を「殺すためだけ」に作られた武器だ」
「俺は、武器は人を守ることもできると思っていた。だが、違う」
「武器はどこまで行っても『武器』でしかない。人を守る?人を救う?」
「そんな、きれいごと…あるわけがない!どんなに取り繕っても、どんなに言い方を変えても」
「武器は武器だ。人を殺すための、それだけのための道具だ」
「そして、あいつの武器は、人間を苦しめて殺すためだけに作られた、悪魔の武器だ」
「あぁ、悪いな。こんな愚痴を…」
「だが、知っていた方がいい。あんな武器を作るぐらいだ。あんたは昔、「魔武具は職人を写す鏡」だって言ってたよな?なら、あいつは?あいつの『鏡』を見て、あんたはどう思う?」
「そうだ。…あいつは狂っている。ただただ、人を殺すことを特化した武器を作り、それを楽しそうに笑う。狂っているんだ」
「それでも、会いに行くか?なら止めない」
「不思議か?まぁ、そうだろうな」
「アブヒラドールの旦那。『フィル・ドーナ』から伝言だ」
「『一時間後、教会で』。あんたの行動は、時間単位であいつに読まれているぞ」




