に せいかいです!
亀更新って言ったんですが…ちょっとだけストックがあるので、しばらくは更新できるかも?
フィアレイン・レグド・ガーナード。
そもそも、『フィアレイン』って女性名じゃないのか?!と思ったそこのあなた!!
正解です!!
『フィアレイン』は割と女性の名前だと思う。
前世では、裏の事情は分からなかったし、彼自身の人生はファンブックにも出ていないので、不明だったけど…。自分の人生だから、事情は薄ぼんやりとは分かる。分かるが、ここでは割愛!あんまり楽しい話でもないので!
と言うか!
フィアレインは最大の敵のくせに、本編はおろか、ファンブックにも外見も経歴も載っていない。顔も年齢も背格好も何もだ!時々、顔付近に影を付けて後姿がちらっと出たり、顔に濃すぎる影を付けての登場しかない。謎すぎるキャラ。ファンの間では、「本当はそんな奴いない説」と「本当はキャラデザインができていない説」と「本当はすでに出ている誰か説」があった…。
ファンは、ゴキブリより嫌い!と言う人と、クールでかっこいい!と言う人に分かれてた。私は別に嫌いではなかったけど、好きでもない。そもそもあんまり出てこない男に、好きも嫌いもないし!!
そう言えば、名前も、最後に犯人役として捕まった男が、「犯人はあいつ…フィアレイン・レグド・ガーナードだ!」とか叫んでいたから、判明しただけだ。その名前さえも、フェイクのような気がしたけど。
(実際は、本名…)
ただ単に、遊びの延長のような気分で本名名乗るとか…。絶対につかまらない自信?なんて、嫌なヤツだ!!最低だね!!
しかも、闇で暗躍して、気付かれそうになったら、用意していた駒を切り捨てるような鬼畜なヤツだ。もはや、人間ではない、「悪魔」と呼ぶべきだ!!
「……」
(…はいっ!今の私でした――!すいません!「悪魔」とか呼ばないで!!)
さっきまで、真っ黒にくすんでいた鏡を磨き上げて、そこに映る顔を見る。
黒い髪、右が燃えるように紅い瞳、左が清んだ空色の瞳。青白い幼い少年の顔は、とても綺麗だが、どこか冷たさを感じる。
ファンブックでも公開されなかったその容姿…。
(こんな顔してるんだ~…。オッドアイ、かっこい――!!コスプレみたい!!)
さすが乙女ゲーム!!敵役と言えども、きらきらオーラが半端ない!!
にっとほほ笑んでみるが…暗い。あまり明るくない部屋だからか?表情が暗すぎる!
(何か企んでいるようにしか見えないのは何故だ?!そういうキャラだと思い込んでいるからだろう!うん、きっとそう!!)
にぱっと笑ってみる…。…怖い!怖すぎる!!つり目のせいか?!作ってる感が半端ない。いや…作ってるけど…。
(自然の笑顔はきっと違う!そうに決まっている!!…綺麗な顔なのに、とほほだよ)
私は、セカンドまで出たあのゲームをやり込んだわけだが、主人公はファーストとセカンドで違う少女だった。
ファーストは、庶民で魔力が飛びぬけている少女リリー。
セカンドは、没落貴族のほどほどな魔力の天然少女クラリア。
サードは、噂が出るだけ出て、立ち消えたって聞いたな~。その中でもフィアレインは謎すぎるキャラだった。一部のファンからは隠れ攻略キャラなのでは?と言われていたけど、結局セカンドでも謎のままで終わった…。
攻略対象は被っている人も数人いる。そんなゲーム、2作の共通の敵。
裏ボス的真犯人。快楽殺人者であり、死体愛好家…。
今の私は、本当にそんな人間なのだろうか?
あの、部屋に積み上げられているビンを見ることもできないのに?
だけど、ビンに視線をやろうとすると、心の中にじんわりと愉悦に近いものが染み出てくる。
(いやいや!喜ぶな―――――!!)
とんだマッド野郎だな!!10歳(推定)にして恐ろしい!そもそも、あんなものを好きで眺めるためだけに収集している時点で割と跳んでいるよね!?
頭を振って、考えを隅に追いやる。
深呼吸をしようとして、思いとどまる。
(こんな空気を吸い込むのはいやだ!!)
はぁ!仕方ない…。
意を決して!
足の踏み場を見つけられなかったが、本を退かすと大量の虫が這い出てきそうで、仕方なく本を踏んで歩いていく。
足元は絶対に見ない!見ないったら、見ない!!
何かを踏んづけてしまったのを直視したら…トラウマができそうだ!
(…と言うか…だから!喜ぶな―――!!嬉々として下を見ようとするな――!!ワザと踏みつぶそうとするな―――!!…なんて恐ろしいコ!!半分以上は私の性格が占めているのに、どうしてそう言うところを残してるの――!)
ようやく、心の中の葛藤を抑え、本で半分埋まりかけているドアを開こうとノブに手をかける。
がきん!!
(まさかの内開きとはね――!!)
そう言えば、そうだったかも…と思い直す。
…なんで、本で埋めてんだ?何を考えてたっけ?
…だめだ!フィアレインは興味のないことはとことん記憶に残さない性質らしい。何を考えていたのか、全く理解に及ばない。
仕方なく、どさどさと本をドアの横に落として、ドアを無理やり開ける。全部は開かない。1人が通れる程度の隙間からするりと部屋を出る。
外の爽やかな空気。今は何時?
石の廊下を歩く。ところどころにランプが光っている、
(この廊下を歩くのはどれくらいぶりだっけ?)
はっきり言おう!このドアから外に出たのが久しぶり過ぎる。
薄暗く、ランプなしには歩け無いような狭く長い廊下。
羽織っていた黒いローブを翻しながら歩いていくと廊下の先に階段が見える。ちなみに、服装は黒い七分のパンツ、ぶかぶかのグレイのロンT、茶色の編み上げショートブーツ。
(貴族のくせに!割と高い身分の貴族のくせに!なんだ、この質素過ぎる服装…しかも、汚れが半端ない!きったねぇ…!!)
こほん!女子、女子!!…あ、今男だった…。
ため息をついて、長そうな階段の先を見上げて、昇り始める。
(半分引きこもりのくせに体力はあるんだよね~。息も切れないのは助かるけど)
お!階段の先に光が見えてきた!今は夜ではないみたい。
階段の先は…
(廊下…)
今度は石のではない。天井も高く、幅も広い。白い柱、壁も白い。薄暗くもなく、自然の光が差し込んでいる。廊下のあちこちに大きな花瓶に花が活けてある。
(興味がなかったせい?今まで見てきた廊下はこんな風ではなかった。お城みた~い!)
左を見ると、廊下は対面側の壁が少し行ったところで切れている。代わりに手すりがある。
(中庭…だったかな)
そちらに向かおうとした。
「…フィアレイン様…?」
後ろから急に声をかけられ、振り向く。
そこにいたのは…。