頼まれまして
グランリーくんに呼び出されて連れてこられたのは誰もいない生徒会室だった。
一体これから何が起きるんだろうねー。
それにしても、君まだ中学生でしょ。なのに、人の目が多い食堂で、女の子を抱き寄せるってちょっとどうなの。よくよく考えてみればそれ、凄い度胸だねとか言う前にマセすぎじゃない?
俺の中での中学生のお付き合いってさ、下校中にお互いちょっと距離をあけつつ並んで歩いて、手を繋ぎだいんだけど恥ずかしくて繋げないみたいな。でもやっぱり繋ぎたくて頑張るんだけど、指がかすっただけで二人ともあたふたして、結局手は繋げずに、顔赤くしたまま帰って行くというもので。
古いのかな、俺の考えって。前世で読んだ少女漫画に影響されすぎたのかな。
今じゃ腰に手を回しながら抱き寄せるのが普通なのか?それともここが異世界だからか?何にしても、若いってすごい。フレッシュだ。
そんなことを無表情ながらに考えて、現実逃避をしていたら。
「君の噂は耳にしている。何でも、素晴らしいオルゴールを作るそうじゃないか」
グランリーくんから思わぬ言葉をいただいた。
俺が作ったオルゴールって、あの遠吠え事件で作ったやつだよな。あれ以外作ってないから、考えられるとしたらそれしかないんだけど。
しかも噂って。
王族にも絶賛されたからそれなりに有名になってるかもとかは思ったけど。思ってたけど。
「オルゴールは、作れます」
だって職人目指してるんだもん。天職なんだもん。
俺の答えに、グランリーくんは真剣な顔になって、まっすぐにこっちを見てくる。おお、俺より背がたけえ。
「とある女の子に、オルゴールをプレゼントしたいと思うんだ。君の力を貸してくれないか?」
その相手はリアちゃんだな。でも驚いた。そんなことを言われるなんて。
いやオルゴールを話題にされた時点で何となく予感はしてたけど。
「いきなりこんなことを言われて不愉快「いいですよ」・・・・え?」
ポカンとするグランリーくんに、思わず笑ってしまった。
生徒会長だからきっと俺様な性格なんだろうな、とか思ってたけど、俺の勘違いだった。
年下の俺に、強引なことをせず、きちんと一人の人間としてお願いしてきたんだ。
礼儀正しい子じゃないか!公爵家の躾の賜物か。
食堂ではあんなことしてたけど、なんだかんだで恋に一所懸命なんだね。リアちゃんに一途なグランリーくん。これぞ青春だね!
ありがとうと嬉しそうに笑うグランリーくん。
でた、王子様スマイル。
俺も将来のお得意様を増やすチャンスだ。
今のうちからじわりじわりと、人脈を広げていくのも悪くない。
ヒエがじと目で睨んでくるが、こればかりは仕方ない。