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結局はこうなるのさ

自分でもびっくりするくらいの、のんびりペース。

沢山のアクセス、ありがとうございます。






前世の「あたし」は、どこにでもいるようなフツーの女の子だった。

それなりに人生の苦難を乗り越えて、ありきたりな幸せを噛みしめて生きてた、本当にフツーな社会人だった。

それが一転、「俺」になってからは有り得ないことがフツーみたいな感覚に毒されてちょっと変な人になった。涙なんて流さないぜ。俺男の子だもん。



蓄音機から流れる曲をあろうことか一発聞いただけで覚えちまった俺の記憶力の凄さ。笑えない。

手の平に魔力を集めて、それを小さな箱に流し込む。同時に頭の中で音楽スタート。


そうして、人生初の自分で作ったオルゴールをしげしげと眺める。そこらにあったお菓子の空箱を使ったから見た目は残念だけど中身は一級品だ。自分で言うのもなんたが俺天才。狂いなく流れるメロディーに頬がにやつく。勢いで作っちまったのに本当に出来るとは。

何度でも言おう。

俺天才。

しつこいようだがもう一度。

俺天さ・・・

「なぁにニタニタしてやがんだてめえ」

「どうわっ」

床に胡座をかく体勢で座ってた俺の背中に、どしり、重い衝撃。

ヒエが、のしかかってきやがった。

「おいこら、どけ!」

潰れる、押し花みてーに潰れる。俺天才なんて繰り返し自画自賛してる場合じゃねえ。循環器が捩れる、内臓が壊れる。

「・・・・」

「ヒエ?」

呼び掛けても反応がない。

拗ねてんのか、拗ねてんのかこいつ。俺が怒鳴りつけたから拗ねてんのか。いやそんなまさか。

「・・どけはねえだろーが、クソッタレ」

まさかだった。

シュンとしながら離れるヒエに気が遠くなる。

もうちと心にゆとりを持とうぜ。

「ごめん、つい。ヒエは何も悪くないから」

ちゃんと謝る俺偉い。

「・・それ、ムトが作ったのか」

ヒエが顎で示すのは、俺の手の上にある小さなオルゴール。

「まあな」

「流石俺のムト」

「どんな誉め方だそれ」

確かにお前のだけれども。

そう言ったらヒエが嬉しそうに笑った。普段の鋭い眼光が嘘みたいにふわりと緩む。

かぁわいいんですけどこの人、じゃなくて狼。

無意識にほっぺが上がる。ぎゅーってしてやろうかコノヤロー。

「俺のじゃねえムトなんざムトじゃねえ。死んでからもお前は、俺だけのもんだ」

下がった。ほっぺ下がった。ストンて下がった。こえーよ、目がマジだよこえーよ。ちょいちょいヤンデレださなくていいからもういいから分かったからこれ以上悪化しないで胃が痛くなる!

「で、それどうすんだ。売るのか?」

「え、これ売れるの?見た目菓子箱だぜ?」

「中身が良けりゃあ売れるだろうよ。今度街に行ってみるか」

「いくいくー」


とか呑気に言ってた俺のアホたれ。

オルゴールは売れた。結構な値段で売れた。でもそんな嬉しさに浸かる暇もなく。

俺の作ったオルゴールの完成度が神のレベルだと広まって、貴族に目を付けられて、挙げ句の果てには王族にまで知れ渡ってしまった。やった有名人じゃんワハハーとか言うとでも思ってんのか馬鹿じゃねえの。

俺の平穏、帰ってこーい。




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