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1話 日常と非日常の境界線

H県右内市

人口およそ50万人の俗に地方都市と呼ばれるこの街にはある秘密があった


第1話 妖怪の街



ここは右内市の治安の象徴、右内警察署


俺はそこの刑事課のデスクにいた

成績が特にいいわけでもない俺にオヤジがここを勧められたときは驚いたが意外とあっさり入ることができた。

ただそこでの日常は入る前の俺には予想できないようなものだった。


まずやらされる仕事の9割は雑用。

刑事ドラマであるような張り込みとか聞き込みなんて入ってから一度もやったことがない。


しかし雑用をさせられることに不満があるかと聞かれれば多分NOと言うだろう。

なぜなら残りの1割の仕事、こっちのほうが俺にとっては大きな意味を持っている、


「ほら霧氷、仕事だ」


たった今上司が言った仕事こそがその1割だ。

上司から渡された一枚の書類にはこう書かれていた。


『今回の事件の犯人は妖怪・牛鬼と断定 手段を選ばず確保せよ』


妖怪…

その存在は空想上のものではない

かつては駆逐されたとも言われていたが奴らがそう簡単にいなくなるわけはなかった

この街には妖怪がいる。

限られた一部の人間以外には存在しあるものは人になりすましまたあるものは人間から存在を隠すようにひっそりと生きていた。


そして俺はそんな妖怪の引き起こす事件をたったひとりで処理するという立場になっていた。

捜査ではなくあくまでも処理である。

つまり犯人の裏付けまでは上司がやり確保は俺の仕事というわけ。

最も妖怪相手じゃ一筋縄で行くわけはないが…


「そんじゃ、今日は上がらせてもらうわ」


「おう、頑張れよ」


妖怪の確保…特に反撃するような危険な奴の確保は深夜に行わないといけない。

これは暗黙のルールだった。

そのため深夜に仕事があるときは早めに上がり英気を蓄える。

これが俺の基本的な日常だった。


特にやりたいこともないのでまっすぐ家に帰る。

俺の家は築数十年ぐらいのアパート。

風呂・トイレ付きで一昔前のまままるで時間が止まったようなアパートだ。

警察官としての俺の給料ならもう少しランクの高いところにも住めるが俺としては小奇麗なところよりもこれぐらいの方が肌に合う。


自分の部屋のドアの前に立ちそのままドアノブを回す。


ガチャリと音を立ててドアが開いた。


別に俺は鍵をかけ忘れるようなうっかり屋ではないが鍵が空いていることに関しては特に驚かない。


そして

「ただいま」

と言ってみる。


「お帰りなさい!」


中から元気な返事が返ってきた。

靴を脱いで居間に入ると高校生の少女がちょこんと正座していた。

立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花ということわざがあるが少女はそれを体現しているように美しかった。


「お疲れさま! お茶でも入れましょうか?」


「ああ、頼むよ琥珀」


念の為に行っておくがここは俺の家である。

じゃあったった今お茶を入れるために台所に入っていった琥珀という名の少女が誰なのかとのかを一言であらわすのは簡単である。


琥珀は俺の妹だ。


以前俺は家族と一緒に住んでいた。

しかし数ヶ月前にふと思い立ち家を出て独立することにした。

その時両親はすぐに了承したが琥珀はそうはいかなかった。

家を出ることを真剣に決意したと話すだけでショックで何日か部屋に閉じこもり(このせいで俺の独立は数日先延ばしになった)その後説得に数時間かかり結局琥珀には合鍵を渡しておくということで折れてくれた。


ここまで書けばたいていの人はわかると思うだろう。

琥珀は俺のことが大好きだ、俗に言うブラコンである。


これは琥珀の通う県立右内高校でも有名な話らしく琥珀と同じ高校に通う弟のいる同僚に聞いた話によると高校でも常に俺の事をのろけっぱなしらしい。

さらに好みのタイプをはっきりと『兄様』と言い切ってしまったらしく「一体あの琥珀ちゃんをここまでゾッコンにさせる兄とはどういう超人なのか・・・」と妙な噂になっている。

それと言い忘れたが琥珀はその可憐な容姿とその性格からか人気者で告白された回数は数え切れないほどだそうだ。

その全てを一瞬でふっていることと隠すつもりのないブラコンさからか「あいつマジで兄と結婚する気なんじゃ・・・」という噂もある。


流石にそれはないと思うが俺に対して何らかの特別な感情を抱いているのはほぼ間違いない

まあ、嫌われるよりは好かれる方がいいので別にどうのこうの言うつもりはないが。


「ところで兄様、早く帰ってきたということは今日は・・・?」


淹れてきたお茶をちゃぶ台に置きながら琥珀は何かを期待するかのように目を輝かせていた。


「ああ。 ・・・手伝うか?」


「もちろんです! 兄様のお役に立てるというのなら火の中、水の中ですよ!」


「そりゃ頼もしいな・・・」


いつの間にかものすごくたくましくなってやがる。

事実琥珀は大体1年ぐらい前にはほぼ完璧に彼女自身の能力をほぼ制御できるようになっていた。

琥珀の力は『電気』

五行で言うなら木気の能力になる。

しかしこうも守ろうと思っていたものが強くたくましくなるのは複雑なものだ。

しかも今じゃ5年前の孤独だった時の影も形もない人気者だし・・・

俺の存在意義って何?


俺は興奮気味の琥珀を眺めながら琥珀に気づかれないようにこっそりとため息をついたのだった

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