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プロローグ 5年前の話をしよう

自分は普通とは違う人生を歩まないといけないということ。それが俺には理解できなかった。

やがて理解できるようになるとまずは両親を恨んだ。


なぜ普通に生んでくれなかったんだ

なぜ今からでも普通の生き方を許してくれないんだ

なぜ… なぜ…


気が済むまで恨んだらオヤジは言った


「…満足か?」


少しも詫びる気はないらしい。

だから俺はオヤジが嫌いだ。

助けてくれるわけでもなく見下すような目で見られた気がしたから。

それから反抗したところでなんの意味もないことを理解するのにそう時間はかからなかった。

やがて俺はひとつの結論に達することになる

それはこれからの人生をも動かす重要な決断になるとも知らずに…


プロローグ「5年前」



人気のない真夜中の河川敷に俺とオヤジは来ていた。

もしここにほかの人間がいれば俺とオヤジを取り巻く空気の異様さに気づくだろう。

それを一言で言うなら殺気。

俺は実の親に本気で殺気を向けていた。

それでも悠然と構えるオヤジを見てさらに殺気が沸く

その殺気に身を任せオヤジとの間合いを詰め腹部を全力で殴ろうとするが軽く片手で受け止められる。


そしてその手を華奢な外見からは予想もできないほどの力で締め上げる。

俺は思わず苦痛に顔を歪める。

やがて締め上げた手を離しながらオヤジは言った。


「それじゃあいつまでたっても私を殺せないぞ。お前のもつ能力、それを使って私を殺す気で来い」


能力…


確かに俺には特殊な能力がある。


俺の先祖の一人にとある陰陽師がいた。

その陰陽師は強大な妖力をもち様々な術を使い事件を解決していったらしい。

ここまでならよくあるおとぎ話になるだろう。

だがそうなることは神様が許さなかったらしい。

なんと突然オヤジの代でその能力が発現した。

そしてその能力はオヤジの血を引く子供にも引き継がれてしまう。

こうして今に至るというわけだ。


確かにこの特訓の目的は俺の能力を発現させ自由に使えるようにすること。

しかし未だに一度も成功してないこの特訓に俺は少しだけヤケになっていた。


「そうは言うけどよ感覚がまるで掴めねぇんだ。自分の中に力があるってのも正直実感が湧かねえ」


「はじめはそんなもんだ。とにかく信じてみろ! 自分の中に力があるということを強く意識するんだ。一度できればあとは簡単だから…」


そう言われて俺は意識を集中する


…なにか見えそうな気がする、だけど届かない


後一歩、後一歩…


この感覚がとてつもなくムズ痒い


強くなりたいという思いは足りているはず、それなのに…


まだ気持ちが足りないってやつなのか?


心のどこかで不安になりかけたときオヤジがゆっくりとしゃべりだした。


「…ところでさ,なぜお前は強くなろうと思ったんだ?」


「…理由なんてどうでもいいだろ」


「いや、私にも大方予想はつく。 …お前の妹のためだろう?」


「……!」


「お前と同じで素質はあるが制御ができず度々暴走する,それゆえ孤独なお前の妹の琥珀 …それを守りたいんだろ?」


「……」


図星だった。


俺の妹の琥珀は12歳の小学6年生。


明るくて俺によくなつくいい妹だがひとつ気になることがあった。

あいつは孤独だった。


オヤジ曰く琥珀には既に能力が目に見えてわかるほどの素質があった。

だが、残酷なことにその力を制御できないゆえ浮いた存在になった琥珀は徐々に孤立していった。

オヤジも素質はあるといっていたがそれを制御するための訓練をするには琥珀はまだ幼すぎるらしい。


それを聞いたときに思った。

コイツは俺が守ると。

そしてコイツよりも先に強くならないといけないと…


あいつは俺といるときは常に心の底からの笑顔を見せてくれる。

その笑顔も曇っている時があるのだろうか。

あいつは無理しているのだろうか。

そうだとしたら二度とそんなことはさせたくない。


だから力が


力が欲しい…


誰かを守るということが恥ずかしくないように何よりも強い力が…!


俺にはその権利がある、その権利を使ってあいつを守るんだ!


カチンッ



自分の心の中で何かが引っかかった。

モヤモヤしたものがなくなりなぜか気分がいい。

今ならなんとかなる、そんな気がする。


オヤジはずっと自然体だ。

だったらこのままオヤジに一泡吹かせてやりたい。

そう考えるといやでもやる気が出る。


「俺は・・・ 俺は、強くなるんだ!!!」


そこから先のことは何も覚えていない。



父は我が子に願う

強くなれと

父の背を追い力を得て、守りたいものを守れるようになれ。

気絶している我が子を背負いながら父・伊部英二郎は思った

そして我が子の成長を心から喜ぶ。

今はまだ未熟だがこの力はやがて望むような力になるだろう。

ふとポケットの中から何かを取り出して月明かりにかざす。

それはとても小さくとても透き通った塊だった。

そして冷たさをも兼ね備えたそれが何かを理解するのは実に容易だった


「五行の中の一つ『水気』を宿し『氷』を操る

その名に恥じない力だな、霧氷」


そして溶けることのない氷をポケットに戻して英二郎は家路を急いだのだった。

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