人見知りチェリーと桃に恋する乙女
Episode.5 「空気みたいなチェリー」
空気みたいな人になりたい。
そう思っていた私・春風 チエリ。
そんな私を変えたのが君ー卯月 瀬里ーだ。
同学年、同じクラスの卯月。
入学してから2年も経つが、人気者は人気者のまま。
私のように友達をつくろうとしない人とは180度違う。
「チエリさーん!このプリント、卯月君に届けてくれないかな?」
去年の春、丁度高校2年生になったばかりのころ。
同じクラスの葉山さんに頼まれて、卯月の家までプリントを届けに行った。
家は知らなかったが、案外近い。
「卯月 瀬里君に用があってきた春風と申します。」
私はどーんと聳え立つ大きくて白い家。
大きい。
きれいという言葉が最初に出てくるようなところだ。
「あ、春風・・・。」
出てきたのは具合悪そうな卯月。
「ごめん。俺、料理できないんだわ。作ってくれない?」
そういわれ、家の中にはいる。
お邪魔しますといってみたが、私の声が響くだけ。
家には卯月以外誰もいない。
「できたぞ。」
お粥をつくって差し出すと、お前って料理、できるんだな。
そういった言葉が返された。
「おいしいか?」
「うん。」
「よかった・・・。」
私がほっとして気を緩めた。
その顔を見て、急に顔を赤くする卯月。
「あの、さ。俺の空気になってほしいんだわ。」
どういうことか。
私が尋ねると彼はこういった。
空気ってさ生きていくために必要なものじゃん。
だから、お前が俺の生きていくために必要な人になってほしいなって思って。
顔を真っ赤にしながらいう。
「それは、告白と受け取っていいのか?」
私が聞く。
「う、うん。」
少し照れながら卯月がいう。
そうして、真っ赤なチェリーのように赤くなった2人ができたわけだ。
Episode.6 「夕焼けプロポーズ」
「私、詩桃と結婚したい!」
幼き頃の私・夏風 真子は幼馴染ー夏野宮 詩桃ーと結婚する宣言を毎日していた。
詩桃は私より5つも年上でもちろん、途中からかなわぬ恋だとわかり始めた。
現在、高校3年生の私と23歳・現役社会人の詩桃とは手も届かない人だと思った。
詩桃は私が14才のときに大学にいくからといって1人暮らしをはじめている。
それから会うこともぱったりなくなって、段々詩桃への想いも薄れていく一方。
そんなある日、詩桃が高校に年に3回だけある地域の清掃ボランティア活動で訪れた。
詩桃の勤めている会社の社長がうちの高校の理事長と仲が良いというだけの話。
それだけなのに久しぶりに会う詩桃とは顔もあわせられなかった。
「真子?」
私が必死で避けようとしていた詩桃。
恥ずかしいから?
それとも詩桃のことが嫌いなの?
色々な気持ちが交じり合っていたときに再開した詩桃は昔より、さらにイケメンになっていた。
「詩桃・・・。」
びびりながら話す。
「真子、大っきくなったなー。」
たてが?
それとも横が?
いろんなことを思うと余計に傷つく私のガラスのハート。
「か、彼女は?」
当然、23歳ならいるだろうと思って聞いてみた。
「いないよ。そんな人。」
予想外の答えにびっくりした私。
「何で?」
思わず聞き返してしまった。
「何でって、俺の嫁はお前だろ。」
あっさりいわれた言葉。
「これ本気のプロポーズな。」
少々、赤く見えた顔。
「女の子はこういうこと、大人になっても覚えてるんだからね!!」
去って行く詩桃を見て、慌てて叫ぶ私。
それを見て、さっきの人誰?
超かっこよかったんだけど!
と近寄ってくるクラスメイト。
私の恋はマンゴーのような夕焼けを背景に恋人がするキスを飛び越え結婚から始まる。