甘栗と熟した林檎
Episode.3 「弾ける栗」
秋は食欲の秋、読書の秋。
そして、私・秋野 栗子、高校2年生
運動部並みに動く私は色々な部から勧誘がある。
嬉しいが、私は放課後、毎日行く場所がある。
そこは6:30からとくにお客さんが増える。
それよりも先に、もっとあの人ー槇 柚汰ーのもとにいたい。
「柚さーん!今日も一口デザートくださーい!!」
小さなカフェ「autumn」。
その季節限定の一口デザートが有名。
特に秋には力を入れているらしく、沢山種類がある。
「今日も来たの、栗ちゃん。」
店長の秋田 悠里さんは優しいお姉さん。
秋生まれの35才。
「どうぞ。俺特製のハーブティー。」
柚さんは静かにお茶を置いて行く。
かっけー!!
「栗ちゃん。本当に柚汰のことが好きねー。」
去って行く柚さんを眺めていた私に店長はいう。
かっこいいですもん。
と私。
否定はしないんだ。と半笑いで店長はいった。
「あ、そうそう。栗ちゃんのおかげでここも大分有名になったのよー。ありがとうね。」
店長は投げキッスをして奥へ入って行った。
私がほしいのは店長の投げキッスじゃないの!
柚さんの投げキッスなの!!
段々とお客さんが増えだした午後6:25。
今日はここら辺でお暇しよーっと。
私は席を立つ。
後ろに水を持った柚さんがいるのにも気づかずに。
ドン!ガチャーン!!バシャ
柚さんにぶつかり、柚さんが持っていた水が床へガラスのように飛び散る。
柚さんに害はなく、お客さんにも害はない。
私は飛び散る水を全身に浴び、雨の日かというようにびしょ濡れ。
「あっ!すみません。」
私は慌てて柚さんに頭を下げる。
「あ、あの、皆さんも大丈夫でしたか、水、飛びませんでしたか?き、気にしないでください。」
お客さんにも頭を下げる。
そして、私は急いで店を出る。
どうしよう。
あんな驚いた店長、見たこともなかった。
合わせる顔がないよ・・・・・。
「待って。待って、栗ちゃん!」
後ろから柚さんが腕をつかんだ。
やめてください!
私はいう。
柚さんも濡れちゃいますから。
私は柚さんに顔を見られないようにいった。
今の私の目には大粒の涙がたまっているからだ。
「来い。」
私を引っ張っていく柚さん。
そのまま、裏口らしきところから更衣室へ入った。
「これ着とけ。」
そういって差し出された服。
柚さんはそのまま、出て行った。
「ゆ、柚さーん。」
私は厨房の方に呼んでみた。
「着替えた?」
柚さんは心配そうに来た。
あの、これ、明日返しますから。
私が顔を赤くしていう。
「ちょっとおいで。」
更衣室へ再び連れて行かれた私。
「こんな姿、ほかのやつに見せんな。」
「え・・・?」
「こんな姿見せたら他のやつら、栗ちゃんに惚れるでしょう?」
そういって優しくおでこに帰すをした。
私のココロの中は弾ける水のように飛び跳ねる。
Episode.4 「告白のクリスマス」
雪が舞い、恋人たちのクリスマスが始まった。
もちろん、私・冬野 林檎、高校2年生は只今、恋人募集中。
「クリスマスを楽しんでいる皆さーん!今年も”冬のサクラ”のケーキをよろしくお願いしまーす!」
私は毎年恒例のサンタコスプレでケーキの宣伝アルバイト。
子供たちからは可愛いといわれちょっと嬉しい。
でも、目の前を恋人同士が通ったら少しイラッとする。
あ~どうせ彼氏いないですよー。
ってなるから。
「先輩?冬野先輩じゃないですか!」
ふと声がする方へ振り返ってみる。
そこには1つ下のなぜか私を知っている後輩・早乙女 八朔がいた。
確か小学生からずっと一緒の学校。
顔を知っているくらいだったが、ちょこちょこ名前を聞くようになった。
彼は沢山表彰されているからだ。
「先輩、可愛いっすね。」
私より高くて薄くてかっこよくなった早乙女君。
彼が私の前に立つと仕事ができなくなる。
「あの、ね。君さ、前に立たれると・・・仕事できなくなるんだけど。」
彼はハッとして私の隣に座った。
「俺・・・えっと八朔って呼んでください。冬野先輩はどう呼べばいいですか?」
八朔は犬のようにくるんとした目で私を見る。
「私のことは、林檎先輩で。」
あくまでも、私はあなたの先輩。
彼はいきなり立ち、私の手を握った。
「あの、俺。林檎先輩のことが好きっす!」
そして、まさかの告白。
林檎のように赤い2人の顔と雪のように白いマフラーで君に私は恋をした。