春に咲く花 夏に芽生える木々
Episode.1 「イチゴ味の恋」
甘い甘い恋の味。
いちごのように赤く甘い。
ちょっぴりすっぱいところは彼方への不安。
春野 苺 16才。
ただいま恋愛中。
「苺。これ、食べる?」
彼ー山木 碧ー私に抹茶アイスを差し出した。
「美味しい?」
アーンしてくれたアイスは甘くて、熱されていた私の体を冷やしてくれる。
碧は嬉しそうに抹茶アイスを頬張る。
「苺と間接キスー♪」
からかう様にいった。
無邪気に笑う彼はいつもよりもっと可愛く見えた。
碧は同学年。
女の子にはモテモテ、男の子からは人気、先生からは信頼されている。
バスケ部に所属していて運動神経抜群。
何回も試合に出場している。
しかし、成績はイマイチ。
やればできる子だが、やらないとできない子なのだ。
「俺、部活だけでいいよー。勉強とかしたくないもん。」
ちょっとでも勉強のことに触れるとすぐこういうのだ。
「苺の脳内、見てみたいなー。」
で、その場から逃れようとしてこういう。
いつも同じパターンの碧。
「あ、苺ほっぺたにジャムついてる。」
「え!どこどこ!」
今、食べ終えたばかりの苺ジャムパン。
「ここ。」
彼方がなめた私の頬のイチゴジャムはどんな味だったの?
彼は赤くなる私を見て面白そうに笑う。
高校生の恋は今、上昇中です。
Episode.2 「桃色世界」
真夏の太陽がじりじりと私を焼く。
ビキニ姿の女性たちは楽しげにはしゃぐ。
それを見て嬉しそうに鼻の下を伸ばす男たち。
そんな中で私ー夏野 桃ーはTシャツエプロン姿でバイト中。
「桃ちゃん。お疲れ様。」
仕事も終わり、働き疲れて床に寝そべっていたとき。
先輩ー加地 海斗ーが自動販売機のジュースを私のおでこに当てた。
ひんやりしていて良い気持ちだった。
「せんぱーい。そのジュース、1つ私にくださいな。」
疲れすぎるとテンションがおかしくなってしまう高校1年生。
「何?これあげたら、僕について来てくれるの?」
「は~い。」
酔っ払っているかの様に返事をする私。
先輩は桃の果実入りのジュースをくれた。
「桃ちゃんには桃がよく似合うねー。」
炭酸の入ったジュースを飲みながら可笑しそうに笑う。
先輩は高校3年生。
同じ弓道部の先輩後輩の関係。
バイト先は私のおじちゃんにあたる人が経営する海の家。
私は呼ばれて手伝いにきて、先輩はバイトに来た。
たまたまなのか、運命なのか。
「先輩はビキニの女の子見にきたんでしょー?」
眠たくなりながらいう私。
「違うよ。ほしいものがあったから来たの。」
「ほしいものって何ですかー?気になるなー?」
私は笑いながら、立とうとした。
そのとき。
先輩が私の腕を引っ張り、私のおでこにキスをした。
「僕がほしいのは桃ちゃん。君のこと。」
先輩はおやすみといって奥の部屋へ入って行った。
私の顔は夏の太陽にも負けないぐらい赤々としていた。
夏の恋は桃のように甘く、桃色の世界を作り出す季節。