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恋に差なんてないの

身長差で恋を諦めるなんて・・・










 そんな勿体無い事あたしは出来ない!!

























 最初はあたしの一方的な片思いから始まった。













 出会いは合格発表の日。


 第一希望の学校に受かったその日。


「これ、落ちましたよ。」


 あたしのハンカチを差し出す。


 大きな手には薄いピンクのハンカチ。


「ありがと・・・・う!?」


 目の前には聳え立つ大きな壁。


 ・・・ではなく、長身の彼だった。


 彼が歩くと、自然と人盛りの中に一本の道が開ける。


 でかい。














「平松 真澄、147.5。」


 伸びた!


 1cmだけど伸びた!


 今のあたしの顔は喜びに満ちているであろう。


「真澄、いつになったらあの男とつりあう身長になるのかねー?」


 まゆちゃんめ。


「加野くんの大きいところが好きなの!あたしの身長はいずれ、伸びるんだからね!」


 あたしの彼氏、加野 隼人くんは身長198cmの長身。


 手だって大きいし、薄いけど肩幅もあるし。


 とにかく大きい。


「まぁ、せいぜい踏み潰されないように注意しなさいよー。」


 まゆちゃんはそういって教室まで迎えに来た彼氏とどこかへ消えていった。


 ふん。


 147.5cmもあれば踏み潰されないよ。




















 校舎内にある自動販売機の前に立っている加野くん発見!


「加野くーん!」


 あたしは大きく手を振り、加野くんの元へ走りよる。


「あ、真澄・・・さん?」


 気づいてもらえないことはあるけど・・・・。


「ここだよ。」


 加野くんのトレーナーの裾を引っ張る。


「あーごめん。」


 加野くんはすまなさそうに誤るが、よくあることだ。


 もう、慣れた。


 毎回、ちょっと傷つくけど・・・。

















「あ、見てみて加野くん。このお花、きれいだねー。」


 お昼ごはんを中庭で食べながら小さな花を見つけた。


 あたしはその花を摘み取って加野くんに見せる。


「本当だね。真澄さんみたい。」


 加野くんは重箱のお弁当を頬張りながらやさしく微笑む。


「これ、僕が貰ってもいい?」


 あたしは大きく頷き、お弁当の続きを食べ始める。


 加野くんはあたしより大きくて怖がられるけど、優しくていい人。


 何で皆、加野くんの良さが分からないのかな?
























 お昼休みが終わって、あたしは教室へ帰った。


 まゆちゃんはもう、席について本を読んでいた。


 本が好きなんだよな、まゆちゃんは。


「まーゆちゃん!」


 あたしの声にびくっとして振り返る。


 本を読み出したら集中しすぎて周りが見えなくなるらしい。


 あたしの呼びかけでそろそろ授業が始まるんだな、と思うといっていた。


















 放課後はいつも加野くんのクラスまで迎えに行く。


「ん?」


 いつも加野くんしか残っていない教室から話し声が聞こえる。


 珍しい。


 加野くん以外にも残っている子がいるんだなー。


「加野くん・・・・私と付き合ってください!」


 その言葉にあたしは足を止めた。


「1組の平松さんと付き合ってることは知ってるんです・・・。でも、中々、諦められなくて。」


 あたしは早くなる鼓動を感じた。


 恐る恐る教室を覗く。


 そこには、学年1の美少女と呼ばれる椎名さんがいた。


「私、加野くんのことが本当に好きなんです。」


 椎名さんが放つ言葉の一つ一つが胸に刺さる。


 もし・・・。


 もし、加野くんがOKしたら・・・。


 そのことを考えると心が痛くなる。


「真澄さん!」


 加野くんがあたしに気づいた。


 あたしは驚き、そして。


 そして、走った。


 ひたすら、加野くんに追いつかれないように。


 悲しい気持ちと椎名さんへの返事のことを考えながら。










「真澄さん!」


 いつからだろう。


 後ろからあたしを追いかける声がする。

 

 振り返ってはだめ。


 後ろを向いてしまったら立ち止まってしまう。

 

 加野くんのその優しい声に。


 その優しい温もりに・・・。


 













 触れてしまいたくなるから。


















 あれだ!


 あたしは必死で逃げた末、中庭に生える、一本の木を見つけた。


 あたしは何の迷いもなく、ひたすら上へ上へと登った。


「真澄さん!」


 あたしが登り始めて数分も経たないうちに加野くんが走ってきた。


 すぐに追いつかれる。


 そんなこと分かってる。


「真澄さん、さっきの聞いてた・・・?」


 不安そうな顔・・・。


 そんな顔しないでよ。


「聞いてた。」


 あたしはなるべく加野くんに見られないように。


 悟られないように、顔を隠した。


 今のあたしの顔はきっとぐちゃぐちゃ。


 涙が制御できないくらい溢れてくるし、顔だって赤い。


「ごめん。」






























 


 



 そのごめんはどっちなの?


 あたしのこと、嫌いになっちゃったの?


「ちゃんと断ったから。」


 その言葉にほっと胸をなでおろす。


「どんな人に好きっていわれても、僕は真澄さんのことが好きだから。真澄さんが一番だから。」


 降りておいでと優しい声であたしにいう。
















「加野くん。」


 結局、あたしは加野くんに負けて木から下りた。


 加野くんは温かく包むように受け止めてくれた。


 それが、どんなことよりも嬉しくて。


「降りておいでよっていってくれたでしょ?」


 加野くんはえ?と首を傾げた。


「あたしのことが一番だっていってくれたでしょ?」


 加野くんはじょじょに顔を赤らめる。


「すっごく嬉しかったの。あたしのこと、ちゃんと想っててくれてることが分かって。」


 あたしは少し顔を赤らめていった。









「加野くんが一番好き!」


 そういって抱きついた。


 身長の都合によりお腹辺りになってしまったが、今の嬉しさを伝えるにはこれが一番だった。


 加野くんが大好き。


 抱きついたままぐりぐりした。


 くすぐったいよといってたけど、とにかく楽しくて嬉しくて。






 こんなに幸せなことってないのかもしれない。


 そう思えたときだった。



                                      END

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