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甘いのはあなたへの想い

先輩ー浜尾 雄大ーは私の初恋の人。


 先輩とは幼馴染。


 美術部の私ー雪村 冬美ーと浜尾先輩の家は結構近いところにある。


 近所には小学生や幼稚園児しか居らず、高校生は私と先輩だけ。


 高校2年生の私と高校3年生の先輩が校内で会う機会などほとんどない。


 先輩はバスケ部で部一番のイケメンと呼ばれる人。


 いつも先輩の周りには女の子たちがいて、見かけても声をかけられない。








 放課後、今日は部活が休みで考え事をしながら体育館の横を通っていた。


「雪村、前!」


 慌てて、前向くと先輩の投げたボールが飛んできた。


ゴチン!!


 バスケットボールが、顔面に直撃。


 思いっきりボールと共に床に倒れた私。


 鼻やでこ、口の中がひりひりして痛い。


「大丈夫か?」


 そう言って先輩が私の元に駆け寄ってきて保健室に強制連行された。


「すみません。下向いてたもので。浜尾先輩、練習中だったのに。」


 先輩は冷やしたタオルで顔を拭いてくれた。


「今、誰もいないんだから、先輩って呼ばなくてもいいだぞ?」


 私はハッとした。


 今は私と先輩だけ。


 そう思うと見る見るうちに顔が赤くなるのが分かった。


 顔が赤くなるのを隠したくてアタフタしていると、先輩がいった。


「冬美、今日は校門で待っとけ。いいな?」


 笑いをこらえながら命令口調でいわれると、なんだか恥ずかしかった。


 そして、恥ずかしさとともに込み上げてきたのは、嬉しさ。


 先輩と一緒に帰れるかもしれない。


 そう思うとうきうきした。


「うん!」


 元気いっぱいの返事を返すと、先輩は立ち上がり私の頭を撫でてくれた。


「元気のよい返事、よくできましたね。」


 そう言ってイチゴ味のアメをくれた。


 先輩はそのまま、保健室から出て行く。


 少し寂しかったが練習着姿の先輩はいつもよりかっこよく見えた。


 もっと好きになった瞬間だった。


 イチゴアメを口に入れると、とっても甘かった。


 

 

 

「待たせたな、雪村。」


 先輩は両手に大きな袋を持って現れた。


 中身は多分、女の子から貰ったお菓子だと思う。


 お母さんから、先輩とは学校であまり喋らない方がいいと言われた。


 何でと私が聞くと、先輩はモテるから近づくとファンの子から呼び出されるわよ。


 そう言われた。


 お母さんの言うことは正解だと思う。


 クラスメイトで先輩に近づきすぎて、呼び出されたという子を何人も見てきた。


 ある意味、先輩は危険人物なのだ。






「先輩。」


 学校からちょっと離れたところで先輩に声をかけた。


「先輩じゃなくて、何て呼ぶんだっけ?」


 意地悪な口調で言う先輩はずるいと思う。


「・・・・・雄兄。」


 私は、昔から呼んでいる名前で呼んだ。


「何、冬美?」


「雄兄は危険人物だと思うの。」


 私は、静かに言った。


「何で、そう思うの?」

 

 前を歩く雄兄がどんな表情をしているか分からなかったが、怖かった。


 不思議な感じで怖かった。


「雄兄は女の子にモテモテで、近づいたら周りの子に何されるか分かんないもん。」


 雄兄からの返事は帰ってこない。


 まずいことを言ってしまった。


 どきどきした。


「手、握ったら教えてあげる。」


 また、意地悪な口調で言う雄兄。


 気になった。


 でも、やりたくない。


ギュッ


 手は握らなかった。


「人差し指だけ?」


 私はぎくっとした。

 

 そう思うと同時に引っ張られて雄兄の胸の中。


 幸い人通りが少ない。


「人差し指だけしか握らない人にはお仕置きが必要だね。」


 人が変わったかのように雄兄は言う。


「お仕置き・・・?」


 恐る恐るいうと、さらに強く引き寄せられた。


「ん!?」


 キス。


 初めてのキスはイチゴの甘い味。


「甘かったでしょ?」


 私が縦に首を振るとふふっと小さく笑った。


 そして、雄兄は私を見下ろして言った。


「さっきまで、イチゴアメ食べてたらね。」


 私と雄兄の距離は5cm。


  まだまだ、進展中の私の初恋は、好きなのに好きだといえない。


  甘い甘いものだった。


  

                                      END


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