第9話 恋のから騒ぎ
おまたせいたしました!!
「はぁ〜…」
俺は一人で家に向かって歩いている。何故なら、キティと途中まで一緒だったのにキティがマドンナの姿を見つけて追いかけて行ったからだ。
偶然を装って一緒に帰るつもりらしい。家は反対方向のくせに。
愛ちゃんはデートだし…なんかみんな青春してるよなぁ。
「俺だってアピールしたいのに…」
俺は足を止めた。視線の先には唯子さん。学校帰りらしく制服姿に買い物袋をさげてる。激しく萌え!!!!写真に残したい程だ。
「あれ!!ボイラっち!!今日は一人なの??」
唯子さんは俺の姿を見ると小走りで近寄って来た。
「あ…はい…。唯子さんは…買い物ですか??」
「うん!!今日はビーフストロガノフってタイトルのハンバーグなの☆」
ビーフストロガノフとハンバーグは違う物だとわかってはいても、あまりの可愛さに赤面してしまう。
「良かったらうちで食べて行かない??家に一人ぼっちで寂しいの。」
あー…やばい。嬉しすぎる!!!!
「よっ…喜んでー」
って何居酒屋の返事みたいな事言ってるんだ俺!!
俺の戸惑いをよそに唯子さんは笑顔で家に入って行った。
俺も後ろをついて行く。
唯子さんは薔薇の香りを振り撒きながら鼻唄まじりに買い物袋をテーブルに置いた。
前から思ってたけど…何故にこの姉弟は薔薇の香りがするのだろう。やっぱ美形だからか!?
「あの…前から思ってたんですけど…」
この際だから聞いてみようと思った俺は唯子さんを見る。
「ん??」
唯子さんは首をかしげた。
………死。マジで。
「いや…あの…薔薇の…その…」
一瞬意識が飛んだ俺は慌てて言葉を探す。シリメツレツ。
「あ…わかった??」
唯子さんは少し照れたように笑った。
「ローズオイル飲んでるの。私ね薔薇が大好きだから前から飲んでるんだ!!」
ローズオイル…初めて聞いた。薔薇の油…飲めんのか…油。
「あ…薔薇嫌い??」
唯子さんは心配そうに覗きこむ。
「あ!!いや全く!!たまりません!!」
…ってなんでやねん!!たまりませんって…俺何言ってんだ!!どうしてこうなんだ!!みんなオラに力をくれっ!!(悟空風)
「ふふっ…ありがとう!!」
もぅ俺死んでもいい。唯子さんの笑顔を俺一人だけが見られるなんて…。
唯子さんはニッコリ笑ってハンバーグを作り出す。
俺も慌てて手伝った。こう見えても料理は得意なんだ!!
「ボイラっちスゴーイ!!」
さすがの唯子さんも俺の華麗な刃捌きに興味しんしんだ。
幸せ気分に浸っていると思わず指を切ってしまった。
「痛っ…」
血が出ると同時に唯子さんは俺の手をとった。
「大変っ!!」
そして血が出ている指を自分の口に持って行った。
「えっ…」
俺が唖然としているうちに唯子さんは指を口に含む。
「ローズオイル消毒だね☆」
唯子さんはそれだけ言うと絆創膏を取りに走って行った。
えっと…俺の指が唯子さんの口に……うを!!!!なんじゃぁこりゃぁ?!?!
顔がにやける。顔が熱い。とりあえず一生この指は誰にも触らせない。うん。
俺がボーッとしている内に唯子さんは絆創膏を持って来た。
そして…段差で転んだ。物凄く派手に。
「「……………」」
しばらく沈黙が続く。
俺は思わず唯子さんに駆け寄る。そして唯子さんはムクッと起き上がった。
「……うっ」
う??
「痛い……」
唯子さんの目からは大粒の涙が溢れる。
「ただいま……」
どうしたら良いかわからなくなっていると愛ちゃんが帰宅した。
愛ちゃんは俺と泣いている唯子さんを見比べて硬直した。
「ボイラ…唯子に何をした??」
愛ちゃんは真顔で聞く。
俺が無言で唖然としていると愛ちゃんは唯子さんの頭を撫でた。
「転んだのー」
唯子さんは子供のように愛ちゃんを見上げる。
愛ちゃんはフゥと溜め息をつくと俺の方に向き直した。
「悪いボイラ。こいつ泣きだしたら大変だから今日は…」
「あ!!大丈夫だよ!!俺帰るね!!」
俺は自分の荷物を持つと愛ちゃんの家を出た。
お大事に…という言葉を残して…。
星がキラキラ輝きながら俺を優しく照らす。
なんか…とりあえず…唯子さん可愛かったな…。
いつか…いつか俺が…俺だけが唯子さんの笑顔も涙も包み込める人間になりたい。そう切実に願う。
遅くなって本当にごめんなさい。。。(〃_ _)仕事に追われながらも続きです。どうかこれからも見捨てないで下さい(TДT)