憧れの中華民国のダンサー
台湾の夜。
窓の外に広がる街の灯りを眺めながら、敬太は部屋の片隅に座っていた。
その目の前で、彼女――フー・リンが楽しそうに踊っている。
音楽が流れるたび、リンの長い髪が軽やかに揺れる。彼女は時折、敬太のほうを振り返って笑った。
その笑顔を見ているうちに、敬太の胸は次第に熱くなっていった。
台湾人のリンと、日本人の敬太。
生まれ育った場所も、話す言葉も違う二人だった。それでも、出会ってから過ごした時間の中で、二人の間には少しずつ特別な絆が生まれていた。
「敬太、どうしたの?」
踊りながらリンが尋ねた。
敬太はすぐには答えられなかった。
ただ、彼女を見つめていた。
楽しそうに踊る姿。
無邪気な笑顔。
そして、自分を見つけたときに嬉しそうに笑う、その表情。
その瞬間、敬太の心に一つの思いが浮かんだ。
――この人と一緒になろう。
それは、勢いだけの思いつきではなかった。
これまで一緒に笑ったことも、言葉が通じなくて困ったことも、遠く離れて寂しくなったことも、すべてが頭の中を駆け巡った。
それでも最後に残ったのは、
「この人と一緒にいたい」
という、ただ一つの気持ちだった。
「リン」
敬太が立ち上がる。
「どうしたの?」
リンが不思議そうに振り返る。
敬太は少し照れながら、彼女の目を見つめた。
「俺、今、すごく感激してる」
「どうして?」
「リンが楽しそうに踊ってるのを見てたら、、」
敬太は一度息を吸った。
「これからも、ずっと君のそばにいたいって思った」
リンは黙って敬太を見つめた。
「だから?」
敬太は笑った。
「一緒になろう!」
一瞬、部屋が静かになった。
そしてリンの顔に、ゆっくりと笑顔が広がった。
「敬太」
彼女はそう呟くと、敬太の手を取った。
「うん。一緒になろう」
再び音楽が流れ始める。
今度は敬太も、リンと一緒に踊った。
台湾と日本。
二つの国からやってきた二人の人生は、その夜を境に、一つの物語へと歩き始めた。




