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宇宙人は、愛を知りたい ー 観測した異星生命体は、『ママみ』に飢えた王子様に成り代わる。  作者: 観測者Q


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06.朝を、繰り返す

朝の光は、思っていたよりも普通だった。


カーテンの隙間から差し込む日差しに、

透子はゆっくりと目を開ける。


天井。

壁。

見慣れた照明。


――夢じゃない。


寝返りを打つと、すぐそばに気配があった。


「おはよう、透子さん」


ジュンキチは、床に座ったままこちらを見ていた。

夜のあいだ、動いた形跡はない。

ただ、そこに居続けた、という感じ。


「……おはよう」


声が、少し掠れる。


体はちゃんと重くて、

昨日の記憶も、はっきり残っている。


透子はベッドから起き上がり、髪を押さえると、


「透子さん。手だけ繋いでいい?」


「……どうぞ」


少し顔を赤らめ、目を逸らしながら手を差し出す。

指先が触れ、絡み、ほんの一瞬だけ熱を持つ。


「体調は?」


「……大丈夫、だと思う」


透子は、ふっと息を吐いた。


「ありがとう」


そう言って、そっと指をほどく。


――そこで、画面は一度、暗転する。


ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー


朝の光は、思っていたよりも普通だった。


カーテンの隙間から差し込む日差しに、

透子はゆっくりと目を開ける。


天井。

壁。

見慣れた照明。


――夢じゃない。


寝返りを打つと、すぐそばに気配があった。


「おはよう、透子さん」


同じ位置。

同じ姿勢。

同じ距離。


「……おはよう」


声が、やはり少し掠れる。


透子は起き上がり、髪を押さえる。


「透子さん。手だけ繋いでいい?」


「……どうぞ」


今度は、目を逸らしたまま、少しだけ強く握り返す。


「体調は?」


「……大丈夫、だと思う」


同じ返答。

同じ間。


「ありがとう」


そう言って、また指をほどく。


「朝の用意、するね」


「……?」


ジュンキチは、わずかに首を傾げた。


二回とも、解かれた。

拒否ではない。

だが、保持もされない。


――想定外ではないが、想定通りでもない。


顎に手を当て、思考を回す。


透子は立ち上がり、スマホを手に取る。

それだけの動作なのに、空気が切り替わる。


画面に並ぶ通知。


幼馴染からの共有メッセージだった。


『宇宙人目撃相次ぐ?

 選ばれし者への大会議

 ライブ配信に参加中です。あなたもチェックしよう』


透子は画面を見たまま、動きを止める。


「……無理」


小さく呟いて、スマホを伏せた。


親族とは、純吉を失ってから距離ができた。

心配されるのも、腫れ物みたいに扱われるのも、もう疲れている。


相談するなら――。


指が、無意識にスクロールする。


目に留まった名前。


高虎くん。


前の職場の後輩。

必要以上に世話焼きで、

連絡すれば、理由を聞く前に動いてくれる子。


時間を見る。


まだ、朝。


普通なら、躊躇する時間だ。


――でも。


透子は、ほとんど考えずに文字を打っていた。


『急なんだけど、今日、少し話せる?』


送信。


一拍も置かず、既読。


『今からでも行けますけど?』


透子は、画面を見つめたまま、ほんの一瞬だけ目を閉じる。


やっぱり、そういう人だ。


背後で、気配が動いた。


「透子さん」


いつの間にか、すぐ後ろに立っている。


「今日は、どうするの?」


声は穏やか。

束縛も、詰問もない。


けれど――

昨夜と同じ“側”を、当然の前提にしている。


透子はスマホを胸に抱え、視線を逸らす。


「友だちと、約束があって」


一歩、距離を取る。


「ジュンキチは、お留守番しててほしいな。だめ?」


少し考えたあと、

ジュンキチは“純吉の言葉”を選んだ。


「……いいよ。いってらっしゃい。気をつけてね」


その声に、透子はほっとしたように息を吐き、

出かける準備を始める。


ジュンキチは、何も言わなかった。


ただ、その場に立ち、

透子の背中を見ている。


二回とも、同じ結果。


――変化は起きていない。


だから、次も繰り返す必要はない。


変わるまで、見守る。


それが、今の最適解だと判断して、

ジュンキチは静かに、その時間を手放した。

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