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だいくんと死ぬまでにしたい10のコト☆

机の上には手帳が置いてあった。少し年季は入っているけれど、かわいらしいデザイン。きっと彼女のものだろう。

表紙にはこう書いてあった。「だいくんと、死ぬまでにしたい10のコト☆」。マル秘!と赤ペンでデカデカと書かれている。マル秘と書かれている通り、僕はこの手帳の存在を知らなかった。

開いてはいけない気がした。でも、ページの向こうに彼女の本音がある気がして…僕は、そっと指をかけた。


『1だいくんと…夜景を見える場所でロマンチックなデートっ☆

だいくんと、カップルになったんだしっ!やっぱりロマンチックなデートとかもしたくなっちゃうなぁ~♡オシャレなビルとかから夜景を眺めて…キミの瞳に乾杯っ…!的な!?♡夜景よりリンちゃんの方が、かわいいよっ…的なぁ~!?♡♡あ~、ヤバヤバッ♡想像しただけでキュンキュン止まんないよぉ~!!♡♡///』

手帳の中身はいつものリンの口調のままだった。見てるこっちが恥ずかしい気分になってくる、なんとも浮かれた文章。いつも騒がしい彼女に少し疲れるときもあるけれど…この元気さに、僕は何度救われたことか。


『2だいくんとほっこりピクニックデート♪

ロマンチックなデートもいいけど、ほっこりするようなデートもしたいのっ!自然豊かな公園とかに行って、二人っきりで幸せな日々をかみしめるのっ!原っぱに並んで寝転がって、おひるねして~…えへ♡のんびりしてたらだいくんが…寒いんだろ、もっと近く寄れよ、って言って急に私のコト抱きしめるのっ///んぅ…最高すぎッ…!!♡♡♡』

…う、ん。なんだか変に顔が熱くなるな。でも、リンがこんなデートを想像してたことは初めて聞いた。…僕に気を使ってくれていたんだろうか?


『3だいくんとスカイダイビングをしてみたい!

だいくんがテレビ見てるときにボソッてこういうのしてみたいな~って言ってたのっ!空から高いところから落ちるなんて…どんな感覚なんだろうなぁ~///体に負担かかるだろうし、だいくんが心配だけど…ううんっ!きっとできるよね♪二人なら越えられない壁なんてないのだっ☆愛は、大空を超えるっ☆絶対一緒に空飛ぶぞ~っ♪』

いつか見たテレビでやっていた番組を思い出す。大空を飛ぶ人を見て、バタバタはしゃぐリンの姿を思い出し、思わず笑顔になる。キミは嵐のような子だった。


『4だいくんとペアルックでお出かけしちゃうっ☆

ペアルックとか最高だよねっ!お揃いのカッコでデートするのっ♡だいくんは恥ずかしがってしてくれないケド…(そんなところもカワイイっ☆)いつか絶対してもらうんだからっ!それで可愛いもの見つけたら、またおそろいで買って…い~っぱいおそろいのもの作るの!手をつないで歩いて…えへ///誰から見てもラブラブなのバレバレだねっ♪』

一緒の恰好で、手をつないで…幸せな時間だろう。でも、彼女は一度手をつないだら決して離してはくれない。元気いっぱい駆け回り、一日中町中を引きずり回されることになるだろう。


『5だいくんに私の手料理いっぱい食べてもらうっ☆

だいくん、小さいころに食べたハンバーグが今までで食べた料理の中で一番好きなんだってっ!だから~…私がめっちゃおいしいハンバーグ手作りして、食べさせてあげるんだっ☆だいくん史上一番を私が更新してっ…それで、リンちゃんはいいお嫁さんになるね~、なんてだいくんに言ってもらっちゃって~っ…えへ、えへへっ!///』

リン、僕の好きな食べ物…一度言っただけなのに、ちゃんと覚えててくれたんだ。…すごく嬉しい。うん…リンは間違いなくいいお嫁さんになるよ。


『6だいくんとテレビ出演する!全国デビューだっ☆

大好きなだいくんのこと、みんなにいっぱい知ってほしいなって思うのっ!だいくんは、とっても頑張り屋さんで、私と一緒に居てくれる…素敵な人だから!みんなにも覚えてほしいっ!えへ、ラブラブカップルが出る番組とかに出てみたいなっ///私とだいくんだしぃ…全国から羨ましい~って声鳴りやまないかもっ!?///全国にだいリンファンが爆誕してっ…ベストカップルオブザワールドみたいなの受賞しちゃうッ!?☆』

なかなか難しそうなお題が出てきた。テレビ…もし出演できても僕は緊張しちゃうだろうな。でもリンはきっといつも通りで、元気にぴょんぴょこ騒いでるんだろう。伝説にはなりそうだ。


『7だいくんにワクワクなサプライズをするっ!☆

だいくん、優しいんだけど…いつも、なんだか諦めた?飽きれた?みたいな顔してるから~…ドキドキサプライズしてびっくりさせてあげたいなっ!☆どんなのがいいだろ~…実は私、他に好きな人ができました!みたいな?あー、ダメっ///そんなの口が裂けても言えないよぉ~///嘘でもだいくんが傷つくようなのはダメ!二人で、一緒に幸せになれるようなドッキリが一番っ☆びっくりしただいくんの顔…かわいいんだろうなぁ///』

僕はいつだって君に驚かされてた…いや、振り回されてた?気もするけど…。リンはああ見えて、ちゃんと僕のことを気にかけてくれてる。そして、誰よりも優しい。


『8だいくんと思いっきりペンキをぶちまけてみたい!

インクかけあうゲームみたいなの、だいくんと遊んだの!あらゆる場所がインクでべたべたになっちゃって~…なんか、すっごい気持ちよかったんだっ☆これリアルでやるときっと楽しいだろうな~って思ってっ♪だいくんもインクのゲーム好きだし、一緒にやろうって言ったら喜んでくれると思うなぁ!思いっきり遊んで、はしゃいで…ついでに私のほっぺも真っ赤に染め上げられちゃうの~っ♡///』

いきなり突飛な願いが出てきた…。確かに二人で何度かゲームをして遊んだ。ペタペタと色を塗りたくるリンの顔がとっても楽しそうで…こっちまで嬉しくなったな。彼女は何をしていても、誰よりも楽しそうだった。


『9だいくんと結婚式…的なっ!?///

えへ~…想像しただけでやばい、よだれ出てきた///私はお姫様みたいなかわいいドレス来て、だいくんは王子様みたいなかっこいい服着て、腕組んで歩いてっ…///指輪交換して…チューしちゃうの♡えへっ、えへへ♡…ごっこ、でもいいんだ。だいくんと、永遠を誓いたい。だいくんの好き…ずっと覚えてたいっ!』

…リン。僕とずっと…でも僕は。ページの隅に、濡れた跡が残っている。リン…本当によだれ垂らしてた?……それとも。


『10だいくんと…ずっと一緒にいる!

こんな事書かなくても、ずっと一緒にいるつもりだけどっ…えへへ♡私にとって何より大事な人だから、ずっとずっと一緒に居てほしいな///これだけは、絶対になにがなんでも成し遂げてみせるもんっ♪死ぬまで一緒…ううん、死んでも一緒がいいなっ♪…って、ちょっと怖いかな?笑、それでも…私、だいくんのこと…ずっとずっと大好きだからっ♡』

「…ッ…」

声にならない声が漏れた。胸の奥が熱くて、痛くて、息をするのも苦しかった。視界が歪む。ぽつりと、涙が垂れてきた。濡れた跡が前のページに重なる。リン…キミは…。


「……あーーーっ!?!?だ、だいくんっ!?何見てるのぉっ!?」

後ろから大きな声がした。驚いた顔のリンが慌てて駆け寄ってくる。僕も急いで顔をそらし涙をぬぐう。

「その手帳…ずっとナイショにしてた…も、もぉ~~っ!だいくんのばかっ!それ返してぇっ!」

ぷんすか、という言葉がよく似合う、真っ赤な顔でリンに怒られる。怒っているのか、照れているのか…両方だろうか?やっぱりリンはかわいらしい。

「ふふ、勝手に見てごめんね。リン…こんな事考えてたんだね。」

「もぉ~!だいくんのいじわるっ!むぅ…ちゃんと寝てなきゃダメなのに勝手に手帳見て…あ!お薬まで外してるっ!?ダメじゃんか~…」

リンは、ベッドの横に置かれた僕の点滴を見つめた。それを外してしまえば、生きてはいけないことを、彼女は誰より知っている。でも…もうそれをつけ直す必要もないだろう。僕はベッドに腰かけながらリンに伝える。

「…ごめんね、リン。ろくに起きていられない僕に、ずっと一緒にいてくれたのに…キミがしたいって思ってくれてたことを、叶えられない。」

「へっ!?い、いーよぉそんなことっ…えへへ!まだまだ頑張って病気を治せばきっといつかは…できるかもだし?!」

バタバタと身振り手振りでオーバーに表現するリン。元気にふるまっている様が痛々しく感じた。ずっと一緒に居てくれたんだ…彼女にもなんとなくわかっているのだろう。

「ううん。きっと、もう限界なんだ。自分の体のことだからさ…自分でわかる。もう、最後の時間が…すぐそこまで迫ってる。…もう僕には未来なんて、残されてないんだ。」

リンのバタバタした動きが止まる。いつもの笑顔じゃない、落ち着いた表情でうなだれる。何かを迷っているような表情で、僕に問いかける。

「…ね、だいくん。だいくんはさ…私の手帳、読んじゃったんだよね?だいくんも、書いてあること…したいって思ってくれたかな?」

「うん。リンとこんな風に、普通の恋人みたいに一緒に過ごせてたら…とっても楽しかったと思う。正直…恥ずかしいこともいっぱい書いてあったけど。」

「んぅ、だいくん、恥ずかしがり屋さんなんだからぁ~っ!…でも、そっか。だいくんも…えへ、えへへっ!嬉しいな…!」

リンは照れくさそうに微笑んだ。本当に、幸せそうに。リンは…僕には、もったいないくらい素敵な子だった。何もあげられない僕の横にいつもキミは居てくれた。

僕は黙って彼女の手を握った。この、優しく温かい温度も…もう感じられなくなる。

僕は、一人で死んでいく。彼女を残して…。もう少し、もう少しだけ…今だけはリンとこの時間を……「ん、よぉおしっ!!!!」

彼女は急に大きな声を出しながらガッツポーズをする。びっくりして強張る僕と対象的に、にっこり笑顔になるリン。繋いだ手をブンブン振りながら僕に語り掛ける。

「ねっ!だいくん、だいくん!私、いい事思いついたんだ!とっても素敵な…サプライズっ!」

子供の様にはしゃいで笑う。まぶしい笑顔だ。ぎゅうと手を引っ張って、僕を立ち上がらせる。元気な彼女を見ながら僕まで笑顔になってしまう。そうだ…思い出した。僕の彼女は…。

「今日、今から!手帳に書いてある全部…一緒にしちゃおっ☆」

繋いだ手は離さない。…いつだって、僕を一人にはしてくれない。


次の日の朝、あるニュースが放映された。

「今日未明、あるカップルの死体が発見されました。死体が発見されたのはデートスポットとして知られている展望台がある公園。二人は展望塔から飛び降りて死亡したとみられています。発見者の証言によると現場は異様に血が飛び散っており、草原を赤く染めていたといいます。女性と男性は同じ服装をしていて、指には花で作った指輪を付けていたそうです。司法解剖の結果、男性の胃の中から大量のハンバーグが発見されました。警察は関連性を調べています。」


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