↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あぶはちとらず  作者: 井氷鹿
第1章 Grasp all , Lose all. 1 1995年 春 亘編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/81

本木にまさる末木なし4 The first is the best.



 紅緒を抱きかかえて寝たのが気に触ったのか。 

「わーちゃん、はい、お代わり。ぴっかレモンがあったからレモン水にした」

 そこへ本人がグラスを持ってやってきた。すとんと僕の隣に腰を下ろす。

 っていうか、おまえその生脚をどうにかしろよ。頭ン中はまだ小六男子かよ。

 なんで髪の毛まで濡れてんだよ!

 言いたいことが頭の中で渋滞して、言葉にならないぞ。

 バカヤロウが。

「その格好……」 

「ああ。ごめん。倒れた拍子にお酒被っちゃって。勝手に借りちゃった。風呂場に畳んであったから」 

 と悪びれることもなく言ってのける。 

 そこじゃねー。怒ってなんていないよ。びっくりしてんだよ。

 おまえ、その格好でここから家まで帰る気かよ。

 しかもそれ、僕が朝脱いだやつだよ。

 こっちが赤面するから、マジ勘弁してくれ。

「じーちゃんが崇ちゃん呼んでくれたのよ。ちょうどこっちに用があって来てるはずだからって」 

「紅緒一人じゃ連れて帰れないだろ。(いつき)じゃ役に立たんし。お前でかすぎるから。まー爺はあの後別件で出かける用があって、お鉢がオレに回ってきた」 

 あああっ、もう!

 座ってられなくて立ち上がる。

「そりゃ、すまなかった。紅緒も、迷惑かけて悪かったな」 

「いいよ。わたしも何だかテンション上がっちゃって飛びついたから、ごめん」 

 と肩で小突いてきた。

 バカか。下着が見えるだろ。この中身小学生がっ。 

「そろそろ樹が迎えに来るな」 

 腕時計に目をやり、崇直が言う。 

「今日はすまなかった。世話になったな、二人とも。ありがとう」

 樹、早く来い。これ以上は無理。

 生足も無理。

 たとえ崇直が居ても濡髪に素足にシャツって、どんな罰ゲームだよ。

「えーっ。もう追い出す気。ひっどーい」

 と、隣で紅緒がまた肩をぶつけてきた。

「べーは泊まっていくか?」 

「いくいくーっ」 

 だから、体を摺り寄せるなって!

「だってさ、亘」 

 あほか、崇直。

 ナニを言い出すんだ君も。

 紅緒もイクイクって、応えんじゃねぇって。

 そこへ、ちょうどいいタイミングで来客の呼び出し音が鳴る。

 ナイッスー、樹。地獄に仏だ。

「ほら、迎えが来たぞ」 

 さあ帰れ、お前ら。

 

「忘れ物すんなよ~」

 紅緒が、ゴミ袋一枚拝借したよ、と言いながら着ていた服を突っ込んだ袋を掲げて僕に見せる。

 そんなもんいくらでも持ってけ。だから、早く帰れって。

「それ、置いてけ。クリーニング僕が出すから」 

「いーよ、どうせ他も出すんだから」

 と言いながら、こちらに背を向け右足を上げ左足の膝で支えながらローヒールのパンプスの踵に指を突っ込む。

 素足には履きづらいんだろうか。

 しかし、眼福すぎてまともに見れんぞ。

 崇直はよく平気だな。紅緒の腕持って支えてやがるが。上から見えてんじゃないのか、このヤロウが。

 兄妹同様で育つと、気にもならなくなるのか。

 でも、直樹と紅緒は。 

「わーちゃん、明日休みでしょ。トールちゃんが言ってた」 

 靴を履いた紅緒が振り向きざまに聞いてきた。

 トールちゃんって、え、平川先輩。

 そうだ。 

「平川先輩は」 

 すっかり忘れてた。先輩置いて帰っちゃったんだ。

「平川さんならまー爺に連れられて出かけて行ったよ。心配ご無用って伝言頼まれてた」 

 何で知り合いなんだよ。

「だから、なぜ……」

「ああ、樹と卒業までオレもあそこでバイトしてたんだ。蝶タイ結んで。兄弟仲良く」 

「崇ちゃんって、女性会員の人気すごかったのよ。じいちゃんは女性目当てで『オレの孫ハンサムだろ』って連れ回して喜んでた」

 まー爺、元気っすね。

 そっか、やっぱり僕だけ知らなかったのか。  

 部屋から出ると玄関先はこの部屋専用のエレベータホールだ。

 エレベーターが着くと崇直が、ここで良いよと言いやがった。

 何でだよ。

「下まで行くよ」 

「ここで良い。じゃ、また」 

「わーちゃん、また明日」 

 紅緒がニコニコで手を振ってくれた。

 うわ~っ。

 しまった。

 紅緒を部屋に上げちまったぞ。


 第1章 Grasp all , Lose all.1 1995年 亘編 春 終

お読みくださりありがとうございます。

より良い作品にするため、今回思いっきり改稿しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
紅緒と再開して小学生に戻る様子にほっこり(*´ω`*) 接し方に深読みのしがいがありますw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。