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あぶはちとらず  作者: 井氷鹿
第5章 Grasp all , Lose all.3 1995年 夏 亘編2

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78/78

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ竜田川1 Fortune favors the bold.

いよいよ最後のエピソード突入!

ラストまで駆け抜けますよ~。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

第2章「灰吹きから蛇が出る」2のスピンオフ書きました。

5月23日6:30更新します。

二人がこの夜どう過ごしたか、崇直の切ない夜の話です。

 紅緒が田中に話してるのか。

「……ここから見るだけ」 

 ドーム内にセットしてある屈折望遠鏡をこと座のヴェガに合わせ、すぐ横の開いたドアの外を見る。

 薄暗い中、望遠鏡と三人のシルエットが見えた。

 外に出たら、崇直が居た。

「あ、来たな。こっちで、ヴェガに合わせたから見たいならベーと見ると良いよ」

 直樹の顔とダブって見え、思わず視線を逸らせてしまう。

「わーちゃんありがとう」

 紅緒がそう言って、僕の顔を見て微笑んだ。

 

「どう、土星を見た感想は」

 田中がしゃがんで望遠鏡を覗いている。

「写真で見るのとは大違いだ。浮いてんだぜ。あんなに遠くにあるのに、触れそうだ」

 アイピースから目を離さないところを見たら、気に入ってくれたのかな。

「今なら木星も見れるよ。ガリレオ衛星だってこれならイケるんだ」

「そうなんだ、衛星まで見れるのか、すげーな」

「土星の衛星も、見えるんだよ」

 と、視界に捉えられている分の衛星を伝える。

「あ~、あった。あの白い点って衛星だったんだ。えっと、あと三つくらいあるね」

「もっとあるんだよ。倍率下げたらタイタンも一緒に見えるよ。一時間位したら別のも見えてくる」

 そこで田中が体を起こし、僕の方を見る。

「動いてるんだね、星って。日が昇って沈んで、月が出てこれまた沈んで。地球も回ってるんだよなぁ」

「そうだねぇ」

 そう言って意図せず、二人して天を見上げた。

 南東の方向、来月衝を迎える木星が一段と輝いて見える。

「ほら、あの明るい星が木星だ」

「あれが木星? あんなに明るいんだ」

「うん。太陽に対して正面の位置に来るから、これからしばらく明るく輝いてるよ」

「へぇ~」

「今から木星、導入しようか」

 そう言うとやり方を教えてくれと、田中が言う。       

 お安い事だ。

 ファインダーの使い方と、ピントの合わせ方。

「このちっこいので探すのか?」

「そうそう。先に肉眼で確認してからやると簡単に見つかるよ」 

 一緒にやってるとドームから紅緒の叫び声が聞こえてきた。

「うわぁ~っ、きれ~いっ」

 中を覗くと崇直の膝に紅緒が座っている。

「ヴェガの周りの、恒星まで見えるんだ」

 違うよ崇直、それは。

「伴星だよそれ、今日はコンディションが良いから」

 頭だけ中に入れ話しかけた。

「は、あの小さいのがそうなのか」

「十一時の方向と六時の方向にある光、分かる?」 

「どれ?」 

 紅緒が崇直の頭を押しのけて望遠鏡を覗き込む。

「十一時の方向、あったあった! 白く見える点がある。あの光ね」

 今度は崇直が紅緒を押し出し、覗き込んだ。

 何やってんだよ。抵抗する紅緒の手を崇直が掴んで抑え込んでる。

 兄妹喧嘩かよ。

「おおっ、あれか!」

 二人とも、それじゃ色気もクソもねーな。

 ちょっと安心したら、ドームの開閉窓が気になってきたよ。

 身を乗り出して上を覗こうとした時だった。

「わったるく~ん。ガリレオ衛星導入したよ~っ」 

 田中の声がして、同時に崇直がこっちを向く。うわっ、鼻先がくっ付きそうだ。

「わーちゃん、ありがとう」

 すかさず紅緒が崇直の肩に回していた手で顎を掴み、推し上げ顔を突き出してきた。

 むちゃするなぁ。指が口に入りそうだぞ。

「初めて見た。伴星まで、初めて見れたよ」

 間近に迫る紅緒の顔に、目が留まる。その頬に触りたいよ。

 代わりにこぶしを握り締めた。

「ああ、ちょい待ち。田中の相手をしたら次、アルタイルを……導入するから」

 しかし、こっちを見てる崇直の顔と来たら。何て顔してんだ、笑っちまうだろうがよ。

 ホント、そうやってじゃれ合えるお前が羨ましいよ。

いつも最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。

いよいよ、亘も覚悟を決めたんじゃないかと。

最後のエピソード突入でございます。

ラストまで応援よろしくお願いします!

下の☆☆☆☆☆を是非★★★★★に変えてエールをください!

お願いします。

コメントやリアクションもお待ちしてます。私の力の源ですから!

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