身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ竜田川1 Fortune favors the bold.
いよいよ最後のエピソード突入!
ラストまで駆け抜けますよ~。
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第2章「灰吹きから蛇が出る」2のスピンオフ書きました。
5月23日6:30更新します。
二人がこの夜どう過ごしたか、崇直の切ない夜の話です。
紅緒が田中に話してるのか。
「……ここから見るだけ」
ドーム内にセットしてある屈折望遠鏡をこと座のヴェガに合わせ、すぐ横の開いたドアの外を見る。
薄暗い中、望遠鏡と三人のシルエットが見えた。
外に出たら、崇直が居た。
「あ、来たな。こっちで、ヴェガに合わせたから見たいならベーと見ると良いよ」
直樹の顔とダブって見え、思わず視線を逸らせてしまう。
「わーちゃんありがとう」
紅緒がそう言って、僕の顔を見て微笑んだ。
「どう、土星を見た感想は」
田中がしゃがんで望遠鏡を覗いている。
「写真で見るのとは大違いだ。浮いてんだぜ。あんなに遠くにあるのに、触れそうだ」
アイピースから目を離さないところを見たら、気に入ってくれたのかな。
「今なら木星も見れるよ。ガリレオ衛星だってこれならイケるんだ」
「そうなんだ、衛星まで見れるのか、すげーな」
「土星の衛星も、見えるんだよ」
と、視界に捉えられている分の衛星を伝える。
「あ~、あった。あの白い点って衛星だったんだ。えっと、あと三つくらいあるね」
「もっとあるんだよ。倍率下げたらタイタンも一緒に見えるよ。一時間位したら別のも見えてくる」
そこで田中が体を起こし、僕の方を見る。
「動いてるんだね、星って。日が昇って沈んで、月が出てこれまた沈んで。地球も回ってるんだよなぁ」
「そうだねぇ」
そう言って意図せず、二人して天を見上げた。
南東の方向、来月衝を迎える木星が一段と輝いて見える。
「ほら、あの明るい星が木星だ」
「あれが木星? あんなに明るいんだ」
「うん。太陽に対して正面の位置に来るから、これからしばらく明るく輝いてるよ」
「へぇ~」
「今から木星、導入しようか」
そう言うとやり方を教えてくれと、田中が言う。
お安い事だ。
ファインダーの使い方と、ピントの合わせ方。
「このちっこいので探すのか?」
「そうそう。先に肉眼で確認してからやると簡単に見つかるよ」
一緒にやってるとドームから紅緒の叫び声が聞こえてきた。
「うわぁ~っ、きれ~いっ」
中を覗くと崇直の膝に紅緒が座っている。
「ヴェガの周りの、恒星まで見えるんだ」
違うよ崇直、それは。
「伴星だよそれ、今日はコンディションが良いから」
頭だけ中に入れ話しかけた。
「は、あの小さいのがそうなのか」
「十一時の方向と六時の方向にある光、分かる?」
「どれ?」
紅緒が崇直の頭を押しのけて望遠鏡を覗き込む。
「十一時の方向、あったあった! 白く見える点がある。あの光ね」
今度は崇直が紅緒を押し出し、覗き込んだ。
何やってんだよ。抵抗する紅緒の手を崇直が掴んで抑え込んでる。
兄妹喧嘩かよ。
「おおっ、あれか!」
二人とも、それじゃ色気もクソもねーな。
ちょっと安心したら、ドームの開閉窓が気になってきたよ。
身を乗り出して上を覗こうとした時だった。
「わったるく~ん。ガリレオ衛星導入したよ~っ」
田中の声がして、同時に崇直がこっちを向く。うわっ、鼻先がくっ付きそうだ。
「わーちゃん、ありがとう」
すかさず紅緒が崇直の肩に回していた手で顎を掴み、推し上げ顔を突き出してきた。
むちゃするなぁ。指が口に入りそうだぞ。
「初めて見た。伴星まで、初めて見れたよ」
間近に迫る紅緒の顔に、目が留まる。その頬に触りたいよ。
代わりにこぶしを握り締めた。
「ああ、ちょい待ち。田中の相手をしたら次、アルタイルを……導入するから」
しかし、こっちを見てる崇直の顔と来たら。何て顔してんだ、笑っちまうだろうがよ。
ホント、そうやってじゃれ合えるお前が羨ましいよ。
いつも最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
いよいよ、亘も覚悟を決めたんじゃないかと。
最後のエピソード突入でございます。
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