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あぶはちとらず  作者: 井氷鹿
第4章 Fall between two stools. 2 1995年 夏 崇直編
57/61

恋愛は銘々稼ぎ5 Love knows no common rule.

終に「崇直編」最終話です。


「驚きすぎ、田中」


 振り返ろうとする田中の頭を、また捕まえて前を向かせる。

 そうだ、もらった缶酎ハイ、これじゃ無駄になるな。

 

「せっかくの酒だ、持って帰るか。な、山分けしようぜ」


「あ、うん。そうだ、今なら川崎さんも誘えるよ。そろそろ閉店だし」


「いいね。じゃオレ、レジ袋取ってくるから川崎さんへ連絡頼むわ」


 そうと決まれば、だ。

 オレと田中は再び電車で池袋へ戻ることにした。


「亘くん、べーちゃんが好きだったんだ」


「初恋ってやっかいだよな。9歳か10歳の頃からだから、半端ねーくらいこじらせてたんだよ」


「うわぁ、そりゃキツイな。何せ直樹とべーちゃんはアレだ、本当に仲良しだったから」

 

「だよな。喧嘩してても仲良いってのが分かるくらい、あいつら仲良かったんだよな」


 勝手に死んじまうから。

  

 電車が池袋駅に着く。

 さすがに上りの車内は空いてるが、この時間でも構内は人が多いな。


「亘くんって義理堅いというか、直樹が死んで5年も我慢してたんだね。一途だねぇ、って。おい」


 中央改札を出たところで、田中が肩を掴んできた。


「何だよ」


「高校の頃、亘くんって、しょっちゅう女変えてなかったっけ? 何か腹立つくらいモテてた記憶が」

 

 さすがに覚えていましたか。

 あいつの悪評(アホさ)は、そこまで有名でしたか。

 やれやれ、しばらく紅緒は大変だな。


「いろいろ、こじらせてたんだよ」


 アホだから、あいつは。

 と、そこにPHS(ピッチ)に受信が入る。

 誰だろう。

 ごめんと田中に合図を送り、内ポケットからPHSを出す。


「もしもし……」


「あ、もしもし、笠神くん? 川崎です。今、どこまで来てる?」

  

 え? 川崎さんだ。

 

「川崎さん? はい、今池袋の改札出て東口に向かう所です」


「あのさ、急で悪いんだけど良かったら家で飲まない? 中板だからすぐなんだ」


「あ、ちょっと待ってください」


 とPHSを押さえ、田中に伝える。


「先生のマンション! 行く行く」


 田中への土産のつもりだったんだが。

 酒持ってきて正解だったな。


「はい、いいですね。田中も、喜んでます」


「じゃ、悪いけど中板まで来てくれる? 駅からマンションまですぐだから」


 と言い、一旦PHSを切った。


「マンションまで来てくれって」

 

「最近引っ越したんだよ。だから、俺も初めてだ、行くの」

 

 中板の駅に着き、再び川崎さんへ電話をかけ誘導してもらいながら、歩くこと数分。

 無事、目的のマンションに着いた。

 5階建てのエレベーターのないマンション。


「最上階の真ん中、503号室……はい、もう大丈夫です」


 そこでまた、PHSを切った。

 部屋のインターフォンを鳴らそうと指を伸ばしたら。


「いらっしゃい、よく来たね」


 ドアが開き、川崎さんがお店とは違う笑顔で出迎えてくれた。

今まで読んで頂きありがとうございました。

次回は「亘編」の最終章です。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

亘編も引き続き、宜しくお願いします。

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