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あぶはちとらず  作者: 井氷鹿
第4章 Fall between two stools. 2 1995年 夏 崇直編
53/60

恋愛は銘々稼ぎ1 Love knows no common rule.

 いつも読んで頂きありがとうございます。

 この節は5話で章完結の予定だったんですが、何故かいろいろキャラが暴れだしまして、終わらない。

 開き直って、新節立てました。

 もう終わりが決まってるんですが、お付き合いいただけると嬉しいです。

 好物なのか、マンションへ行く道すがら田中がアタリメを口に咥え、旨いよこれとオレらにも袋を回してきた。

 うん、こりゃ旨い。

 酒とつまみは事欠かねーよな、商店街様様だワ。


 マンションに着くと例の手順に田中が興味持って、我慢できなかったのか自分でやりたがった。

 亘に鍵を貸してもらい、大興奮で解除する。

 表示ボタンが消灯し最上階のボタンが点灯するのを見て、もう大はしゃぎだ。

 そんなに面白いかね、これ。


「ほいよっ」


「うっしゃ」

 

 部屋に着いてリビングのテーブルに持ってきた荷物を置く。


「どーぞ、缶チューハイ、好きなの取って」


 紅緒が中身を見えやすくするため、袋を広げて底を上げてくれた。


「わーい、俺これがいい」


 抜け目なく田中が目を付けてたらしい新作のチューハイを取り上げる。


「じゃ、僕はこれでいいかな」


 亘は適当に選んでるな。

 オレはっと、ブドウがあるじゃん、これにすっか。

 

「わーちゃん、氷ある?」


「ある、ある」


 残りの缶チューハイを亘に持たせ、紅緒がキッチンへ連れて行く。

 うわー、見えない尻尾全力でぶん回してるよあいつ。

 

 その後姿を眺めながら、俺はカウチではなく床へ腰を下ろした。

 背もたれ代わりにカウチのエンドに背を預け、足を伸ばす。

 視線の先ではキッチンカウンター越しに亘の顔と紅緒の頭が出たり引っ込んだりしてる。


「なぁ」


 と田中が床に直接座ったオレの前にしゃがみこむ。

 缶を開け、一口飲むと徐に座り胡坐をかいた。

 田中、じゃまだよ。頭、がああ、もう。


「さっきさ、ビストロで言ってくれたじゃん。友情と恋愛は似てるって」


「ああ、あれな。友情と恋愛の愛情のベクトルが似てるって思ってたから」


 あ、え、なにやってんだ亘は。

 絶妙にじゃま、田中の頭、そしてその顔!


「俺マジで区別つかなくてさ、突然死んじゃうから直樹が。この感情をどうすればいいのか、全くわからなかった」


「うん」 


「でも、今ならあの時、俺直樹の事好きだったんだなって分かった」


 なんだよ、お前いきなり改まって。


「ちょっと我慢して」


 そう言って、缶酎ハイを煽ると、中腰になって缶をテーブルに置き、そのままオレに抱き着いてきた。


 何でそうなる? うわっ、亘がこっち見たよ。


「直樹ーーーっ」


 え、おい、何、田中、ええっ。

 

「なんで死んだんだよ、馬鹿野郎っ」


 お前泣き上戸かよ、こら田中!

 

 と、天を仰ぐがどうしようもない。

 子供みたいに泣き出した田中の頭を撫でてやる。

 しょうがねーな。

 

 紅緒と言い、田中と言い。

 何で泣くかな。

 あやすように抱きしめてやった。


 亘が口に指をあて、紅緒に合図を送ってる。

 皿におつまみを用意していた紅緒がオレに向かって頷いた。

 何抱えてるんだ、亘のやろう。

 亘が、外に出てるよとテラスバルコニーを指さし紅緒と一緒にゆっくり外へ出た。


 直樹のやろう、何処までも兄ちゃんを困らせやがって。


 田中のやろう鼻すすってんじゃねーよ。

 人の胸にぐりぐり顔を押し付けんじゃねぇって、おい。

 

「あー、すっきりした」


 だから、顔押し付けたまま鼻をすするんじゃねえって。


「ありがとう。もう思い残すことは無いよ。これで、気持ちが吹っ切れた」


「ああ。そりゃよかった」


 なら、そろそろ顔を肩から離してもらえませんかね。

 さすがに、直樹に挨拶する予定はなかったです。でも行きたがったので、こうなりました。

 キャラクター起動型って、ゴール決めてても、勝手に走っていくから困りますね。

 ゴールを勝手に目指して行っちゃう。

 寄り道しても、ゴールへ行ってくれるので、そこは安心ですが。

 崇直のゴールまで、お付き合いいただけると幸いです。

 あ、亘も宜しくです。

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