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あぶはちとらず  作者: 井氷鹿
第3章 Grasp all , Lose all. 2 1995年 夏 亘編
36/61

逢いたいが情、見たいが病1 Love longs, and longing aches.

日付が変わって土曜日になってしまいました。

最新話、お楽しみください。

 コバルトヤドクカエル。アイゾメヤドクガエル。

 モウドクフキヤガエル。キオビヤドクガエル。

 イチゴヤドクガエル。


 青、黃、赤の猛毒ガエル。

 どれも初めて見るように、紅緒は瞳をキラキラさせて覗き込むように見つめてた。

 小さなカエルの、小さな動きに心躍らせ、話しかけ、僕にもお余りの笑顔をくれて。


「今の見た? 頭に雫が落ちてきてペロって舐めたの」


「うん」


「頭なでてる。カワイイぃ〜」


 その、カエルに向ける笑顔、こっちにもくれないかな。 


「ね、わーちゃん」


 お、お余りいただき。


「こんなに可愛いのに、飼えないんだよね」


 うん、そのイチゴヤドクガエル一匹でバッファロー1匹即死だから。家じゃ無理だね。

 アマガエルとはぜんぜん違うんだよ。


「また春になったらカエルの卵探しに行くか?」


「あー、カエルの卵。いいね、来年神社の泉に探しに行こう、ね」


 嬉しそうにそう言うと紅緒は僕の腕を掴んできた。


「絶対だよ、わーちゃん。約束ね」


 そう言って、右手の小指を絡めてきた。


「はい、指切りげんまん嘘ついたら針千本のーまーす」


「指切った!」


 よし、じゃつぎはどっちにするとそのまま腕を組んでくる。


「今日は共犯だからね、毒毒展じゃ一蓮托生だかんね」

 

「どんと来いだ。とことん付き合ってやるよ!」


 心臓が、痛い。

 そんな無邪気な顔で、僕の手を握ったらそのままどこかへ連れて行ってしまいたくなるじゃないか。

 ただ手を繋いで、館内を見て回るだけ。

 なのに、胸が心臓が痛いよ。


「ふう。わーちゃん、あと十分でアシカのトレーニング始まっちゃうけど、新設のコーラルリーフ水槽見ていくでしょ」


「サンゴ水槽?」


「わーちゃん好きだったじゃない。それが大きくなってリニューアルだってよ」


 それを聞いて僕は紅緒の手を握り直し、引き寄せた。


「行こう」


 うんと頷き、紅緒が僕に笑顔を返してくれた。

 僕はきっとこの日を忘れないだろう。


「きれーだね。わーちゃん、昔っからサンゴ好きだったもんね」


「ああ。大好きだよ」


 ずーっと昔っから、大好きだったよ。

 今はもっと好きだよ。

  

 見上げるほど大きなコーラルリーフ水槽。

 強力なメタルハライドランプに照らされた、鮮やかなミドリイシに負けない艶やかな色の熱帯魚の群れを。

 君と一緒に見た、この景色を。

 僕がサンゴ水槽が好きだったことを覚えていてくれた、君のことを。


「時間だな、屋上へ行くか」



次回は月曜を予定してます。

楽しんでいただけたら、イイね、⭐️お願いしますです。

コメントなどもらったら小躍りして喜びます。

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