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あぶはちとらず  作者: 井氷鹿
第3章 Grasp all , Lose all. 2 1995年 夏 亘編
33/61

草刈る山路が笛の音4 Every step you take, my eyes follow.

少し手直ししました。

 久しぶりに皆で食べたせいか、すき焼きが美味すぎて箸が止まらない。

 何だかんだと用意した野菜も肉も、全部食べきってしまった。


「ご飯6合焚いたんだけど、見事に食べちゃったね」


 崇直も僕も大満足で、腹を擦っている。

 もう何も入らんぞ。


 暫く3人とも腹いっぱい過ぎて、ぼ~っとしてたと思う。

 のろのろと動き出して、惰性で食器を片付け、そのままリビングへ移動した。


「崇ちゃん、そんな格好してるとここの住人みたいだね」


 起き抜けの格好のままの崇直を、紅緒が揶揄して言う。

 言われた崇直は大して気にした様子もなく、シワが寄ってよれよれのシャツの裾を引っ張って、そーかもななんて言ってるが。 

 実際、崇直は身だしなみに全く気を配らないのだ。

 見てくれだけの僕以上に、彼は整った容姿だし、実際子供の頃からバカみたいにモテてたんだ。

 

 服装なんて、夏はTシャツにチノクロスかジーンズが定番で、冬はそれにシャツを重ねるかパーカーを羽織るくらい。

 何なら平気で同じ服を翌日も着てるようなやつだ。

 少しくらいおしゃれしすれば良いものを、全く興味がないらしい。

 だから、未だ彼女がいないんじゃないかと僕は思っている。


 僕がカウチに座ると、紅緒はリモコンでテレビを点け、クッションを胸に抱えて床に寝そべった。

 絶妙な角度でこっちに背を向けている。

 というか脚バタバタするからキロットの中の脚が丸見えなんだが。

 視線をそらせたら、崇直もクッションを持って紅緒の横に寝そべりやがった。


「着替えても良いんだが、スーツしかないんだよこれが」


 崇直まで同じ様に脚を曲げてバタつかせる。

 あれ、スポーツしてると脚って綺麗なんだな。

 膝を曲げた拍子に、パンツの裾がさがり崇直のふくらはぎが見えた。


「崇直、服貸すぞ」


「いいよ、帰るときまでこの格好で」


 バスケットすると下半身が鍛えられるって言うが、二人ともヒップが上むいて型が良いよなぁ。

 ちょっと自分のヒップラインが気になってきたぞ。

 帰国するまではクリケットとサッカーをしてはいたけどバスケに比べてどうなんだろう。

 サッカー選手のケツは型がいいとおもうんだが、うん。


「司法なんとかって研修所、見に行きたいよねわーちゃん」


 は? 見に行きたいって、え? あ、崇直の勤務先か。


「最高裁判所の機関なんだろ。なんかすごく厳つい感じだよな」


「いいけど、中は入れないぞ」


「なんで」


「どうして」


 なぜかは不明だが、国会議員でも事前予約しないと入れないそうだ。

 司法修習生って、なんかパブリックスクールの寮生並みに囲われてんだな。


「駅からバスだし、周りに何もねーぞ」


 それでも、そんな厳しいところ見てみたいよ。


「入れないが、門から少しは中が見れるかもな」


 ということで、早速埼玉は和光市まで司法研修所を見に行くことになった。


 崇直の支度を待って、マンションを出る。

 やっぱり身だしなみ整えたら、オトコマエじゃないか崇直は。

 スーツも似合ってるし、ネクタイ外してても様になってる。

 先輩も若い頃ってこんなんだったのかな。

 イヤイヤ、あの人はお洒落だから服装はこだわってたはずだからこんなもんじゃないだろうな。腹が立つが。


「なんだよ、人のことジロジロ見て」


「あ、平川先輩も新人の頃は崇直みたいだったのかなって」


「あー、それ分かる。とーるちゃん、似てんのよね崇ちゃんというより直ちゃんに」


 え、先輩が直樹に似てる?


「崇ちゃんみたいに愛想振りまくわけじゃないけど、女性や子供に優しいところとか」


「相手に気を持たせない程度にね」


「そうそう」


 崇直は愛想よく笑顔で相手をするのに対し、直樹は笑顔は作らなかったんだんだよな。


「池袋で時間潰していく? わーちゃんサンシャイン行けるよ」


 紅緒が路線図を見ながら訊いてきた。


「お、水族館。ペンギン見たい」


「新宿乗り換え、の池袋」


「うーっす」


 崇直に言われ切符を買いに券売機へ。

 3人分の金額を入れて、購入っと。


 ハイ、どーぞ。と切符を渡しいざ改札へ。

 昔はここで待ち合わせて高校へ通ったよな。

 僕だけ別の高校で。

 わずか二駅。

 宝物みたいな時間だったなぁ。

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