落花情あれども流水意なし3 The love is one-sided.
あれから、もう一週間か。
惰性でなんとか仕事をこなす金曜の朝。
遅々として進まない時間も漸く昼になり、僕はラボを出て社食へ向かった。
いつもの定食を頼み、定位置となった窓際の隅の席に座る。
一人になったからか、思わず長いため息が出た。
紀和さんに「セフレ解消ね」と言われるまで、自分がただのセフレだったって気が付かなかったなんて。
うわぁ~っ! 思い出したくもない。
あーあ、納得はしてもスッキリしないんだよな、ホント。
次は自分に夢中になってくれる良い子を見つけるのかなぁ。
それとも彼女にも好きな人がいたのかな。
いやいやと頭を振り、背筋を伸ばす。
そんな事より、問題はあいつだ。
あの日以来、あいつの顔が頭から離れないんだ。
紀和さんと別れた夜、ベッドから立ち去るときの彼女のどこか悲しげな瞳。
あの瞳が、あいつにそっくりだったんだ。
ずっとずっと忘れようとしても、忘れることができなかった僕の幼馴染。
あの頃のまま、今でも年を取らない。
去年の直樹の五年祭では、まともに顔も合わせられなくて話もできなかった。
今年四年生だよな。受験前に文転したって聞いた時は驚いたが、上手くやってるのかな。
うわっ、やばい。大学生になった姿がまーったく想像できない。
僕、何してるんだろうホント。
いくら片思いが辛いからって、今まで逃げてたくせに。
今すぐ会いたいって、そんな都合の良い話なんて無いよな。
そんな事を考えて、ボーっとしてたら先輩に顔を覗き込まれた。
「どうした。失恋でもしたのか。ため息ついて」
ビックリして瞬きしたら、涙がぼろぼろとこぼれてくる。
何? なぜ今涙が出るんだよっ。
慌てて拭い、顔洗ってきますと断って手洗いに駆け込んだ。
さっぱりして席に戻ったら、なぜか先輩がワクワク顔で待っているよ。
「なんだ、元気無いなぁ。俺でよけりゃ何時でも相談聞いてやるぞ」
そんなニコニコ顔で誘われたって、元気なんか出ませんよ。
「仕事も一段落ついたことだし、今日は元気付けで飲みにでも行くか?」
そう言うと先輩は、昼飯の親子丼を食べ始めた。
僕が手を付けずにいた昼定食を箸で指し、「食べろ」というように促す。
「……いただきます」
目の前で親子丼を食べてる先輩は、名前を平川亮といい、通産省出身の元技官だ。
そして僕と同じ大学の研究室に所属していた、大先輩でインターン先の指導員でもある。
この先輩に、色々ぶっちゃけたら少しはスッキリするかなぁ。
同門と言うことで特に目をかけてくれ、それには感謝しかないんだけど。
あーあ、何かの間違いで彼女がひょっこり現れる、なんてことは、絶対にねぇよな。
ちくしょうっ。
そうだ、今夜崇直が来るから話してみよっと。




