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あぶはちとらず  作者: 井氷鹿
Grisp all , Lose all. Ⅰ 1995年 春 亘編
3/47

落花情あれども流水意なしⅢ The love is one-side.

 昼休みになり、いつもの社食のいつもの席へ。


 あれから一週間。もやもやは治まらない。

 一方的に突き放されたのに、納得してる自分がなぁ、情けないよな。


 『外見(みてくれ)と学歴だけのオトコ』


 多分、彼女の言い分は正しかったんだ。


 好きだったけど、愛してたわけじゃないし、別れて正解だったんだろう、きっと。


 次は自分に夢中になってくれる相手を探すのかな、あの人も。

 いや、それより問題は、あいつだ。


 あの日からずっと、あの顔が頭から離れない。

 高校生のまま、時間が止まったみたいだ。

 今年、もう四年生だっけ。

 文転したって聞いて驚いたけど、上手くやれてるんだろうか。

 就職、大丈夫かな。


 ……やばい。大学生のあいつが全然想像できないよ。

 僕、何してんだろ。


 親子丼をかき込む音に気づいて顔を上げると、先輩が覗き込んでた。


「どうした。失恋でもしたのか?」


 瞬きしたら、涙がボロボロ落ちてくる。

 なんで今泣くんだよ。


「顔洗ってきます!」


 慌てて席を立ち、お手洗いに逃げんこんだ。


 戻ると、先輩はニヤニヤして親子丼をつついている。


「なんだ、元気ないなぁ。俺でよけりゃ、話聞いてやるぞ?」


 そんな顔されたって、元気なんか出ませんよ。


「仕事も一段落したし、今日は飲みに行くか?」


 箸で僕の昼定を指して「食べろ」と促された。


「いただきます……」


 食欲はどこかへ消えたけど、先輩と一緒に昼を済ませた。


 院の研究室から紹介されたこのインターン先――海外プロジェクト推進室の主任が、この人だ。

 このまま就職まで繋がったらいいな、なんて思ってる。


 就職氷河期ど真ん中。この枠は僕の命綱なんだよな。


 ギリ二十代に見えなくもないこの先輩は、平川亮(ひらかわとおる)という。

 通産省出の元技官ってのが信じられないくらい、気さくすぎる人だ。

 正直チャラい。


 でも、同門の縁で気にかけてくれるのは、本当にありがたいのです。

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