落花情あれども流水意なしⅢ The love is one-side.
昼休みになり、いつもの社食のいつもの席へ。
あれから一週間。もやもやは治まらない。
一方的に突き放されたのに、納得してる自分がなぁ、情けないよな。
『外見と学歴だけのオトコ』
多分、彼女の言い分は正しかったんだ。
好きだったけど、愛してたわけじゃないし、別れて正解だったんだろう、きっと。
次は自分に夢中になってくれる相手を探すのかな、あの人も。
いや、それより問題は、あいつだ。
あの日からずっと、あの顔が頭から離れない。
高校生のまま、時間が止まったみたいだ。
今年、もう四年生だっけ。
文転したって聞いて驚いたけど、上手くやれてるんだろうか。
就職、大丈夫かな。
……やばい。大学生のあいつが全然想像できないよ。
僕、何してんだろ。
親子丼をかき込む音に気づいて顔を上げると、先輩が覗き込んでた。
「どうした。失恋でもしたのか?」
瞬きしたら、涙がボロボロ落ちてくる。
なんで今泣くんだよ。
「顔洗ってきます!」
慌てて席を立ち、お手洗いに逃げんこんだ。
戻ると、先輩はニヤニヤして親子丼をつついている。
「なんだ、元気ないなぁ。俺でよけりゃ、話聞いてやるぞ?」
そんな顔されたって、元気なんか出ませんよ。
「仕事も一段落したし、今日は飲みに行くか?」
箸で僕の昼定を指して「食べろ」と促された。
「いただきます……」
食欲はどこかへ消えたけど、先輩と一緒に昼を済ませた。
院の研究室から紹介されたこのインターン先――海外プロジェクト推進室の主任が、この人だ。
このまま就職まで繋がったらいいな、なんて思ってる。
就職氷河期ど真ん中。この枠は僕の命綱なんだよな。
ギリ二十代に見えなくもないこの先輩は、平川亮という。
通産省出の元技官ってのが信じられないくらい、気さくすぎる人だ。
正直チャラい。
でも、同門の縁で気にかけてくれるのは、本当にありがたいのです。