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あぶはちとらず  作者: 井氷鹿
第2章 Fall between two stools. 1 1995年 春 崇直編
25/61

入り日よければ明日天気1 Red sky at night, sailor's delight.

加筆修正しました。

 デザートまで堪能して、一人二千円で治まった。

 田中、やるじゃん。


 レジで会計をしてる間に、シェフが見送りにやって来た。

 座ってたせいか気が付かなったけど、側に立ったらけっこう細いんだなぁこの人。

 田中がずっとごきげんなのは、この先生の店に来たからか、オレたちと飯を食ったからか。

  

「今日はご来店いただき、ありがとうございました」

「ごちそうさまでした」


 和やかな雰囲気で挨拶を返し、紅緒はシェフと握手までしていた。

 シェフの手は温かいらしい。


「また、来ます」

 目が合ったので、思わず言ってしまったぞ。

「是非」

 何だ、その嬉しそうな笑顔は。顧客が一人増えたからか。 

「お待ちしております」


 もう一回来たくなる店ではあるな。笑顔を返しとくか。

 階段を登り、路地から出て明治通りに向かい歩き出す。 


「田中、美味かったよ。いい店紹介してくれてありがとう」

「よせよぉ、笠神。そんなに言われたら恥ずかしくなるわ」

 どっちなんだ、やっぱり分からん。 


「また連れてってくださいね、ナオト先輩」

「べーちゃんまで。分かったよ、言ってくれれば何時でも連れて行くよ」

 照れてやがる。たまには一緒に飯食ってやるか、田中よ。


「さて、オレらもそろそろ帰るが」

 おっとそうだった。司法研修所プチ見学ツアーするんだった。


「お前らマジで付いてくる気?」

「うん。行くよ」

 マジかよ。


「え、司法研修所に来るの? 中は入れないよ」

「崇ちゃんから聞いたから知ってる、ね」

 と隣の亘に同意を求める。


「ああ、入れなくても門から覗けるって言ってたから」

「変わった趣味してるなぁ」

 覗きが趣味ってことじゃねーぞ。紅緒も亘も、たぶん。


「そう? どんなところか見るだけだから、ね。先輩」

 あんな建物見て何が面白いんだ、と田中は頭を捻り紅緒に聞いていた。

 建物自体に興味はないよ、流石のコイツラだってどういう場所かが気になるんだけだろ。

 ま、興味本位なのは否めないが。


 亘と紅緒は司法研修所の門まで付いてきて、遠目で去年落成したばかりの庁舎を眺め帰っていった。

 帰りは散歩がてらに歩いて駅まで戻るんだと。

 歩けば2、30分の距離だから散歩にはちょうどいいかもな。


 それから田中と寮へ戻り、明日の打ち合わせを軽くして部屋に戻った。

 


 ベッドに入ったは良いが、しかし眠れん。

 くそう、くだらんことは考えんな。

 布団に入ったら、頭を無にしろ……考えるな。

 寝る前は。

 


 オレら兄弟と紅緒は、言ってみれば兄弟同然に育った。

 家に帰っても誰も居ない事が多い紅緒の家。

 逆に、その隣のオレの家というか社務所に行けば、必ず誰かが居た。

 お袋も居れば、親父に輝爺に禰宜の加瀬さんや、巫女さんたち。

 まー爺も、たまに顔を出してたな。


 

 変化が起きたのは、小3の二学期。夏休み明けの9月。

 イギリスから亘が転校してきてからだ。

 

 日本人なのに、初めて日本に来たという変な奴。

 なのに日本語を流暢に話し、神社の鳥居を面白がって、やけに日本の文化に詳しい奴。

 そして、オレと直樹を間違えずに見分けた二人目の人間だった。

いつも読んでいただきありがとうございます。

更新時間が遅れました。


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