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最高の日が最悪の日になる

> いつもと同じはずの朝。だが、その日は違っていた――。


誕生日に差し伸べられた優しさ、胸を刺す記憶、そして「父」と呼ぶ人からの裏切り。


小さな希望から始まった一日が、取り返しのつかない結末へと変わっていく。

同じ日常が7日間続いた。だが、8日目だけは違っていた――特別で、どこかおかしい日だった。


いつものようにバルコニーで目を覚ましたアキラ。しかしその日は、父の怒鳴り声が聞こえなかった。静かに起き上がり、部屋に入り、鏡の前に立つ。額に手を当て、前髪をかき上げて目を閉じると、母の姿が脳裏に浮かんだ。


その母の目をじっと見つめた時、幼い自分がそこに映っていた。短い髪、そして無邪気な笑顔。

だが、アラームの音が現実に引き戻す。目を開けて鏡を見つめ、同じ笑顔を作ろうとするが――できなかった。


「なんでだろう、昔みたいに笑えない…」


そう呟き、アキラは洗面所で歯を磨き、顔を洗い、着替えて食卓へ。用意された朝食を食べ、母の写真の前に立ち、


「今日もいないんだね…じゃあ、行ってきます、母さん。」


微笑みながらつぶやき、玄関を出て扉を閉めた。


下に降りると、ハルトが待っていた。

「おはよう」と声をかけられ、アキラも「おはよう」と返す。


すると、ハルトが近づいてきてアキラの耳元でそっと言った。

「誕生日おめでとう、アキラ。」

そう言って、彼を優しく抱きしめた。


アキラは驚かず、「ああ、今日か…忘れてたよ」とつぶやいた。


「えっ、本気で言ってるの?」とハルトが驚くと、アキラは答える。

「普段祝わないし、覚えてても意味ないからさ。」


アキラはそのまま歩き出し、ハルトが慌てて前に回り込む。

「じゃあ、今日くらい祝おうよ!」

「いや、いいよ」とアキラは無表情に返し、学校へと歩き出した。



---


学校に到着し、教室のドアを開けると、星月が待っていた。彼女はすぐに駆け寄り、手を差し出して笑顔で言う。


「誕生日おめでとう、アキラ!今日パーティーしようよ、招待してくれる?」


そこへハルトが会話に割って入る。

「アキラは祝わないってさ。」


「えー!?ダメだよ、アキラ。今日は絶対に祝うべき!」

「いつも通り祝わないだけだよ」とアキラが言うが、星月は宣言する。


「じゃあ今日、あなたの家で誕生日パーティーする。それで決まり!」


それを聞いた前の席のリクとヤスが振り向いてくる。

「パーティー!?」「俺たちも行っていい?」


ハルトが笑って「もちろん!」と答えるが、アキラは戸惑いながら「いや、ちょっと…」と断る。しかし、みんなに押し切られ、ついにアキラはOKを出した。



---


昼休み、アキラは屋上で父に電話をかける。


「もしもし、何か用か?」


「今日、家で俺の誕生日パーティーするから、お菓子とか取らないで。ゲスト用に残しておきたいんだ。」


「は?俺の家だぞ?何を食おうが勝手だ。文句言うな。」


その言葉にアキラはイラつき、電話を切った。



---


夕方、アキラと友人たちはケーキを持ってアパートへ。玄関を開けて中に招き入れると、父はソファに座ったまま無言だった。


「気にしないで、あれが父だから」とアキラは言い、みんなをキッチンのテーブルに案内する。


だが、冷蔵庫にジュースはなく、引き出しにもお菓子はない。

「…あのバカ親父」と呟き、アキラは買い出しに出た。



---


10分後、アキラがエレベーターを降りると、友人たちが帰ろうとしていた。


「え?どこ行くの?」


リク:「今、大事な用事思い出した」

ヤス:「ごめん、また今度祝おう」


星月は無言でケーキを渡し、その場を去る。


アキラは呆然とする。その時、ハルトが肩に手を置き、言った。


「…全部、君の父さんが言ったことだ。」


(回想)

「お前ら、あいつと友達なのか?アイツはただの無駄だ。今ごろエロ動画でも見てるだろうよ。女の子、お前…少しは分別あるのか?」


それを聞いたみんなは、沈黙のまま家を出た。


「…ごめん、アキラ。」そう言ってハルトも去っていった。



---


アキラは怒りに燃え、家に駆け込んだ。


「どこにいるんだ!!」


リビングに入り、母の写真の前にジュースとお菓子を置く。だが、ジュースのフタが甘く締まっておらず――

そのまま父の元へ。


「何様のつもりだ!?自分を家の主か何かと勘違いしてんのかよ!」


「口の利き方に気をつけろ、俺はお前の父親だ。」


「父親?…笑わせんな。人生めちゃくちゃにしやがって。」


怒りに震える父はテーブルを叩き、リモコンを投げつける。そのリモコンは、母の写真とジュースに直撃し、絵に描かれた一枚きりの写真が台無しになった。


アキラの中で、何かが切れた。


「…てめぇ…!!」


アキラは父を全力で突き飛ばし、部屋に引きこもった。



---


数分後、罪悪感に駆られたアキラは、父の部屋を覗く。少しだけ開いたふすまの隙間から、父の足だけが見えた。


「…ごめん、父さん。俺、言いすぎた。」


返事はない。


アキラはそっとふすまを開ける。そこには――


動かない父の姿。アキラの心臓の音だけが聞こえていた。


「と、父さん…?ねえ、父さんっ!!」


絶叫が、静かな部屋に響いた。

> 第3話を読んでいただき、本当にありがとうございます。


この章は、アキラにとってとても大きな転機となる物語でした。感情を込めて書いたので、読者の心にも届いていたら嬉しいです。


もし物語が少しでも心に残ったら、評価や感想をいただけると励みになります。


次回もよろしくお願いします!

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