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未来の中心

飯テロ注意


光の中には必ず陰がある。

人は光が速すぎて、その陰が見えていないだけだ。

休日だったはずの仕事はなんだか、気だるかった。

「ほら、上条先輩仕事なんですかはシャキッとして」

「はいはい、それより紅葉くんこんな無防備な所に脱出装置を作るのかい?」

「いや、政府が半永久的に所有している土地を借りることになっています、3階建てのアパートになっているんですが防音や盗聴対策などもしっかりしてますから」

「そうか、じゃあそこに急ごう」

紅葉君の後に続き僕達は、海際のアパートに着いた。

「にしても十年後になろうとあんまり変わらないんだな」

「まあ、科学技術は発達しきってますから十年じゃそんなに変わりませんよ」

アパートはかなり広いが国の施設のせいなのかあまり人気は無く静まり返っていた。

「誰もいないな?」

「だからいったでしょ?どんなにバカ騒ぎしたって完全防音なんですってちゃんと未来の職員達がいますよ、えーと私達の部屋は…34号室です」

紅葉君は鍵を取り出し、番号を確認する。

「その鍵88番って書いてないか?」

「これ旧番号ですよ、裏に本当の番号が書かれてるんですよ〜元々89号室まであって部屋の広さを拡張するために政府が35号室に減らしたんですよ」 

紅葉君はくるくると鍵を回しながら34と書かれた部屋の前に立ち、鍵を差し込んだ。

「結構古典的な鍵なんだな、10年後だったらもっと便利な鍵になってそうだが…」

「なんか理由があって鍵だけは昔のまんまにしたらしいです」

紅葉君は重そうな扉を必死に全身を使い開ける。

「開けるのも一苦労ですね…」

「今度から僕が開けるよ」

僕達は中に入り、辺りを見渡す。

部屋の中はコンクリートむき出しのスペースが広がっていて、端に机とソファー別室は4つあり2つは寝室、残り2つは調理場と風呂だった。

「デザインはまあまあだな、利便性も十分だ」

「なんか足りなくなったら、脱出装置で帰ればまた来れますからね、まあ餓死することはないでしょう」

「まて紅葉君…君料理は出来るか?」 

「……工業製品しか取り扱ったこと無いです…お腹すきました上条先輩」

紅葉君はよく耳を澄ませないと聞こえないほどの声でそう言った。

「僕が作るか…」

「え?上条先輩料理作れるんですか?」

「ああ、当たり前だろ?フランス料理が好きでよく家族に食わせてた」

「フランス料理か〜食べたこと無いですね」

「君はいつも乾いた携帯食で済ませてるからな」

「食べます?ストック後2個ありますよ?」

紅葉君は、サイドポケットから2箱取り出して掲げてみせる。

「いやいい、僕はちゃんとしたの食べたいから」

「じゃ私の分もよろしくお願いします」

紅葉君は端のソファに行き机に荷物を置いた。

「私は脱出装置を完成させます」

「何分かかる?1時間か?」

「30分で十分です」



僕は厨房に立つ、調理道具は使ったことのない道具まで揃っていた。

「なんだこれ…どう使うんだか、さすが10年後だな」

僕は取り敢えず冷蔵庫を探す。

しかし、何処にもそれらしきボックスは無かった。

「…いったい何があるんだここは?」

僕は一旦引き出しを開けてみる。

引き出しの中に入っていたものそれは十分に冷蔵された野菜だった。

「…独特だな〜未来って」

容量が分かれば後は簡単だ。

クードゥ・ブッフ(牛の心臓トマト)

フルール・ド・セル

EXヴァージンオリーブオイル

モッツアレラ・ディ・ブッファラ  

牛乳                

生クリーム             

板ゼラチンを用意する。

まず牛乳とモッツアレラ・ディ・ブッファラを鍋に入れ、弱火にかけモッツァレラを溶かす。

この時牛乳を沸騰させない事が重要だ。

しばらくしたら、冷水出ふやかしたゼラチン入れまたよく混ぜる。

いい感じになったら、余熱を取りミキサーにかける。

さらに、裏ごしをして冷やしておく。

しっかり冷やしてある1cmの厚みにスライスしたクードゥ・ブッファラにフルール・ド・セル、EXヴァージンオリーブオイル、イタリアの食材であるモッツアレラ・デイ・ブッファラとの組み合わせは定番中の定番だ。

クリーミーで濃厚なモッツァレラチーズと酸味と甘味を伴うみずみずしいトマトとの相性は夏に味わうにはピッタリの組み合わせだ。

そして、これの上にさっきのソースをかける。

これで完成だ。


皿に盛り付け僕は、紅葉君の元へ向う。

「紅葉君前菜ができたよ」

「前菜ってフルコースでも作る気ですか?」 

「さすがにそんなに食べれないだろ、次の料理とデザートで終わりだよ」

「次の料理ってなんですか?」

紅葉君は工具箱を仕舞い、机に置かれたクードゥ・ブッフを一口頬張る。

「ん〜美味しいですね、酸味がチーズとよく合う何ていう料理なんです?」

「ん?牛の心臓だ」

「え?これがですか?」

「見た目の話だフランス語でクードゥ・ブッフは牛の心臓を意味するんだ、ちなみに次の料理はグラタンだ」

「え?グラタンってフランス料理なんですか!?」

「知らなかったのかい?グラタンはフランス料理だ」

「てっきりイタリア料理かと思いました」 

まあ、そう思っても仕方がないだろう。

僕はまだ厨房に戻りグラタンの用意をする。

「いきなりなんだけど僕なんでこんな事してるんだっけ)

シェルマカロニを茹で、玉ねぎのみじん切りが入ったトマトソースに敷き詰めていく。

その上にチーズ、ローズマリーを乗せてオーブンでじっくり焼く。

このオーブンで焼く作業これをグラタンというのだ。

つまりこの調理方法をすれば全てグラタンになる。

フランス料理の名前は食材+調理方法という規則性があるのだ。(違う時もある)

「よし、しっかり焼けた」

表面がカリッとしたら、完成だ。

大皿に移し、取り皿を持っていく。

「メインディッシュだよ」

「グラタン久々に食べます」

紅葉君は目を輝かせどんどん取皿に移して食べていく。

僕はさっき作った前菜を食べ始める。

「デザートは何ですか?」

「冷蔵庫に入ってたマドレーヌ」

何故かここはフランス料理に適した具材がたくさんあった。

それに、僕は何も疑問には思わなかったのだった。



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