表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/22

契約

 「――――えっ、あ、ああ、はいぃぃぃ!!??」


俺は正直焦った。


ついさっきまで、さほど急でもない坂道を蓮と二人で歩いていたはずだ。


それがどうしたことだろう、だだ瞬きをしながら一歩歩いただけで、何処ともわからない西洋風の街にいる。


「あ、そうだ、蓮」


俺はとっさに隣にいた蓮の名前を呼んでみたんだが、そこにはさっきまで居たはずの蓮の姿はなく、石畳の街中にある靴屋のような建物しか見えなかった


「お、おい、嘘だろ……??」


俺は確かにさっきまで蓮と帰っていたはずだ、しかしどうだろう、今眼下に広がるのは見たこともない景色だ。


俺は取り合えず頭の中を整理することにした。


まず考えられるのは、俺が余所見運転していたおっちゃんなんかに跳ね飛ばされて、昏睡状態にあるということだ。


だけどこれは無いな、夢は記憶の整理のようなものだし、俺はこんな街並みを再現できるほど見たわけじゃない。

第一、吹いてくる埃っぽい風や、今こうして歩いている感覚は本物だもんな。


ああ、わかった、これ新手のドッキリだ。


そう思ったおれはとりあえず叫ぶことにした。


「おーーーーい、マジ騙された、降参、降参、誰か出てきてくれーーーーーー!!!!」


シーン…………


あれ?そこはババーンと出てくるとこじゃないのか??

いや、まあ、わかってたけどさ……。


というのも、俺のじいちゃんは昔から忍びを生業としていたらしく(嘘か本当かは定かではないけど)、俺はじいちゃんによく引っ付いていたためか、体術、武器の扱い、気配の読み方、殺し方など、いずれは必要となるだろうと教えてくれたんだけど、まあ必要になるときなんて早々こないだろうなとは思っていた……。


けど、今、人の気配を探っていたんだけど人の気配なんてものは皆無で、何か嫌な気配がする。


その次に考えられるのは、…………い、異世界か?


いや、いや、そんなメルヘンチックなことは起こるはずないし、そんな現実離れなことは信じたくもないし、第一、俺は巻き込まれキャラではあるが、そんな何処かの物語の主人公ようなキャラでは無かったはずだけどな……。


「いやー、はい、………………おい、コラァアアアアアアアアアア!!!!!!」


結局あまりの想定外な出来事のあまり頭がショートしてしまったらしい。


「はぁ、はぁ、はぁああ」


取り合えず深呼吸して落ち着くことにした。


……まあ、はい、認めましょう、ここはマジで異世界ですね、はい。


俺は俺なりに頭の中を整理したところで、取り合えず街中を散策することにした。


とりあえず今わかるのは、俺は異世界へ飛ばされ、よく分からないが西洋風の石畳が印象的な街中にいる。そこはまったくと言って良いほど人の気配はなく、あるのは寂れた店や家、それによく分からないなんか気持ち悪い気配だ。

もしかしたら蓮もとは思ったんだけど、どうやら俺だけのようでやっぱり一人は寂しい…。


とまあ、考え事をしながら街中を散策していると嫌な気配が近づいていることに気がついた。


本能は逃げた方がいいと言っているのだが、理性の方は誰かに会いたいという気持ちだ。


俺はまあ、死ぬことはないだろうと思ってその気配に近づくことにした。


それが、始まりの大いなる出来事なども知らずに…………。








◇◆◇◆◇◆








 俺はその気配に近づいてみて正直後悔した。


目の前にいたのは、ぱっと見少女だった。


だが近づくにつれて自分の愚かさに舌打ちしてしまった。


少女と思っていたのはよく見ると人形だった。しかしその肌は生きてる人間のように綺麗な真っ白の肌で、冷たささえ感じさせるほどだった。

髪は茶色で、目は人形であることを主張するように光のない黒色をしていた。

またその人形は血のような真っ赤なフリルのたくさんついた貴族が着るようなドレスを着ていた。


俺はすぐにわかった、この人形にはどんな手を尽くしても絶対に勝つことは不可能だと。


その人形は俺の考えがわかったのかはわからないが、口元を微かに歪めたような気がした。


その人形は突然ドレスのスカートの端を持ってお辞儀をすると、次の瞬間どこに仕舞っていたかは分からないが、どこからともなくダガーナイフのようなものを取り出し、ダン!! と音がするとすぐ側まで一気に迫ってきた。


やばいって、こんなの敵うわけない。


咄嗟に判断した俺は後ろに全力で後退した。すると俺がいたところには、ヒュンとそこの空間ごと一刀両断したような鋭い一撃が繰り出された。


俺はじいちゃんに感謝しつつ、逃げるなんて格好悪いのは十分わかっているが死ぬのは何としても嫌だから、側にあった建物の屋根の上に飛び移った。


そこで人形を見てみると、ちょっと安心した俺が馬鹿だった。


そいつはドン!! と地面が割れるような音を出してトンでもないスピードに俺に迫ってきていた。


俺はヤバイと思いその隣の建物の屋根に出せる限りの力で飛び移った、すると、その俺がいた建物は俺が飛び退いたコンマ一秒の差で、人形によってスパッと斬られていた。


「はぁ、はぁ、はぁ、――――くっ」


俺には正直どうしようもなかった。俺はその後の攻撃も何とか隣の屋根に飛び移ることでしのいでいたが、人形に疲れは微塵もなく、それに対して俺はあと一、二回が限界だった。


すると、またもや人形は間髪入れずに俺のもとに迫ってきて、俺を殺そうといきり立っていた。


俺は残り少ない体力を限界に使い、紙一重でその一撃をかわし、次の建物に飛び移った。


そこで俺の命運は尽きたのだろう、その建物の屋根はどうやら腐っていたようで、俺が乗った瞬間、

バキバキとけたたましい音をたてて、崩れ、俺は疲労のためにバランスを失い、建物の中に落ちてしまった。


「っく、くそ」


俺は自分の失態に舌打ちしつつ、逃げるために動こうとしたんだけど時すでに遅し、すぐ側に人形がいた。


マジかよ、ジ・エンドじゃん。


俺は再度動こうとしたが、どうやら情けないことに恐怖で腰が抜けたようだ。


「動け、動けよ、動けよぉぉおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!」


俺の叫びは虚しく足はまったく動こうとはしなかった。


カツン、カツン、カツン。


それは俺の死へのカウントダウンを刻むかのような足音だった。


そいつは俺を切り刻むのかと思っていたんだけど、そいつと目が合うと、とたんに体の力が抜け、体が言うことを利かなくなった。


ああ、俺もう死ぬんだ。俺は悟った。


そしてその人形は次に何をするかと思ったら俺の腕に噛み付いてきて、一部の肉を食いちぎっていった。


「ぶちっ、ばきばき、くちゃ、くちゃ」


こ、こいつ、俺を食ってやがる……!!


俺がこう冷静に判断できたのは痛みがなかったからである。


そう、そうして俺は食われていった。


自分への怒りと、どうしようもない笑いを抱きながら――――。








◇◆◇◆◇◆








 ふと目が覚めた、ゆっくりと目を開けると、目の前には一点の曇りもない真っ白な空間だった。


「ああ、ここ天国かな?」


「いや、違うぞ」


俺は状態を起こして声のする方へ向き直ってみると、俺は目を奪われた。


そこには、俺より一つか二つほど年下ぐらいの少女がいた。


少女は凛と輝く白銀の腰の下あたりまである髪をもち、宝石よりも輝く、海よりも青い、青い澄んだ色の綺麗な目をしていて、純白の貴族が着そうなドレスをきていた。


「おい、どうしたのだ? わらわの顔に何か付いているのか??」


「あ、ああ、悪い、君は誰?」


「初対面の人に向かって君とは失礼な奴じゃのぅ、まあよい、ここに来るがよい」



と少女は真っ白なイスとテ-ブルに案内した。


「して、わらわの所に来たということは叶えたい望みがあるのじゃろ?」


「え、いきなり言われても困る。俺は気が付いたらここにいたんだ」


「じゃが、ここにいるということは何か叶えたい望みがあるはずじゃ」


「か、叶えたいものといわれても…、あ、そういや俺死んだんだよな??」


「うむ、そうじゃ。まあ、正確に言えば体を奪われたんじゃがな」


「体を奪われた?」


「うむ、そちは人形使いによって体を奪われたのじゃ」


「人形使いって、あの人形を操ってるのか」


「そうじゃ、人形使いは操るための人形を作るために人間などの体を使うのじゃが、そちは別の理由で奪われたんじゃ」


「別の理由?」


「うむ、そちの魂はなかなか澄み切っていて、そのような魂はめったにない。その魂のよりしろとなった体は普通のものの体とは違い特別じゃ」


「特別??」


「そうじゃ、その体は強大な魔力を秘めており、それは普通のものの体のように奴らに食われてのそまま糧になるのではなく、いくつもの結晶となって飛び散るのじゃ」


「なるほど、つまり俺は体を取り戻せるのか?」


「もちろんじゃ、じゃがしかし一度飛び散った結晶は世界中の様々の所に落ち、何処にあるかを探すのは困難とも言える。それにその結晶は宿主ではない者が集める可能性が高い、膨大な魔力を秘めておるからな。それにもし宿主ではない者が結晶を全て集めてしまえば……、二度と体を取り戻すことは不可能じゃ……。」


「大体わかったけど、どうやって取り戻すんだ?俺は死んでしまってもう戻れないだろ??」


「たしかにそちの魂の拠り所となる体が必要じゃ。じゃが、わらわと契約すれば、かりそめじゃが

そちの魂の拠り所となる体を作ることができる」


「どうやって??」


「魔法じゃ、ま・ほ・う」


「は? いやいやそんなことできるわけない。君が言ったとうりなら俺の魂は他の奴とは違って特別なんだろ? ならそんな魔法ごときで俺の魂が拠り所としていた体を作れるわけないだろ?」


「うむ、確かにそちの言うとうりじゃ。じゃが、わらわと契約することで膨大な魔力が生成されるのじゃ」


「どういうことだ?」


「うむ、つまりはわらわの魂とそちの魂が混ざり合うことで繋がりが強くなり、お互いの魂が共鳴し合い、その時に膨大な魔力が生み出されるのじゃ」


「なるほど…。そういや聞き忘れてたけど、君は神様かなんかなの?」


「いや、わらわは神などではない。わらわはそちと同じ体を奪われた者じゃ」


「は?、じゃあ、あの人形に君も食われたの??」


「い、いや、そうではない。わ、わらわは……」


「あ、ああごめん。言い難かったらいいよ、誰だって言いたくないことはあるよな」


「す、すまぬ。じゃが、いずれは言うつもりじゃその時まで待ってはもらえぬだろうか??」


大変困った顔で、上目遣いでいってくるもんだから、つい顔が赤くなって目を逸らしてしまった。


「い、いや、いいって、いつか話してくれるんだろ? ならそれまで待つから」


「ほ、本当か?」


「うん、本当。だから安心せろ」


「う、うん」


今度は満面の笑みを向けてくるもんだから、俺は顔が真っ赤になってしまった。


俺は照れ隠しに話題を振ることにした。


「そういや、君の名前を聞いていなかったな」


「あ、ああそうじゃったな。わらわらはティア・ラ・クァドリオンと言う。してそちは?」


「ああ、俺は楠巳空(くすみそら)だよ。よろしくなティア」


俺は早速ティアの名前を呼んでみた。すると一瞬驚いた顔をした後、またもや満面の笑みで、


「うん!! よろしく空」


こうして俺たちは出会ったのである。








◇◆◇◆◇◆








 「んで、ティア、契約ってどうするんだ?」


「うむ、早い話が抱き合えばよい」


「ああ、なるほどね。……ん?って、はぁああああ!!??」


俺は、あまりにも予想外デスな言葉を言われたあまり、思わず大声を上げてしまった。


「わ、わわわっ、どうしたのじゃ、いきなり大声なんか出して?」


「どうしたもこうしたもない、抱き合うってはぁあああ!!??」


「し、仕方ないのじゃ、そ、その、密着してないとお互いの魂が共鳴しにくいのじゃ」


「み、密着って…」


「そ、それとも空はわらわと抱き合うのがそんなに嫌なのか??」


と、すこし頬を赤らめて、上目遣いで見てくるもんだから俺は情けないことに緊張してドキドキしてしまい、まともな思考はできなかった。


「い、いや、そうじゃ、なくてな、そ、その、抱き合うってのがな、うん、健全な男子だしマズいかな~って、うん、ティアかわいいし」


そういうと、ティアは頬までだった赤みが顔全体まで広がり、とうとう顔を伏せてしまった。


「そ、そうか…。じゃが、これ以外はないのじゃ。しばしの辛抱じゃ、我慢してくれ」


「あ、ああ、そうだな。ふーはー、ふーはー、よし、準備いいよ」


「う、うむ」


そういうとティアは俺に抱きついてきた。

ティアは俺のあごのしたぐらいまでの身長で、いまは強く抱きついてるためか胸のところに頭がある。

そう、強く抱きついてくるもんだから、胸があたるのだ、ティアの胸は小さすぎず、かといってそれほど大きいわけではなく、手で覆えるぐらいなんだけど、それがあったって、正直やばいのだ。

しかも、髪はいいニオイするし、なにしろやわらかいし。

そう、正直たまりません!!!


「じゃ、はじめるのぅ」


「あ、ああ」


すると俺とティアを中心に魔方陣のようなものが展開し光輝く。


「我はここに誓う、楠巳空とともに悪しき存在を打ち砕き、世界を平定せんことを」


「そ、空も言うのじゃ」


「お、おおう」


「我も誓う。ティア・ラ・クァドリオンとともに悪しき存在を打ち砕き、世界を守ることを」


その後はティアが魔法をどんどん唱えていった。


「次で最後じゃ。いっしょに言うのじゃ『リムス』と」


「ああ、わかった。じゃあ、いくぞ、せーの!!」


「「リムス!!!!!!!!」」


その言葉を言うと目の前をすべて白い光が覆った――――








◇◆◇◆◇◆








 そうして目を開けるとあの最初の街にいた。


―――――そして、目の前には俺を殺したあの人形がいた。


俺は不思議と怖くはなかった。むしろ奴に対する怒りで今にも飛び出しそうだ。


『空、そやつじゃな』


「ああ、そうだ、コイツだ」


『そのままじゃ、敵わない。これを使うのじゃ』


すると虚空から二丁の黒い銃が現れた。


『それを使うのじゃ。それはそれぞれ、憤怒の銃、快楽の銃といい二つあわせてツインゲベア(黒き二丁拳銃)といい、お前が死ぬ前に感じた一番強い感情を元にして作ったのじゃ。

その銃はそちの感情に反応して打つことができる。ちなみに弾は無限じゃ。気持ちが強ければ強いほどその銃の威力も強くなる。まずはそ奴で試してみるがよい』


握ったとたん不思議と使い方は頭に浮かんできた。


「いくぜ……、クソ野郎!!」


それを合図に人形はダン!!とものすごいスピードで突っ込んで来たけど遅い。


「じゃあな……、人形。あいにく俺は執念深いんだよ!!!!」


ありったけの怒りを込めて人形の頭めがけて撃ち込んだ。


すると人形の頭粉々になり、動かなくなり砂と化した。


そのあと、青に光り輝くものが見えた。


「ん?、あれは??」


『結晶じゃ、結晶!! お前のじゃ。よかったのぅ』


「え、まじかよ、よっしゃ!!」


俺は手に掴むとそれはさらに光輝きすぅーと俺の中にはいっていった。


『記念すべき第一個目じゃな』


「おう!!」


そうして俺とティアは旅を始めるのだった…………。


どうだったでしょうか??

つたない文で読みにくかったとは思いますが楽しめたでしょうか。今回は長めで疲れました・・・・・。

面倒かとは思いますが、ご意見、感想、リクエストなどをお待ちしています。では今回はこれぐらいで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ