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帰り道で

 「ご馳走さま」「ご馳走さま~~」「ご馳走様でした」


と、家族三人揃ってご馳走様を言うのも楠巳家ではいつものことだった。


ここで紹介しておくと、楠巳家は三人家族だ。親父はと言うと、俺が五歳のときに家を出て行ったきり帰って来ていない。だから俺や蓮はあまり親父の顔を覚えていない。

だから別に寂しくもないし、むしろ母さんを一人にした親父を恨んでいる。

まあ、そんな理由で母さんは女で一人で俺らを育ててくれ、そのことは感謝してもしきれないくらいだ。


んで俺はと言うと高校二年で17歳、蓮は高校一年で16歳で一緒の高校に通っている。

俺はなんでも無い普通の学生だと思っているんだけど、俺が一年の時にヤンキーに絡まれて、それを返り討ちにしたところ、学校単位でどう噂が広まったかは知らないが『ヤンキーキラースカイ』と呼ばれ、なんか盛大に勘違いされて誤解を解くのは大変だった。(もっとも、蓮や友達の連中は逆に広めようとしていたけど…)


とまあそんなこと(まだあるけど…)を抜けば普通の学校生活を送れている。


俺は朝食を終えた後、顔を洗いに洗面所に行って顔を洗ったり、歯を磨いた後、制服に着替えて、さあ学校に行こうとしたら、


「ま、待ってお兄ちゃんーー!!」


と、また蓮が慌ただしく来たので『早くしろよ』と声をかけて外で待つことにしたんだけど、流石に地球温暖化と言っても11月らしく肌寒く、白い息が出てしまった。


如何して俺が蓮を待つかと言うと、俺が自転車通学であるからである。


というのも俺は母さんになるべく負担を掛けないように電車と徒歩で15分のところを、わざわざ40分もかけて自転車で行くようにしているんだけど、どういう成り行きかは忘れたけど、いつの間にか蓮と一緒に乗って行くようになった。(まあ、さすがに学校の駐輪所は恥ずかしいから途中の道に止めて行っているけど)


そんなことを通学はどうしてる?と聞かれたから答えてやると、友達の樹久みきひさ曰く、

「いいなぁ…。学年上位に入る蓮ちゃんと一緒と乗れて、まだあどけない二つの膨らみも感じれるんだろうな…」


んなことを平気で言ったから、『人の妹をなんて目で見てんだよ!!』って一発蹴りいれたけど、樹久の言う事もあながち嘘ではなく、確かに妹である蓮は俺からみてもかわいく、肩の下ぐらいまである髪は絹のようにさらさらで、顔立ちは整っていて、何処に出しても恥ずかしくない妹である。


俺はと言うと、顔立ちは整っているとは言われたことはあるけど、かっこいいなんて言われたことはなく、むしろ『ヤンキーキラースカイ』なんて呼ばれてる始末である。(蓮は『目がキリってしててかっこいいけど』なんて言ってくれた)


「お待たせ、さぁ行こ!!」


「ああ、行こうか」


と言って早速蓮を乗せて行こうとしたんだけど、樹久のせいで妙に意識いてしまいこのごろは行くまで疚しい気持ちを抑えるのに大変だ。


そんな大変な俺の思いを知ってか知らずか結構強めに抱き付いてくるもんだから、まあ大変なのである。


そんな大変な思いをしながらやっと学校に着くと、早速樹久が、


「はよ~、宿題やってきた空?」


「ああ、やってるけど」


「さっすがー、やってないから貸して~」


と、いつものことなのだが、コイツが宿題やってきたところなんて見たこともない。


「おい、お前は自分でやってくる気はないのか?」


「うん、ないよ」


「うわぁ、即答かよ」


「うん、だって面倒くさいじゃん」


「お前、何時勉強してんの?」


「馬鹿だな~、授業中だよ」


「何回も聞いたけど嘘つくな」


「嘘じゃないよ、うんじゃ借りていくね~」


そう、嘘じゃない。コイツは信じられないことに授業中だけで理解し、テストではいつも満点ばかりで学年一位をいつもとっている。

さらにムカつくことに本人曰く、『テストなんて授業の簡単な応用だよ~』と言っている。あんまりにも理不尽なんで一発蹴りいれたけど…。

その上容姿も良いもんだから、天は二物を与えずってのは嘘だと思う。


まあそんなこんなで朝の朝礼が始まり、いつもの授業が始まった。


その日の授業はなんともなく、あったと言えば、樹久が作った紙飛行機が先生の頭に当たって、何故か俺まで職員室に連行され怒られたことぐらいだ。


 そして放課後になったので帰ることにした俺は、特に何もすることが無いから帰ることにした。


というのも、俺は母さんに負担を掛られないから、部活をしていない。それは蓮も同じで、俺らは特に二人とも用事が無い時は、一緒に帰るようにしている。


そういうわけで俺は、蓮を呼びに一年の廊下にいったんだけど、なんて言うか空気も違うし、ヤンキーキラーってことが広まっているせいか、すれ違う度、みんなビクビクして通るから、気まずいことこの上ない。


なんとか蓮の教室まで行き入り口の近くにいた子に呼んで貰い、帰ることにした。


「――――、それでねーその里香ちゃんて子がさ、加藤くんのこと好きでね…」


「あ、ああ」


とまあ、なんともない会話をしながら俺らは学校を出てちょっとの所の坂道を歩いていた。


そう、ほんとになんともなかった。しいて言えば夕日がキレかったぐらいだ。


最後に聞いたのは


「それでね、もしよかったら日曜日一緒に――――」


そんなことを聞きつつ、瞬きするために目を閉じて一歩踏み出して目を開けてみると、


そこは暗い雲で覆われた異世界だった…………。





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