初依頼 ―Ⅰ―
遅くなりました13話です。
「ふわぁぁ~、相変わらず朝早いの~、空は」
「ん?、おお、ティアか。おはよう」
「うむ、おはよう」
「「おはようございます」」
朝。
いつもと変わらないように宿の中庭で朝の鍛錬をしているとティアが眠たそうな顔を貼り付けたまま起きてきた。
「顔でも洗ってきたらどうだ?」
「う、うむ、そうしようかのぅ……」
「ティアさんタオルです」
「ん?、ああ、すまぬのぅ…」
そう言ってティアは顔を洗いに行った。
「さて、続けますか」
そう言って俺はさっきまで続けていた特訓をしている。
「あの、あの、空さん」
「ん? なんだアリア??」
「さっきから何をしているんですか??」
「ああ、これのこと?」
「はい、さっきから座って目を閉じて、じっとしているので不思議に思ったんです。えーと、せいしんとういつってものですか??」
「ああ、まあ似ていると言えば似ているけどな。これは気を練っているんだよ」
「気? ですか??」
「うん。この世界に来てから理由はわからないけど、気の量が増えていたんだよ。それでその気を調整していたんだ」
「そうなんですか…。そういえば、気って魔力とは何が違うんですか??」
「ん~…、そうだな…、似てることには似てるんだけどね」
「む、空様その話、私も加わっていいですか??」
そういって汗一つかいてないフレイが興味があるのか声を掛けてきた。
「ん? ああいいよ」
「すみません。それで気というのは何なんですか?」
「ああ、魔力ってのはわかるよな?」
「ええ、内より出でる力。つまりは生命力です」
「そうだな、魔力ってのは失えば命に関わることもあるよな」
「はい」
「だけど、気は失って倒れることはあっても、死ぬことはないんだよ。気っていうのは簡単に言えば精神力のようなものだからね」
「? それじゃあ気って、元気とか、ヤル気みたいなものなんですか??」
「ん~、厳密には違うけど、まあ分かりやすく言えばそうだね。これ以上うまくは説明できないけど、俺が学んだ気っていうのは理論的なものじゃなく、感覚的なものなんだ。というのも俺は気を武術的観点から学んだんだ。だから言葉では上手く説明できないんだよ。まあ俺が主に使ってるのは“重心移動の力”かな」
「重心移動の力ですか??」
「ああ、簡単なもので言えば移動でこれを使ったりするんだけど、まあ百聞は一見にしかずってことでさらに上の段階の“遠当”を見せてあげるよ」
「とうあて、ですか??」
「ああ、まあ簡単に説明すると打点を元の位置からずらして、別の位置にその打点を合わせるんだよ」
「そんなことができるんですか!?」
「ああ、じゃあ、あそこに木があるよな。そこの左は端の木の枝を見ててくれ。んで俺は今からこの木の板を殴るから」
そういって虚空から木の板を取り出した俺は意識を集中させて板を打ち抜いた。
「あっ」
「えっ」
「む?」
結果は俺が予告したとおり、殴った木の板は折れることはなく、その代わり木の枝は折れて吹っ飛んでいった。
パシ。
「とと…、危ないではないか」
「あっ、悪いティア」
「懐かしいのぅ、今のは遠当じゃな??」
「ああ、というかなんで知っているんだよ?」
「幼きころにちょっとな。して空たちは何をしていたんじゃ??」
「気っていうものを教えて貰っていたんです」
「ほぉ、空は気も扱えるのかのぅ??」
「ああ、まあ一応はな」
「空さん、空さん、これって私達にも出来るんですか??」
「ん?、ああ、まあ鍛錬を積めばある程度なら誰にでもできるよ」
「本当ですか!? じゃあ、じゃあ、その…、えーっと…、わ、私に教えてくれませんか??」
「ああ、アリアが構わないなら別にいいけど」
「や、やったぁ。じゃあ、明日から宜しくお願いしますね」
「ああ、わかった。ん?」
アリアと話していると、俺の上着の裾をチョイチョイと引っ張る感じがしたから振り向いてみると、
「あの空様、私にもそ、その教えてくませんか?」
「っ!! ああ、もちろんいいよ」
「ほっ、よかった。では明日から宜しくお願いします」
「あ、ああ」
そういって俺は顔を背けた。
と言うのも、あまりにもフレイが上目遣いでお願いしてきた顔が可愛すぎて不意打ちを食らったのだ。
つまりは、あれですよ。ほら普段は無表情に近い子が、たまに見せる微笑んだ顔ぐらいの破壊力があったわけですよ。
「む、空、顔が頬けておるぞ」
「!!、ソンナコトナイヨ……」
「そうかのぅ…まあよい、気であったらわらわも使えるぞ」
「そうなんですか??」
「うむ、そうじゃの――――」
そう言ってティアの姿は掻き消えて、一瞬にして俺の目の前に現れた。
「えっ」
「な!?」
「!! やっぱり気を使っていたのか」
「うむ、まあわらわが使っていたのは気と魔力を合わせたものじゃがの。まあ空ならこれ以上の動きができるじゃろ??」
「まあ、出来ないことはないけど、ティアも十分早いとは思うぞ」
「いやいや、わらわは所詮は齧っただけ。本物の空には敵わんよ」
「そんなことはないと思うんだけどな…、まあいいや。話題は変わるけど今日はどうするんだ?」
「ん?、わらわは空に従うが?」
「私も特にないです」
「空様の意向に従います」
「そ、そうか…、じゃあ、今日は初仕事でもしようかと思うんだけど…、どうかな?」
「うむ、いいと思うぞ」
「はい、やりましょう」
「異存はないです」
「それじゃあ、決まりだな。まあ取りあえずは、『腹が減っては戦は出来ぬ』ってことで腹ごしらえしてからにしよう」
「うん、そうだの。じゃあ食堂へゴーじゃ」
そう言って右腕を掲げて歩く姿はまさにお腹を空かした子供のようだったとは口が裂けてもいえないけど、口元が笑ってしまうのはどうしても我慢できなかった――――。
◇◆◇◆◇◆◇
「ぷふぁ~、食べたのぅ~」
そう言って満足そうにティアはお腹をさすっていた。
「お前毎回どんだけ食べるんだよ!? まあいいけど」
俺達は宿屋の食堂を出て、自分達の部屋に戻って行く準備をしていた。
「それで、空さん。これからギルドに行くんですよね?」
「ああ、そうだよ。俺はもう準備は整ったけど。みんな準備できた?」
俺が準備が早いのは着替えるだけでよかったからだ。
というのも荷物とか持つもんとか適当に虚空に仕舞うだけでよかったしな。
「うむ、わらわは大丈夫じゃ」
「私も大丈夫ですよ」
なんとも身の軽い二人に比べ、アリアは、
「ふわぁぁ!!、皆さん準備早すぎですよ!!??」
とまあ、女の子には色々と準備がるらしい……。
そうしてアリアの準備が終わった俺達は早速ギルドに行くことにした。
◇◆◇◆◇◆◇
ギルドに着いた俺達は好奇の目を相変わらず受けつつ、受付に向かうことにした
「おはよう、ございます」
「ああ、どうも」
「今日はどのようなご用件で?」
「ああ、依頼を受けに来たんだ」
そういって俺はレリサスのカードを差し出した。
「レリサスですね。ではどのランクの依頼を?」
「そうだな――――」
っとここで簡単にギルドの説明をすると、ギルドとは各国に大きさは違えど、必ずある組合であり、様々な依頼を受付し、それに見合ったランクを決め、報酬金額や、素材などを決定し、依頼主がそれを満たせば、ギルドに依頼をすることが出来る。
ちなみにランクはFからSSSまであり、滅多にないがSSSよりさらに上のMというのが存在するらしい。
そして俺達が本来倒すべき人形とその人形使いはSランク以上となっていて、それなりに難しいことであることはわかる。
まあ、ギルドの説明はこれくらいかな。
「それじゃあ、Sランクの依頼で」
「はい、畏まりました。ほかに条件などは有りますか?」
「そうだな…、あまり時間のかからない依頼で」
ソクラウムさんとの約束もあるしな。
「それでしたら、ここから馬車で一日程度のグムラウという町である依頼でよろしいでしょうか」
「ああ、構わないよ」
「えーと依頼内容ですが、最近町で失踪事件が頻繁に起きているそうです。調べたところによると人形使いの仕業らしく、その人形使いは近くの森に潜伏しているようです。なので依頼と言うのは人形とその人形使いの殲滅です。これは地図と紹介状です。ではお気をつけて行ってらっしゃいませ」
「どうも、じゃあまた来ます」
そうしてギルドを出た俺達は早速、国の出口である門まで行き、出国手続きをした後、久しぶりバイクを取り出して向うことにした、まあ馬車で一日かかるなら、バイクで半時ほどで着くだろう。
で、肝心の俺のバイクに乗るのは誰かと言うと、言わずともアリアとフレイだった。
まあ、つまりはティアがまたフレイにジャンケンに負けたんだけどな。
そうして出発した俺達は初めての依頼の旅に出ることにした――――――。
守月「毎度どうも、守月です。春休みなのに更新遅れてすみません。言い訳をさせてもらうと、春休みなのになぜか補修があって、更新が遅れてしまいました。今回短めなのも早めに更新したかったからなんです。まあ言い訳ですけどね。それでは早速質問コーナーに移りましょうか。今回はお越し頂いたのは―――」
ティア「うむ、わらわじゃ」
守月「そう、ティアさんです。今回の質問は・・・・・、残念ながら皆さんからはありませんでした・・・・・」
ティア「え、な、なんじゃと!!、わらわに質問はないのか??」
守月「え、ええ、残念なことに・・」
ティア「すっ、ぐす、うう、初めてのことだから楽しみにしていたんじゃがの・・・」
守月「ああ、泣かない、泣かない、その代わり次回も出すから」
ティア「ひっ、ぐす、ほ、本当かの??」
守月「本当ですよ。また次回の質問に期待しましょう」
ティア「う、うん。み、みんなよろしくの」
守月「わたしからも宜しくお願いします、次回の更新は早ければ明日には更新しようと思っていますので、ではまた次回に」
ティア「うむ、また次回の~」